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エッセイ

あなたの少数派感覚を大切に

作者: 徒花ミノリ

 人間には2つのグループがある。

 多数派と少数派である。


 多数決を取ったときに必ず負けるのが少数派である。

 人が3人いて、さあみんなで何か食べに行こう、何がいい?となったときに、2人がカレーと言い、残る1人がハンバーグと言ったなら、ハンバーグの人が少数派である。

 少数派はいやいやながらもカレーを食べにいかなくてはならない。


 組織や社会というのは、基本的にこういう力学で動いている。

 決め事があった場合、多数派の感覚で物事が決まる。

 

 多数決が恐いのは、正しいかどうかでは決められていない、という点にある。

 もちろん、何が〈正しい〉かはとても難しい問題だ。

 正しさを追求するあまり、とてもおかしなことになってしまう場合も多々ある。

 だから、〈公平〉と言い換えても良いかもしれない。こちらのほうがピンと来やすい。


 人が多数派に属するか少数派に属するかは、場面ごとに違う。

 左利きの人はその時点で少数派だが、利き手が関係のない場面では多数派になることもある。

 組織や社会は多くの場合、多数派が取り仕切っている(※そうでない場合もある。ワンマン経営の会社や独裁国家などがそれだ)ので、少数派は肩身が狭い思いをすることになる。

 仕事でなかなか良い結果を出せない人というのは、少数派感覚の持ち主である可能性が高い。

 たとえば、企画を考えろと上司に言われて出した企画案がすべてボツにされる。何回提出しなおしてもOKにならない。これなどは典型的だろう。

 少数派は多数派の感覚がわからないので、多数派が納得できるものを提案するのが困難なのだ。異星人の頭の中を知ることに等しい困難さがそこにある。

 

 仕事ができない人、(イコール)ダメな人、みたいな烙印を押されやすいが、決してそんなことはないのだ。その人がただ単純に少数派に属しているだけに過ぎないだけだったりする。


 少数派はついつい「他人はわかってくれない……」と言ってしまいがちだが、もうちょっと正確に言うなら「多数派はわかってくれない」だ。

 多数派サイドは、よほど教養がない限りは、少数派の存在そのものに気づいていないので、世の中全体を多数派カラーに染めようとする。彼ら彼女らはそれが「自然」なことで「みんなが喜ぶ」と考えがちだ。

 しかし残念ながら、そういう場面の多くで少数派の存在が忘れ去られている。いや、忘れるというよりは、意識からすっぽりと抜け落ちている。

 多数派が言っている()()()には少数派は最初から含まれていないのだ。


 さて、話の方向性は変わるが、小説や絵画や音楽などのクリエイティブな分野ではどうなのだろう?

 売れている作品だけを見ると、多数派感覚で創られたものが多いように思う。

 しかし、文化というものは、売れれば良いというわけでもない。商業的価値以外にも文化的価値という評価軸がある。

 文化的価値が高い作品というのを見てみると、多数派感覚で創られているようには思えない。

 多数派感覚というのは、言い換えれば〈俗っぽさ〉だ。大衆迎合的でミーハーでどことなく下品である。残念ながらそういうカルチャーというのは時代の中で大量消費され、次の時代に持ち越されるということは基本的にない。(もちろん例外はある。時代を越えて愛される大衆文化もあるが、それはとてもレアなケースだ)

 

 現在、という時間だけで切りとって考えると、少数派は絶対的に不利な立場に置かれているわけだが、歴史という軸を導入して考えてみると、どの時代にも必ず少数派は存在し、ある意味での〈少数派の普遍性〉のようなものが浮かびあがってくる。

 文化というのものは、〈少数派の普遍性〉を歴史的縦糸でつなぐ非-物理的(精神的)なネットワークだと言えないだろうか。

 少数派感覚で創られたものは、なかなか同時代においては評価されにくい。受け取り手の絶対数が少ないからである。

 しかし、同時代ではなく、歴史という〈厚み〉を考慮すると、少数派感覚が時代を越えて未来の誰かに伝わる可能性はじゅうぶんにある。


 あなたももしかすると、過去の〈お仲間〉からの作品(メッセージ)をすでに受けとっているかもしれない。

 今度は、あなたが未来の〈お仲間〉に作品を送り出すターンだ。

 

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