053 まずは仲間集め
「男爵ぅッ!? 旦那がかッ!?」
「ああ……」
「ピストンさん、貴族様になったんですか!?」
「ああ……」
陛下より爵位を賜った次の日。
宿へと集まったガステロとアメル君に、昨日の話をした所、彼等は大袈裟に驚いてくる。
「……そんなに驚く事だろうか?」
「いやいや旦那! 普通驚くぜ!? 男爵っつったら一代限りの身分じゃねぇ。子供にも引き継がせる事が出来る爵位なんだぜ!? アンタはバスティア王国で、新しくセクス家っつう貴族の家を興した事になる! これを驚かなくて、何を驚くっつーんだ!?」
「しかし、爵位は金で買えると……」
「国民からの支持があって、初めて買える物です。普通はそんなに簡単に手に出来ない身分なんですよ……?」
「そう、なのか……?」
親の一言で家を追放された身としては、吹けば飛ぶような脆いものの様に思えてしまい、その価値が実感出来ないでいたのだが――二人が言うのなら、そうなのかも知れない。
「何で陛下は、僕に良くしてくれるんだろう……」
「そりゃあ、旦那が結果を出してるからだろう?」
「結果か」
だが、結果を出したとは言え、それが報われるとは限らない。実際に僕は冒険者には成れなかった訳だしな。
キサラ=フル=バスティアーナ陛下。
思うと、不思議に胸が熱くなる。
忠誠心と言うのは、こう言う時に生まれてくる物なのだろうな。
彼女の役に立ちたい。
彼女に褒めて貰いたいと、感じている自分がいる。
「案外、気に入られたりしてるかもな? 旦那をいきなり貴族に推すって言うのは、中々出来るもんじゃねぇよ」
「ッ! で、でも、相手は王族ですよ!?」
「まぁ地位は足りねぇか。伯爵にまで上がっちまえば、王族との婚姻も無い話じゃねぇんだけどな……」
「!!」
陛下との、婚姻……だとっ!?
「ガステロ!! その話は本当かっ!?」
「うぉっ!?」
掴み掛からんばかりに、ガステロへと問う僕。
悪いとは思ったが、今はそれ所では無いのだ。
「う、嘘じゃねぇよ。まぁ、地位は上がれば上がる程、確率は上がるんじゃねぇのか? その最低ラインが伯爵って話でーー」
「そうか……! そうかぁ……!!」
胸の鼓動が高鳴る。
天上の存在と思い諦めていたが、そんな方法があるだなんて……!!
目標が、見付かったな。
「出世するぞ……! 何が何でも絶対に……!!」
「ピストンさん……?」
「こりゃ完全に本気の目だな……」
そうと決まれば、まずは功績だ!
顎に手をやりながら、僕は今後の事を考える。
「黒霊死団の討伐隊長に任命されてしまったからな。まずは此処で何らかの成果を出さねば……!」
「その事についても、正直驚いたけどな」
「てっきり、隊長はリブラさんが成るのかと思ってましたからね……」
「あの姉ちゃんが、今じゃ旦那の部下だろう? 一体何が起こってんのやら」
思い思いに感想を話す二人。
部下と言っても、この任務が終わるまでだろう?
形式的なものなのだから、そんなに気にしなくても良いと思うんだが、二人の感想は違うらしい。
全く、良く分からないな。
「取り敢えず、二人には討伐隊に入って貰うからな」
「え……?」
その身を硬直させる二人。
何だ?
何か変な事でも言っただろうか?
「お、俺も!? い、いや、入れっつーんなら、入るけど……アメルの嬢ちゃんは何で……!?」
「……まだ仕事が決まって無さそうだったから?」
「それだけっ!?」
「何か不味かっただろうか?」
「不味いっつーか、何つーか……!」
手で顔を覆い、天井を仰ぐガステロ。
当の本人のアメル君は、驚いた表情で何かを考え、
「――私、入ります!」
堂々と、決断する様にそう言ってくれた。
「嬢ちゃん!?」
「戦う事は出来ないかも知れないけど、皆さんのお世話なら出来ると思うんです。裏方での仕事があるのなら、私、頑張りたいですっ!」
「なら、決まりだな」
「い、良いのかよ……?」
「少しでもお役に立ちたいんです。皆さんの……ピストンさんのお役に」
「……カーッ! 健気だねぇっ! よっしゃ!! なら俺も嬢ちゃんに負けねぇ様に頑張るぜっ!!」
言って、笑い合う二人。
ありがたい。
本当に、心からそう思った。
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