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013 オルガ=セクスの優雅な日々


「おはようございます、オルガ様」


「おう」


「おはようございます」


「おうおう!」


「オルガ様、今日もご機嫌麗しく」


「おうおうおう!!!」



 愉快。


 愉快愉快愉快!


 なんだこりゃ、サイコー過ぎんぞ!?


 屋敷ってのは、こんなに居心地の良い所だったかァ!?


 変態一匹追い出しただけで、今までミソッカス扱いされてたこの俺が掌返しに歓迎されやがる!


 ウケるぅ……!


 マジで笑いが止まらねぇぜ……っ!!



「クハ、クハハッ!!」



 おっと、思ってたらホントに声が漏れちまった。


 でもまぁ良いだろう。


 聞き咎める奴なんて誰もいねぇ。


 この屋敷はもう俺ンだ。


 いや、屋敷だけじゃねぇ……セクス家の地位、領土、富。


 全てがこの俺――オルガ=セクス様の物になるんだ!!



「堪らねえ……ッ!」



 ぶるりと、興奮に身体を震わせたその時。



「……」



 廊下の角から、顰めっ面の親父殿が出てくる。


 おっと。ご機嫌斜めか?


 眉間に皺を寄せ、此方を見詰める親父殿。


 面倒臭い小言を言われては敵わない。


 此処はそそくさと一時退散、と――



「オルガ」


「……はぁい?」



 心中で舌打ちをしながら、俺は呼び掛けて来た親父殿へと向き直る。どうやら、逃げ遅れてしまったらしい。かったりぃ。



「剣の稽古はどうした?」


「剣? あー剣ね。ハイハイ。終わった。オワッタヨ……」


「修練所に行ったと?」


「あー行ったね。いやマジ疲れ。千年分くらい素振ったわ」


「……自室に剣を置いたままでか?」


「あー、それはー……その……」



 言い澱む俺に対し、当て付ける様に深々と溜息を吐く親父殿。



「オルガ……貴様は、セクス家の次期当主となった自覚があるのか?」


「……ま。少なくとも、あの腰振りの変態よりは」


「奴の事はもう良い!! 口に出すな!!」


「……はぁい」


「我がセクス家は四英雄と言われし武門の家。初代当主オーラル=セクス様の偉業は貴様も知っているだろう!」


「……何か、めっちゃ強かったんだっけ?」


「100年続いた帝国と王国の宗教戦争――黒の災禍を終わらした英雄の一人がオーラル様だ。我が家が冠英貴族と謳われるのもあの方あってこそ! 我等セクス家の当主は初代様の武勇を汚さぬ様、戦いに秀でて無ければならない!! 次期当主となった今、オルガ――貴様もその例に漏れず、己が力を研鑽する必要があるのだ!!」


「だから――剣技を学べと?」


「そうだ!!」


「……」



 力強く言い放つ親父殿を、俺は内心で哀れんだ。


 なんて時代遅れな人間なんだろう……。


 初代当主様が武勇で家を建てたのは分かったよ……。

 けれど、今は時代が違う。

 戦争なんて、もう終わっちまってる。


 個人の力で手柄を立てる時代じゃねぇのさ。


 大事なのは頭だ。


 親父殿はそれが分かってねぇ。


 だから――あんなにも簡単に、アニキを追い出しちまうのさ。


 救えねえ、馬鹿。

 低能だ。



「良く、分かったよ……」


「おお!」



 俺がそう頷くと、親父殿は馬鹿正直に喜びやがる。

 適当に合わせてやってるって事くらい、気が付かんのかね。


 まぁいいや……。



「実を言うとさ。剣の稽古は屋敷じゃなく、外でやってるんだ。ほら、元々の次期当主はアニキだった訳じゃん? 弟の俺が修練場を使うのは少し気不味くてね。今までもずっと外で稽古してたんだ。だから、その癖ってのが抜けなくて――屋敷じゃどうも、剣を振る気にはなれねえ。調子の問題って奴だ。だから、これからもちょっとそこンとこは勘弁して欲しい」



 殊勝な風を装って「頼むよ」と言うと、親父殿は少し考え込みながら「それならば……」と、意見を翻す。


 全く、操り甲斐のねぇ親父だ。


 そのまま軽く手を振って、親父殿と別れる俺。


 駄目だな、コイツは。


 分かっちゃいたが、想像以上に使えねえ。



 ……後で上手い事、"処分"しねぇとな。



 くだらねぇ話で時間を取られ過ぎた。


 あの親父の所為で貴重な俺の一分一秒を無駄にされたと思うと、途端に腹も立ってくる。



 ――お?



