出逢い
出逢い
「何か着るものを貸して頂けませんか?」
恥ずかしさでパニックりながら誠意を込めて頼んだ。
「ケン、お前が一番体デカいだから予備のズボンないのかよ?」
「予備は持ってきてないよ。あってもあのサイズだと・・・」
サイズって腰回りの事だよね!
女性の前で股間の事じゃないよね!
ね、ね
太ってるからって失礼だな、もう!!
「レイ。
さっき戦闘で念願の「水のローブ」がでたから、
今まで着ていたの予備になっただろ貸してあげたら?」
「えっ」
先ほどまで顔にあった優しい微笑みは一瞬消えた。
「そうね・・・どうぞ」
レイと呼ばれた爆乳生殖者、いや聖職者は慈悲の雰囲気を出しながら言った。
そーですよね~
中年の加齢臭いやですよね~~
レイは俺の伸長と同じ160cm程の人間で、
彼女が着てる羽織る物を渡してくれた。
彼女が大きいというより俺が低いのだけど・・・死にたい。
オヤジ、チビですいません!
生きていてごめんなさい!!!
ローブだと横サイズ関係ないから選択肢は無いのだろうけど・・・申し訳ない。
早速その人としての尊厳を保つ為に股間を隠した。
このままだと露出狂と勘違いされてしまう。
「あのーー・・着て貰って頂けないでしょうか?」
「あ!!!すいません」
股間の失礼な場所に女性が今まで着ていた愛用の僧侶のローブを被せるという失礼に気が付き、
慌てて立ち上がってしまった。
跪いた姿勢で足の方に居た女性二人の丁度目の前に・・・
((((「きゃーーー」)))))
「みんな、起って。話ししようか。」
勇者は笑顔で言った。
その瞬間 盗賊は爆笑した、腹を抱えて。
女性達は汚物を見るような目でローブを前で重ね、
がっしり前を塞いで着てる男を睨んだ。
俺は恥ずかしさで小さくなり、
(「立」でなく「起」を使ってるよね、絶対)
と確信した。
普通のローブは被る形だが、
キリスト教のローブは前開きで重ねる上にベルトボタンが無い。
こちらの僧侶のローブも同じ形で前が開く上に閉めるボタン、ベルトが無かった。
包帯用の布をシークに借りて帯のようにしたのだが、
着物のように重ねる形に服がなってない、
本来、シャツ、ズボンを着た上に羽織る物だけに、
気をつけないと胸と股間、太ももが見えてしまう。
美女がこれなら、大歓迎だが、
デブハゲの中年オヤジがそれは自分自身でも絶対に見たくない絵面だった。
勇者だけは何が起こったのか?
自分が発した「起つ」ギャグがわからないみたいだった。
「どうして、こんな場所に全く装備も持たず、あなたは居たのですか?」
勇者は真面目な顔で聞いてきた。
「わからないです。普通に寝た筈だが起きたらここだった。」
「ギルドカード見せてもらっても良いですか?」
「ギルドカードって?? 何?」
((((「えっ!」))))
皆から説明をして貰った、
この世界では全ての人は何らかのギルトに入っていて、
10歳で必ずどこかのギルトに登録しカードを発行するのだそうだ。
農村や山村なら農業、狩猟ギルト。
町や都市なら商業、工業ギルド、
そして、その管理の国営の領主、大臣、衛兵、政務官ギルト等となってる。
冒険者ギルドはダンジョン探索と移送(護衛&運送)主に行う、
その他、傭兵とか危険な探索、警備もする、
公的機関からの依頼で捜索、犯罪摘発の警察から、
色んな人間からの依頼を受けて仕事をする何でも屋となっていた。
ダイスケの歳でギルドカードを持っていないのは、
常識としてあり得なかった。
「だから、なんかの怪しいし、髪型も怪しいし、
ほっておきましょうよ。もう帰りましょう!?」
あ!
今、髪型いわゆる頭髪の話ししたよね、
言ってしまったよね、このムネ タイラさん。
「そうですけど、逆に髪がこの位置から生えてる人間は現在の世界、
いえ、過去に置いても人間では在り得ません 」
人間では在り得ない・・・
人間では在り得ない・・・
人間では・・・
乳でか女ーー言ってくれるわーーー
暴言女議員以上だわーーー
落選確実だわーーー
ううぅ・・死にたい。
「でもそれはやっぱり彼は、
異世界から神様が呼び寄せた使徒といえるのでは?」
えっ!
何言ってるのこのイケメン、
ブサメンだと思って上から目線で擁護なの??
さりげなく神様の使徒認定してるけど俺そんな事いってないしー、
大体、神など会ってないし何にも言われてないですけど・・・
この時は、ダイスケは気付いていなかったが、
この世界では人間種は髪が後退する、
いわゆるハゲというのは存在しなかった。
歳をとり老人になると髪が抜けるという老化現象は存在したが、
その場合でも均等に抜けて薄くなる形だし、
全て抜け落ちるまではいくら長寿の老人でもなかった。
つまり、
ハゲが無い以上それを差別する考え自体が存在しなかった。
更にこの世界では「魔法」が存在して
それが戦闘に関係して絶大な効果は発揮していた。
その魔法が肉体の内側から身体能力に影響を与えた為、
魔法の無い世界とは別世界となっていた。
私たちの世界では力3表示の小学生が力18表示の大人レスラーに勝つことはできないが、
こちらの世界では経験を積めば、
魔力を体内制御で数百くらいの数値を人間は持つ事が出来るので、
小学生の体で大人のレスラーは条件次第で簡単に倒せた。
見た目はあてにならないとも言えるのだった。
背の大きさより魔力が優先され、
それが女性の方が魔力適正があった事により、
この世界では総合戦闘力で女性優位が歴史的に継続された。
男女の立場が男が戦いで女が家庭でいう形ではなく、
魔力がある人間が戦闘をするが効率的であるが故に、
男女の身長差は無くなっていた。
平均身長は男女逆くらいだった。
つまり、
ハゲ差別は無くチビはダイスケに当て嵌まらない。
8重苦のうち2重苦はこの世界に来た瞬間になくなったいたのであった。
後にこれに気が付き神に心から感謝をするのは又、後の話しだが・・・