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回顧だよ3

 

 こうして、邪神教団事件のあとにエージが仲間に加わったんだっけ。


「思い出しました?

 アグニさん。」

 エージはおれに問いかけた。


「あぁ、思い出した。

 でも、歴史では『闇』が死んだって話はなったけどどうなんだろうな?

 おれ達が死んでからどれだけの時間が立ってるのかわからないけど探してみるか?」


「おや?

 ボクの方が長生きしちゃったんですか?」

 ニヤニヤと嬉しそうに笑うエージを小突こうと立った時、また世界が歪んだ。

 これは魔女に力を使われた時と同じだ。

 帰れるのか?







「師匠?

 動かなくなってますけど老化しました?」

 アホ毛を生やした水色の髪の子供がきょとんとした顔でおれを覗いていた。


「あ?

 どこだここ?

 お前誰?」

 コイツ、ファミリアのメンバーか?

 でもおれのこと師匠って呼んだよな??


「ひ、ひどいよ!

 師匠に全部捧げたのにそんな無責任なこと言うなんて!?」

 あざとい表情でそんなことをのたまう子供はチラチラとこっちを盗み見ながらヘタクソな泣き真似をしていた。


 あ、思い出した。

 おれが隠れた町の隅に住んでいた孤児だ。

 名前は確か…ガルア。

 女の子の恰好を好むが正真正銘の男だ。


「ガルア。

 捧げたってお前…

 三食寝床付きのおれん家から意地でも出てかなかっただけだろうが…。」

 コイツは知らぬ間に家に上がり食い物を貪り、放り出そうとしたおれの全力に耐えきった真正のアホだった。

 それ以来、家に居る代わりに稽古をつけているのが日課になっている。


 段々と思い出してきたぞ!

 ここはおれの隠れ家だ。

 ってことはおれが捕まって死ぬっていう時期の近くだな。



 そこから、三日ほどたったある日。

 家の周辺にいくつかの気配を感じた。

 ついに来たかと思い、せめてガルアだけでも逃がすために家に戻ったおれは三人の弟子と対峙した。

「よぉ。

 まさか、弟子が師匠を殺しにくるとはなぁ。

 やっぱりお前達は切り捨てて正解だったよ。」


「悪いな。

 師匠いや、大逆者アグニ!

 お前がいるとおれ達に注目が集まらないんだよ!

 英雄だかなんだか知らんけどよぉ。

 さっさと死んでくれや。

 そうすれば、悪人を討ったとしておれ達の名前も売れるだろ?」


「全く愚かな弟…し?」

 急激に意識がブレた。

 なんだ?

 立ってられない??

 背中に違和感を感じて振り返るとそこには短剣をおれに突き立てたガルアの姿が映った。


「ガるあ…?

 なぜ……?」


「あの人達から聞いたんだ!

 ボクが孤児になったのは師匠が両親を断罪したからだって…!!

 裏切者!!

 お前がいなきゃ、ボクはゴミを食べることも石を投げられることも無かったんだ!!

 死ね!」

 そうだ。

 昔、ここに来たときコイツの両親は他人の弱みにつけ込み食いものにしていたからおれが断罪した。

 ガルアに会って一目でコイツの出自を理解した。

 でも、せめてこの子だけは真っ当な世界で生きられるようにおれの技術を仕込んだんだ。


「…ぐっ。

 ごほっ!

 ガルア…

 生きろ…

 そして、戦え。」


「ぎゃっはっはっは!

 こいつ、もう意識が混濁してんよ!!

 流石オニグモの毒だな。おい!

 これは一滴で50人を殺せるらしいからいくらお前でも耐えられねぇよ。

 さぁて、あとはコイツの首をギルドに出せばおれ達は大金持ちだぜ!

 ついでだ!

 このガキも殺してこうぜ?」


「お!

 いいね~!

 ガキ!

 面白い事教えてやるよ。

 お前の両親は弱みを握った奴を嬲って殺した後、その肉を町の肉屋へ売っぱらってた極悪人だぜ?

 良かったなぁ~

 両親の仇を取れて嬉しいだろう?」

 ニタニタと見下すような笑顔で一人が真実を語る。


「え…

 そんな!?

 だって、お父さんとお母さんはコイツに冤罪で裁かれたって!」

 何を言っているのか理解できないという顔をしたガルアがそう問いかける。


「はぁぁ?

 んなもんコイツを殺るための嘘に決まってんだろ?

 いやぁ~

 流石、最後の弟子だぜ!

 おれ達に教えなかった技術も持っていやがるしよぉ。

 コイツも哀れだなぁ!

 自分が作った冒険者ギルドが裏切るわ最後の弟子に殺されるわ。

 ほんと、笑わせてくれるぜ!

 だっはっはっはっは!!!!」

 人の醜悪を集めるときっとこんな笑顔になるのではないかというくらい醜い笑い顔だった。


「がっでにごろずなよ

 に…げロ。ガるア

 後は、おれの仕事だ。」

 かろうじて残った意識を総動員してもこいつらを殺すことは出来ないだろう。

 老い衰えたこの体に毒では数分命を繋ぐのが限界とみていい。

 せめて、この子だけは逃がす!

『剣』は不退転を表す力の象徴だ。


「ごほっ…

 ここから先は通さない。」

 震える手でガルアを後ろに殴り飛ばす。


「あうっ!?」

 痛みで正気に戻ったのかわからんが逃げただけよかった…

 心置きなくやれるな


 お?

 感か…くが

 き…える

 これ…が死…か?

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