1.さらば、普通の日々
初めて第2話を投稿します。まだ2作品目ですが。
いつも入っている山ということもあり、ある程度、何がいるかは把握している。熊は生息していないので、目下気を付けるのは猪と野犬に出くわしたとき。だが、
(今日の狙いが猪だから、逆に出会いたいくらいなんだよなぁ……)
庄吉さんからの依頼は宴で出すための肉。出がけに、多ければ多いほどいい、とも言われたので大きいサイズの獣を狙おうと考えている。
大きい獣といっても、運ぶのはまだ体の小さい俺ただ一人。そこで、一体で十分な量の肉を取れればいいのではないか、という考えのもと、猪を狙おうと決めた。欲を言えば雄の猪がいい。繁殖期でもないこの時期、雄は餌を食い貯めているからだ。というより、雌はこれから先の獲物となる猪を産み育てるため、なるべく狩らないほうがいい。
いつもの山道を歩いていると、普段藪で覆われている斜面が何かでかき分けられているようになっていた。わかりやすい獣道である。
(幅から推測すると、一間弱ってところか。十分だな)
現代の単位でいうと約1.5m。猪としてはかなり大型の部類だ。今まで見なかったのが不思議なくらいだが、たまに隠れるのが上手い個体がいるというのも知っているので、この時は見つけられて幸運だ、くらいにしか思わなかった。
獣道の先が風上であることを確認すると、なるべく腰を低くして進む。猪は目がいい。草丈より上に頭を出すと、先に見つけられてたちまち鋭い牙の餌食になってしまう。歩きにくいがぐっとこらえ、足音を立てないように慎重に進んでいく。
急に、開けた場所に出た。
(――――え?こんな場所、山の中腹になんてなかったはず。じゃあ、道を逸れた?いや……)
混乱しつつもあたりを見渡すと、茂みの中に大きな猪――ではなく、猪に似た何かの死骸が横たわっていた。似た何かというのは、その死骸には二本の牙の他に頭から伸びる角のようなものがあったからだ。初めて見るそれに硬直していると、突然、広場全体が光りだした。夏に照る太陽のような眩い光に、思わず目を閉じてしまった。
何故か、家にいる母の笑顔が脳裏に浮かぶ。次の瞬間、俺の意識は暗闇へと落ちていった。
ここまでが序章のような感じです。もしかすると話の区分けを変えるかもしれません。
今のところ、週に2~3話くらいのペースで投稿できればと思っています。
長さはこのくらいか、筆がのればもう少し増えるかもしれません。短くなることはない……はず。
いつまで続けられるか分かりませんが、頑張っていきたいと思います!