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0.序章

 初めまして。

 異世界モノを読むのは好きですが、いざ自分で書こうとすると設定がごちゃごちゃになるので避けていました。

 最近の異世界ブームに乗っかって妄想をぶちまけた程度の作品です。生暖かい目で見てください。

 『異世界召喚』

 現代に生きる人であれば、この言葉は聞いたことがあるだろう。創作物を好む人はもちろん、そういうものに手を出さない人でも耳にしたことくらいはあるはずだ。

 異世界を舞台にした物語は分類しだすとキリがないが、この『召喚』という区分は『転生』や『転移』とは少し毛色が異なる。後に挙げた二つは自身の意思を基に異世界へと移動するのに対し、『召喚』は意思を無視して行われることもある――というよりその方が多い。そもそも、『召喚』という言葉が呼び寄せることを意味するのだから当然かもしれない。

 しかし、呼び寄せられるモノがいるのは何も現代に限った話ではない。紀元前から召喚されるモノもいれば神代の世界から召喚されるモノもいる。

 さらに言えば、呼び寄せられる対象は有名な人物に限った話ではない。古くから日本で「神隠し」と呼ばれてきた現象はその多くが口数減らしであったが、ごくわずかに異世界へと召喚されていたという話が残っている。こういった逸話は外国にもあるが、妖怪や八百万の神など様々な信仰が根付く日本で数多く聞かれるのは決して偶然ではあるまい。

 まあ、長々とこうして語ったわけだが、どうして『異世界召喚』などを持ち出したかというと……


 ……ちょうど今、俺がその『異世界召喚』に巻き込まれているからだ。




 時は戦国――のちの教科書では安土桃山時代と呼ばれ、国の至る所で戦が起きていた。

 そんな日本のとある山奥に母と二人きりで暮らす浩一という名の少年がいた。年の頃は十二か十三といったところだが、同じ年の子供と比べると幾分背が低いせいか、はたまた男子のわりに可愛げのある相貌のせいか、十くらいに扱われることもしばしばあった。

 自身の父のことは知らない。顔も覚えていなければ母に聞くこともない。実を言えば一度だけ尋ねたことがあるのだが、いつもとは違う微笑で「あの人はどこか一所にいるような人ではないから」と言われ、何か事情があるのだと察して以降は『父はどこかで生きている』とだけ考えるようになった。

 共に暮らす母は浩一を産んで以降体調が優れず、浩一が十を過ぎたあたりでついに歩くことができなくなってしまった。寝たきりというわけではなく上半身を起こす程度はできるので、浩一にバレない程度に内職をして、浩一のための遺産を少しでも増やそうとしていた。母は強し、ということなのだろう。

 集落ではなく文字通りの『山奥』に住んでいるため、定期的に訪ねてくる商人くらいしか知り合いはいなかった。当然同年代の友などいるはずもなく、日頃やることといえば山に入って獣を獲るか、かつて遠目に眺めた武士の真似事を暇つぶしにするくらい。

 そんな生活を送っていた、ある日のこと。


「どうも、庄吉です~。しのぶさん、体調はどうですか?」

「あら珍しい、一昨日来たばかりじゃないですか。体調は問題ありませんよ。むしろ今日は元気なくらい」

 それは良かった、と胸をなでおろすのは近くの村に住む商人の庄吉さん。少し出た腹と口元の髭が特徴的な中年の男だ。母を除けば唯一の知り合いであり、俺に世の中を教えてくれた人。

「確かに、こんなに頻繁に来るの、初めてじゃない?どうしたのさ」

「いやぁ、ちょっとしのぶさんに伝えなくちゃいけないことがあってね。しかも火急の件なんだ。で、すまないが浩一くん、イノシシを一頭狩ってきてくれないかい?」

「えっ、また何でさ。庄吉さんナマモノ扱ってないでしょ」

 そう、庄吉さんが運ぶのは道具類や薬といった長持ちするものが主で、生の肉はもちろん野菜などあまり日持ちしないものは基本的に持ち運ばないはず。少なくともうちにそういったものを持ってきたことはない。

「その通り、これは商売とは別の話さ。上客に今夜宴をやりたいと言われたんだけど、急だったから食材を準備できていないんだ。だから頼むよ、報酬は弾むから」

 そういった理由なら断るわけにもいくまい。報酬に何を頼むか考えながら山に行く準備をする。

 近くの国で戦が頻発していることもあって、山に入るときも気が抜けない。落人や山狩りがどこに潜んでいるとも知れないからだ。今回は槍を持っていくことにする。一番扱い慣れている得物だから、これなら短時間で狩り終えるだろう。

「じゃあ行ってくるよ。母さん、体調が良くても無理しちゃだめだからね」

「分かっています。気を付けて行ってらっしゃい」

 いつもと変わらない言葉を交わし、できるだけ大きな獣を狩ってこようと意気込んで出かけた。

 そんな、他愛もない掛け合いが今生の別れになるなど、思いもしないまま。

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