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回顧だよ2


 ーーー絶望ーーー

 それは絶望が形を得たような眼だった…。

 此方を見ているはずのに映っているのはおれじゃない誰かを見ている。


「ごめん。

 おれがいたから…

 おれが生まれなければ!

 そうだよ。

 おれが行けないんだ!!

 ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

 さっきから時々聞こえていた声はコイツか!

 なんて絶叫だ…

 まるで命が削られるような感じがする。


「くそっ!

 おい!!

 こっちを見ろ!

 おれの眼を見るんだ!!」

 無理やり視線を合わせて簡潔に言葉を伝える。


「敵はいない!

 聞け!

 バカ野郎!!

 良いか。

 ここにはお前を傷つける奴はいない。

 だから、戻れ!」

 何度か伝えているうちに段々と瞳に理性が戻り始めていた。


「落ち着いたか?

 拘束を解くからじっとしてろよ?」

 ゆっくりと近づいて拘束を解きまた少し離れたところに戻る。

 こういうやつは少し離れておれが全身視界に映っていた方が落ち着きやすい。


「ボクは…?

 ……そうだ。

 みんな!」

 アイツが彼らを見そうになったので咄嗟に抱きしめて視界を奪った。


「見るな…

 見てやるな。

 あの中には女の子もいる。

 あんな姿見られたらきっと悲しむぞ。」

 おれの言った意味を理解したのだろう。

 嗚咽が交じりやがて、大泣きを始めた。



「ボクのせいだ。

 ボクがあの子達を死なせたんだ…ヒック」


「お前も被害者だろう?

 悪いのは教団だ。

 お前は悪くない!」


 ぽつりぽつりと彼は話始めた。

 彼はエージ・タツミヤ。

 異世界から教団に誘拐されたそうだ。

 そして、ここに閉じ込められて実験体として過ごしていた。

 実験の目標は人工的な超人の開発。

 やがて、最終実験を行うために各地から連れてこられた子供達と対面した。

 エージは人との触れ合いを喜んだが、それは教団の策だった。

 心を汚すことで邪神の力の一端をその身へ降ろすための…

 子供たちをエージに殺させた。

 目隠しをさせたまま魔物の檻に入れたと嘘を伝え最初の一人を殺させ、そのあとは目の前で泣き叫ぶ子の喉を切り裂きその血をエージに振りかけることを繰り返し、やがて最後の一人になった。

 最後の一人はまだ5歳くらいの女の子だったそうだ。

 震え泣くエージに彼女は言った。

 一言「泣かないで」と…

 自分が死ぬのに彼女は震えながらもエージを励ました。

 その言葉を最後に彼女は切り裂かれた。

 ここで、何かがエージに宿った。

 それは昏い黒いナニカだったとエージは言った。

 そして、感情のままそれを解き放つと教団の者は一様に狂った。

 あるものは見えない何かに怯えて眼を抉り、あるものは這い上がってくる見えないナニカを殺すために自分の腹部を何度も何度も短剣で突き刺しやがて、声が止み鼓動が止まり静寂が訪れた時にエージは狂った。

 時間がおかしくなり世界がおかしくなりそして、気づいたときにおれがいたそうだ。


「彼女たちを連れ出さないと…

 こんな奴らのところには置いておきたくない。」

 エージの瞳にはしっかりとした芯が宿っていた。

 これは戦場で死線を抜けた奴に時々宿る奴だ。

 たしか、そうだ《信念》だ。

 それは生きるという信念。

 世界に自分がいたという傷跡を残そうとしている眼だ。


「わかった。

 元々、おれ達も子供達を助けるために来たんだ。

 せめて、体だけでも弔わないと」

 ここでエージの肩に視線が引き寄せられた。

 そこにはシンボルがあった。

 おれ達の白いシンボルとは違い黒いものだがそれは光っていた。

 おれ達のシンボルは起因する感情が高ぶるとシンボルが淡く光りだすがエージのも同じように光っていた。

 シンボルを持つものはみんな狙われる。

 人に国にあらゆるものに狙われるだからおれ達は《ファミリア》を作って集まることにした。

 この時、エージもファミリアに入る事が決まった。



「さて、仲間と合流しないとな。

 エージ。

 お前にも話さないと行けないことがあるんだ。」


「?

 わかりませんが、あの子達を連れ出すの手伝ってくれてありがとうございます」


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