あかね色に染まる坂
「…………」
私は、貴方のお墓の前でじっと佇んでいました。……あの時の事を思い出して___
一年前の、秋の放課後のこと。バスケットボール部に所属している貴方を待ち、一緒に帰りました。
部活帰りで、青いジャージを着用している生徒達に混じり、色々な話をしながら。
……勉強の事、学校の事、家の事……とても有り触れている。でも、私にはそれで十分でした。
こうして普通の生活をし、貴方と笑い合えるだけで。
私達の家は、大通りを抜けた先にある小さな坂の近辺。十月、十一月にもなると夕焼け空の色に染められ、陽が沈むまでの間は綺麗な赤い道が続きます。それが神秘的で、小さな頃、よく貴方と共に日が暮れるまで眺めたものです。……貴方は、覚えていますか?
そんな事を考えながら足を進めると、やがて両足はあの坂の前へ。__その時。
横から、何かが撥ねられたような、鈍い衝突音がしました。貴方の紅い涙が、私の制服を濡らします。
貴方は道路脇に倒れ、ピクリとも動きません。首がおかしな方向にグジャッと曲がっています。
「……あぁ」
……もう、死んでいるようです。何て無残な死に様なんでしょう。あの海の向こうに落ちていく巨大な紅玉は、物言わぬ肉の塊になった貴方さえも茜色に変えます。貴方を殺したあの乗用車ですら、私には茜に見えます。予期せぬ事態に呆然と立ち尽くし、何も出来ずにいました。
「……あかね色に、染まる坂…………」
そう呼ぶに相応しい、幻想世界のような光景でした。