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死神と呼ばれた公爵は転生した元巫女を溺愛する  作者: 冬野月子
第二章

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05

案内された二階のバルコニーにある王族用の部屋へ着くと、エレンとその夫のブレイクが待っていた。

ここは王族専用のスペースなのだという。


「サラ!」

玉座での顔とは打って変わった笑顔でエレンが出迎えた。

「ねえ、そのドレスよく見せて! とても素敵よね」

「ありがとう」

私はエレンの前でくるりと回って見せた。

「素敵! ……というかサラってすごくスタイルがいいわよね……」

「気をつけているもの。毎日運動しているわ」

身長や骨格といったものは生まれつきのものだけれど、筋肉や脂肪、姿勢は自分でコントロールすることができる。

それらに気を使うことはモデルとして当然のことだったけれど、この世界に来てからも毎晩のストレッチと軽い筋トレは欠かしていない。

体型維持や健康のためというのもあるけれど、私にとっては歯磨きと同じようなものでやらないと気持ちが悪いのだ。


「そうだ、エレンにも教えるわ。寝る前にストレッチすると一日の疲れも取れるし寝つきも良くなるのよ」

ストレス解消にもいいし、不妊対策にもなるだろう。

「ぜひ知りたいわ。でも私はサラみたいなドレスを着こなせる身体にはなれそうにないわ……」

「そうねえ」

エレンは私とは違い、柔らかな素材やシルエットが似合いそうだ。


「でも、このドレスのシルエットをエレンにも似合うように直せばいいと思うわ」

マーメイドドレスはスカートの形次第で印象が大きく変わる。つまり、着る人に似合う形を選べばエレンでも着こなせるはずだ。


「本当? すごいわサラは何でも知っているのね」

エレンは目を輝かせた。

「やっぱりこのまま王宮に残って私の相談役になって欲しいわ」

「それはダメだ」

フィンが即答した。

「お兄様って本当にサラのことになると自己中心的よね」

「悪いか」

「あー、相談といえば」

睨み合う兄妹の間に入るようにブレイクが手を上げながら口を開いた。

「例の魔術師のこと、伝えた?」

「いいえまだよ」

「魔術師?」


「私の師の紹介でね、まだ十二歳なんだけど、おそらくこの国一番の魔力があるんじゃないかって」

「一番? エレンよりもってこと?」

そんな強力な魔力を持っている人が?

「ええ。だから王宮に招いた方がいいんじゃないかって言われたのだけど、素性が謎らしくて。大丈夫なのかサラと、ついでにお兄様に判断してもらいたいと思って」

「私はついでか」

「将軍だったんだから多少は人を見る目あるでしょ」


「……判断といわれても、今の私では……」

巫女の時ならば相手の魔力を見て良し悪しを判断できたけれど。

「直感でいいの。早ければ建国祭中に到着するって言ってたから。よろしくね」

エレンは私の手をぎゅっと握りしめた。



「公爵」

廊下で待機していたブルーノが顔を覗かせた。

「騎士団長が挨拶と、少し相談があると」

「ああ」

フィンは立ち上がると私を見た。

「少し出てくるからここで待っていてくれ」

「ええ」

「サラは大丈夫だから、ゆっくりしてきていいのよお兄様」

エレンを軽く睨むとフィンは部屋から出ていった。


「相変わらず仲がいいわね」

幼い頃からフィンとエレンはよく兄妹喧嘩をしていた。

騎士であるフィンと魔術師のエレン、手を出すことはなかったが口喧嘩は日常的で、けれど互いに楽しそうだった。

「そう? それよりも、早速イザベラが来ていたわね」

「……見ていたの?」

「ここからはホールを一望できるのよ」

エレンに言われてバルコニーから見下ろすと、確かにホールの様子がよく見えた。


「イザベラはずっと、お兄様と結婚するのは自分だって思っていたみたいなの。お兄様は生まれた時からサラ一筋なのにね」

「生まれた時から?」

ブレイクが聞き返した。

「サラ以外に抱かれると泣くんですって。お母様や乳母でもダメだったとか」

「うわ……重っ」

「そういえばそうだったわね」

私と離れるとあまりにも泣くものだから、しばらく私の部屋にベビーベッドを置いていたのだ。


「だからサラ、今後もイラベラや他の令嬢たちが何か言ってきたり仕出かすかもしれないから気をつけて」

「ええ、ありがとう」

「……余裕ですね、サラ様」

「そうかしら?」

「女同士の争いってえげつないって聞きますけど」

「そうね。でもそういうの、よく見聞きしていたから」

女同士の争いなんて、ここも向こうの世界もそう変わらないと思うのよね。



しばらくしてフィンがブルーノを連れて戻ってきた。

「お帰りなさい、お兄様。騎士団長の相談事って何だったの?」

「次の剣技大会にハンゲイド領からも参加してくれと」

「ああ。いつも同じ顔ぶれでつまらないって言ってたものね」

剣技大会といえば、騎士団員たちの技術と意欲を高めるために、二年に一度行われるものだったはずだ。


「フィンも出るの?」

「いや私は……」

「閣下も出るよう、サラ様からも言ってくださいよ」

言いかけたフィンをブルーノが遮った。

「団長にも出るよう促されたのに『私はいい』とかって拒否されてしまったんですよ」

「そうなの?」

そういえばフィンが剣を使うところは見たことないのよね。

「フィンの剣技、見てみたいわ」

「――考えておく」

私の言葉に、フィンは一瞬迷うような顔を見せた後、そう答えた。



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