 苛立ちながら屋敷を歩いていると、面白い"玩具"を発見する。


 丁度良いじゃん。


 鬱憤晴らしに虐めてやるか。



「よお、アリーシャ♪」


「――ひっ!」



 俺が声を掛けると、窓を拭いていた幼馴染のメイドは恐怖に引き攣った様な声を上げやがる。


 おいおい……その反応は、ちと傷付くなぁ……。



「何ビビってんだよ? なぁ、おい!」


「や、やめっ……て、オルガ君……」


「はぁ~~?」



 後ろから徐に乳を鷲掴みにしながら、身体を密着させてやる。


 前々から思っていたが、こいつは平民の癖に良い身体をしてやがる。程よく肉付いた胸元に、触ってくれと言わんばかりの張りの良いケツ……毎朝櫛で梳かしているのだろう、背中まで伸びたサラサラとした亜麻色の髪からは雌を感じる良い匂いが漂っている。


 空いた左手でメイド服のスカートの裾に手を掛けると、アリーシャの奴は反射的に俺の手首を掴みやがる。



「……俺に抵抗して良いと思ってんのか、この盗人メイドが」


「!」


「親父の奴も悲しむだろうなぁ。まさか幼い頃から面倒を見てきた女が、セクス家を裏切って金を横領していたなんてよぉ」


「あ、アレはオルガ君が!?」


「はぁ? 俺が何よ?」


「……ッ!」


「あと"様"な様。次期当主を"君"付けで呼ぶんじゃねぇ」



 スカートの中を弄り、下着の中へと手を突っ込む。

 素肌に触れた瞬間、ビクンと痙攣を見せるアリーシャの身体。



「……確かに俺は、お前に収支台帳をチョロまかせと指示はしたぜ? おかげで女遊びに金が尽きる事は無かった。けどよ、俺だけを悪者にするのはどうかとおもうよなぁ? ――お前だって使っただろう? 家の金をよ」


「それは……でも……後で返して……」


「やったのはやったんだよなぁ? 後でとか関係ないよな?」


「……ッ」


「クハハ! 実の親が無能だと大変だなあ!? 仕送り何てせずに見捨てちまえば良かったのによぉ!!」



 アリーシャの親は典型的なゴミクズだ。

 金遣いの治らねえ没落貴族。


 幼い頃にセクス家に売られた時点で、コイツもソレは分かってると思ったんだがな。


 未だに律儀に親に仕送りを送ってやがる。

 その金が贅沢に浪費されてる事に気付かずにな。


 結局、甘さが抜けてねぇって事なんだろう。

 だから、いつまで経っても搾取される側なんだ。


 同情はしねぇよ?

 だからこそ、俺も甘い汁が吸えるって訳だしな。



「……アニキの奴を追い出した時は最高だったな」


「――ッ!」


「見たかよ、アイツの顔! 傑作だったなぁ〜! 信じてた女に裏切られた男ってのは、あんなにも情けねぇ面を晒すもんなんだな!?」



 言いながら、俺は下着の中に突っ込んだ手を弄りだす。

 指の先は僅かながら湿り気を帯びていく。


 日々の成果の賜物という奴だろう。


 随分と"濡れ"やすくなってやがる。



「お前も案外興奮してたんじゃねぇのか? アイツの人生をぶっ壊してよぉ……今みたいに興奮してたんじゃねぇのか!?」


「そんなっ、こと……っ!」



 上気する頬。必死に声を押し殺そうとしているが、無駄な抵抗だ。指を動かす度にその思惑は失敗し、耳元で艶めかしい喘ぎ声出しやがる。耳元でソレを聞いていると、俺の中の支配欲が急速に満たされていくのを感じる。



「良い子ぶってんじゃねぇ……もう戻れねぇんだよ、お前は! 既に人一人の人生をぶっ壊してんだ。謂わば加害者!! アニキの奴も今頃お前を怨んでるだろうよッ!」


「ピストン、様が……?」


「と〜ぜんっ!だろうがッ!!」


「う、くっ……!」



 声を押し殺し、一筋の涙を流すアリーシャ。


 漸く自分が奴を陥れた自覚を持ったか。


 頭ァ、お花畑で本当に困るぜ。


 にしても、怨みね……。


 ま、その頃には奴はビシェット家の連中に殺されてるか。


 万全を期して追撃を送ったが……今思うと勿体なかったか?


 出来るなら、俺が引導を渡してやりたかったな。

 目の前でアリーシャを犯しながら、奴を処刑してやるんだ。


 そんな事がもし出来たなら――



「クククク……ッ」



 思わず、笑みが零れちまう。


 親父殿の()()()の日も近い。


 名実ともに、セクス家は俺の物となる。



「おい、アリーシャ……」



 興奮と共に、俺の中の獰猛な獣がいきり立つ。



「咥えてみせろ」


「……」



 諦めた顔で目の前で跪くアリーシャの姿を見下ろしながら、俺は自身の完全勝利を実感した。



 お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//


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