011 新しい力
チェリー=ビシェットを殴り倒した瞬間、ピコンと言った神聖擬音が僕の頭に鳴り響いた。
レベルが上がったのか?
対象を殺さなくても、HPを0にした段階で経験値が獲得出来るという事か? ……これは余り知られていないのでは?
後で何かに応用出来るかも知れない。
そう思いながら、僕は自身のステータスを表示させる。
―――――――――――――――――――――――――
[ピストン=セクス LV.11(+1)]
総戦力:370(+20)
生命力:95/115(+7)
魔法力:40/40(+5)
攻撃力:70(+3)
防御力:57(+3)
素早さ:45(+1)
賢 さ:34(+1)
幸 運:10(+-0)
スキル:剣術LV.1 性魔術LV.1 解析LV.1
術技:【性】リリス
―――――――――――――――――――――――――
ステータスの上昇は通常通り。
新しく術技の欄が追加されているな。
リリス? これは――察するに性魔術か?
「……信じられない! オルガ様は私に嘘を付いたの!?」
「ネーナ=ビシェット……」
そう言えば、まだコイツがいたな。
オルガ様――ね。
セクス家の地位が狙いだったならば、彼女が現次期当主であるオルガに傾倒するのも理解は出来る。
その変わり身の早さには、不快感しか覚えないけどな。
「何を吹き込まれたのかは知らないが――コレが現実だ。僕は加護の儀に失敗した訳ではない」
「嘘、嘘嘘ッ!!」
「男選びが悪かったな? 自身の見る目の無さを怨むが良い」
「――ッ」
言って近付こうとする僕に対し、身を固めるネーナ。
殺す気は無い。領主の子息達を手に掛けたとなれば、上の連中も黙ってはいないだろうからな。
面倒事は御免被る。
ただ、後ろから追撃をされても困るからな。
しっかりHPを0に。
気絶だけはして貰おう。
「この私に指一本でも触れて見なさい! この村の住民の無事は保障しませんわよ!?」
「え!?」
「何……?」
僕の指先がネーナの身体に触れる寸前、彼女は此方が思ってもいない言葉を叫び出す。
「……貴方さえ、いなければッ!」
「!」
僕を無視し、その後ろのアメル君を睨み付けるネーナ。
「おい、それは矛先が違うのでは……?」
呆れ、思わずそんな事を言ってしまう僕だが、そんな態度も彼女は気に食わないらしい。
険しい顔付きで、ネーナは僕を睨む。
「何が違うって言うの!? コイツが裏切らなければ、全てが上手く行っていたのよ!?」
「わ、私……」
「絶対に後悔させてやる……ッ!」
怨念か……。
確かにこの女ならば、やると言ったらやりそうだ。
アメル君も村の連中も、ネーナの気迫に顔面蒼白になっている。
……仕方が無いな。
「僕が君に手を挙げたなら?」
「兵を率いて、この村を消すわ。これは脅しじゃないわよ!」
「けれど、何もしなくても君は村を襲うのだろう?」
「……」
「平民にプライドを傷付けられた。その怨みを許せるような女じゃない事は分かっている。 ――なら、これから僕が何をしても一緒だろう?」
「!!」
彼女へと手を翳し、僕は新たに習得した魔術≪リリス≫の使用を選択する。
消費MPは20か。
結構重い。
現在のレベルでは一日に二回しか使用出来ない。
だがまぁ、実験するには丁度良い。
魔術の効果は既に頭の中に入っている。
魔術を行使しようとした時に、その説明が頭に浮かぶ様だ。
なんとも親切な作りである。
流石神、とでも言えば良いのであろうか。
「ピストンさん!?」
「ひ、い、いやッ! ――いやぁあああッ!?」
制止するアメル君の声と、絶叫するネーナの声。
安心し給え。そう危険な代物ではないよ。
掌より発した薄紫色の魔術光は、対象であるネーナに触れると、彼女の身体を包み込む。
驚きは一瞬。
輝きは瞬く間に消えていく。
やられた本人は、一体何があったのかと困惑気味だ。
……うーん。本当にこれで効いているのかなぁ?
少しばかり、自身の魔術の効果を疑ってしまう。
が、暫くすると――
「――ッ!? な、なに……これ……ッ!?」
「ふむ。効果有りか」
「ぴ、ピストン、貴方……私に何を!?」
己の身体を腕で抱き、膝から崩れ落ちるネーナ。
その吐息は荒く、風邪でも引いた様に頬は紅潮している。
病気? いいや、違う。
彼女の潤んだ眼、呼気に含んだ艶めかしい色を見て、僕は自身の魔術が成功した事を確信する。
「性魔術が一つ【リリス】この魔術は対象の"感度"を1000倍にするらしい。実にいやらしい効果だが、その性能は破格の様だな?」
「せ、1000倍!? あっ、あ――っ!!」
言いながら僕は、ネーナの耳を軽く撫でてやる。
それだけの行動で彼女は叫び声を上げ、悶え苦しむ。
戦闘行動など、取れる筈がない。
――強力無比。
自身の習得した魔術の効果を見て、僕は思わず興奮する。
「説明しようか。この魔術の凄い所は、その効果が【永続】するという事。つまり、僕が魔術を解除しない限り、君は一生そのままの状態だという事さ」
「は――? い、一生……このままッ!?」
「……それは困るよねぇ?」
「ぃ……くッ!」
がしりと、彼女の両肩を掴む。
顔を紅潮させ、目元に涙を溜めるネーナ。
……まるで此方が悪役みたいだな。
とは言え"交渉"は進めなければいけない。
この村の人間の為にも、手を緩める事をしてはいけないのだ。
「村の連中に手を出したら、僕はこれを絶対に解除しない」
「……」
「一生、破廉恥なまま悶え苦しんで貰う……いいな?」
「手を出さなかったら……?」
「その場合は解除してやるさ。ただし、追々にな」
「!? そ、そんな……ッ!?」
「大人しくしていれば生活に支障が出ない程度に魔術の効果を弱めてやるさ。だが、もしも今後、僕に逆らう事があったなら……」
「あった、なら……?」
「発狂しながら、脱水症状に苦しむ日々を送る事になる」
「……ッ」
……そもそも、こいつらは僕を奴隷にしようとしていた連中だ。
情を見せて加減する訳がない。
交渉は厳しくイカせて貰う。
「ついでだからコイツにも掛けておくか……【リリス】!」
「ほぅっ!」
跪いたネーナを放っておき、気絶したままだったチェリーへと【リリス】を掛ける。
これでMPは0になった訳だが、その分の収穫はあったな。
気持ち良く寝ているチェリーの奴が、起きたらどんな反応をするのか見て見たい気もするが……まぁ、流石にそんな時間は無さそうだ。
「――それで? 考えは纏まったか?」
「わ、私達は……」
「……」
「村に、手を出さないわ……だから、この魔術を……」
「交渉成立だな」
「――ぅんっ!?」
勢いよく、僕はネーナの胸を揉んだ。
紳士的な行動ではないが、敵に容赦はしていられない。
突然の衝撃に絶頂し、気を失うネーナ。
「ピストンさん……」
「上手くいったな、アメル君! ――正義の勝利だ!!」
「……はぁ」
お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//
もし面白い・応援したいと思って頂けたならば、ページ下部の☆の評価ボタンやブックマークなどを押して頂けると嬉しいです。
応援・感想は執筆の励みにもなりますので、気軽によろしくお願い致します!




