007 盗賊討伐完了
成程。
これが防御力特化の実力か。
僕は、使用した解析スキルによって目の前に表示された盗賊のステータスへと視線をやる。
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[盗賊の親玉 LV.18]
総戦力:455
生命力:80/80
魔法力:12/12
攻撃力:85
防御力:58
素早さ:150
賢 さ:50
幸 運:20
スキル:剣術LV.1 盗術LV.1 索敵LV.1
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相手のステータスってこんな風に表示されるんだな。
ステータスの合計値、総戦力は455。
手下と比べて、雲泥の強さと言えるだろう。
が――それでも僕の防御力は抜けなかったな。
素早さの値には目を見張るものがあったが――攻撃力85。
この数値だけは頂けない。平凡だ。
戦闘開始から時間が経ち、徐々に弱体化し始めている僕の防御力でさえ、この攻撃力では抜けないだろう。
察するに、加護は素早さ特化か。
盗賊になるべくしてなった様なステータス……。
だが――同情はしない!
「ああああぁ―ッ!!」
「ッ!!」
空振り、態勢を崩した状態の盗賊の頭目目掛けて、僕は手に持ったシミターを突き出した。
脇から入った刀身は、強化された攻撃力により、骨を砕き、肺を潰し、心臓にまで到達する。
口元から血を吹き出しながら、頭目の男は信じられないと言った表情で僕を見て、やがて地面へと崩れ落ちた。
「……やっ、た……?」
手に付着した返り血を見詰めながら、僕は小さく呟く。
勝敗は決した。けれど、その余りの呆気なさに、僕は思わず漠然とした不安を抱いてしまう。
頭目の男は強かった。
教科書通りの剣術だと罵られたが、まさしくその通り。
実戦で鍛え上げられた剣術には到底及ばなかった。
僕が勝利出来たのは、ステータス差によるものだ。
だからこそ、無常だとも思う。
神に、より祝福された者が勝利する世界。
その理は、想像よりも残酷かも知れない……。
「……アメル君の方は、大丈夫だっただろうか」
モヤモヤとした感情を掻き消す様に、僕は別行動を取った少女へと思いを馳せるのだった。
◆
縛られた村人達の方へと戻ると、アメル君の後ろ姿を見付けた。肩で息をしながらしゃがみ込む彼女と、その様子を固唾を飲んで見守る村人達の様子は、傍目から見て"何か"があった事を予想させる。
「……アメル君……ん?」
近付いてみて、盗賊の男が一人倒れているのに気が付いた。
頭から血を流して、ピクリとも動かない男。
付近には血で染まった大きな石が転がっている。
――成程、納得。
「君が倒したのか? 村娘ながらに、やるもんだな?」
「ピストンさん、私……人を……」
「外道に堕ちた連中なんて、人じゃないさ。気にするな」
「……」
僕なりに励ましたつもりなのだが、アメル君の表情は晴れない。年頃の女の子と言うのは難しいものだ。
「取り合えず、村人の縄を切ろうか。アメル君は落ちているシミターを使うと良い。分担してやっていこう」
「……はい」
気落ちしたままの彼女に指示を飛ばし、手分けして縛られた村人の縄を切っていく。
後ろ手に回された手を解放してやると、彼等は一様に安堵した表情を見せ、家族と抱き合い無事を喜ぶのだった。
ふむ。良い事をしたな。
ついでに、今のレベルを確認しておくか。
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[ピストン=セクス LV.10(+5)]
総戦力:350(+100)
生命力:105/108(+18)
魔法力:35/35(+10)
攻撃力:67(+24)
防御力:54(+21)
素早さ:44(+13)
賢 さ:33(+10)
幸 運:10(+4)
スキル:剣術LV.1 性魔術LV.1 解析LV.1
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随分レベルが上がったなぁ。
加護の一時上昇は切れてしまった様だが、このステータスなら例え一人や二人敵が残っていたとしても対処出来るだろう。
目を引くのは、新たに記載が増えたスキル欄。
剣術LV.1はまぁ良いとして……この【性魔術】と言うのは一体何なんだろう?
聞いた事も見た事もないスキルだ。
恐らくはレアスキルの一種なのだろうが、字面では有用かどうかも判断が付かない。
これからレベルが上がっていけば、その性魔術も習得出来るのだろうか?
せめて使えるものであってくれれば良いが……。
そう願い、思案に暮れていたその時だ。
「――ピストン=セクス! 貴様、此処で何をしている!」
「!?」
鋭い声が、村の広間に響き渡る。
――この声には、聞き覚えがある。
「……チェリー=ビシェット。そうか、此処等はビシェットの領地だったな」
「ビシェットの、ではない。俺の領地だ! 間違えるな!」
「はいはい……」
居丈高に馬上で叫ぶのは、ビシェット家次期当主であるチェリー=ビシェットという男である。
金色の髪に横に流した前髪。長いもみあげが特徴と言えば特徴か。セクス家と領地が接してる関係で、ある程度の交友は持っていたのだが、所詮は見せ掛け。性格からして僕とは反りが合わず、領地の近い貴族というのは仲良くなれないものなのだと実感する結果となった。
「あらあら? ――まぁ、ピストン様!」
「ネーナも一緒か……」
「妹を呼び捨てにするのか!?」
「お兄様? ピストン様には以前、ネーナから呼び捨てにして欲しいと仰ったのです。勝手に口を挟まないで頂けますか?」
「ぬ、ぐぐぐ……」
「……」
実の兄を言い包めるのは、妹のネーナ=ビシェットである。
金の髪色を両サイドで縦ロールに巻いた髪型が特徴。貴族の女性らしく品のある振る舞いをしているのだが、所々に見え隠れする毒の様な嫌らしい性格が僕には苦手だった。
二人は何故、こんな場所にいるのだろうか?
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