001
「アレク、お前はクビだ!」
そう叫んで、勇者ドルトスは俺に対して勇者の剣を突き付けてきた。
「落ち着けよ、ドルトス。用件は分かったから、オークみたいに暴力に訴えるのではなく、人間らしく、理性的な会話で問題を解決しようぜ」
「死ね!」
「おっと、危ない危ない」
俺は一歩飛び退いて、ドルトスの斬撃を回避した。
現在、俺はSSSランク勇者パーティー「カルドラユニオン」に所属している。
カルドラユニオンの所属メンバーは4名。
勇者ドルトス。
戦士レノン。
魔術師ダリオ。
そして、テイマーの俺。
俺以外は全員、直接戦闘してダメージを与えることに特化しているので、戦闘中の回復や支援は全て俺が担当しており、冒険者パーティーを維持するために必要な物資や装備も全て俺が担当しているので、もし俺が勇者パーティーから追放されたら、勇者パーティーは一瞬で崩壊してしまうだろう。
「ところで、どうして俺は追放されるんだ? 理由を聞かせてくれ」
もしかすると、俺より優秀な支援職冒険者を見つけたのかもしれない。
「理由? わざわざ言わなきゃ分からねぇのか? てめえがモンスターを1体もテイムできない、無能テイマーだからだよ!」
確かに、ドルトスの言う通り、俺はモンスターを1体もテイムできていないが、テイマーにとって、最初の1体目のモンスターをテイムするのは困難だ。
モンスターをテイムできていない間は、万能型支援職としてスキルビルドを行えば、他職に劣らない戦闘力を確保することができる。
ただ、オークキング並みのパワーと、オークキング並みの愚かな頭脳を持つドルトスに対して懇切丁寧に説明するのは時間の無駄だ。
そういえば、昔、「勇者とテイマーは相性が悪いので、一緒にパーティーを組むべきではない」という噂を聞いたことがある。
もしかすると、俺がモンスターをテイムできないのは、勇者が原因かもしれない。
テイマーは、モンスターをテイムして育成する態勢が整えば、勇者よりも強いジョブなので、敢えて勇者の指示通り、追放された方がいいかもしれない。
「了解した。パーティー追放を受け入れるよ」
「おい、待て! てめえの装備はパーティーの共有財産だ。全部置いていけ!」
「……え? マジで?」
これ以上話が拗れると面倒なので、仕方なく、俺は装備を全て外し、ドルトスに投げ渡した。
「あばよ、アレク。次に顔を合わせたら、てめえを惨たらしく殺してやるから、覚えてろよ?」
「ああ、そうかい、そうかい。再会が楽しみだな」
こうして、俺は勇者パーティーを追放された。
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