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海賊の襲撃

「何事!」


 レナが宿屋の部屋から飛び起きると、カイルも既に裸になったウィルマと一緒に出てきていた。


「あんた、また連れ込んだの?」


「勝手に入ってきたんだよ。それより、外を見てみて」


 そう言って外を見ると、銃を撃ちながらこちらに迫ってくる一団が、来ていた。


「村人達の襲撃?」


「いや抵抗しているだろうが」


 あちらこちらで村人がフリントロック銃を構えて反撃している姿が見えた。


「じゃあ何が襲撃してきているの?」


「海賊共に決まっているだろう」


 闇の中でカトラスを振り回して村人達を襲っている。


「海賊が陸に上がって襲撃するの」


「普通だよ」


 商船がいないときや陸上に食料や財貨があるというのなら、襲撃する。

 沿岸近くにあった石垣で守られた廃村も、海賊の襲撃に備えて作ったが、襲撃が多くて村を維持できずに放棄したのだろう。

 イスパニアなのに海岸に上陸してカイル達が水を汲みに行ったのも、沿岸部に村が無いためだ。海賊の襲撃が多すぎるので沿岸部に定住するのは、防御の整った港町だけだ。

 航平のいた世界でも海賊の襲撃が多くて沿岸部への定住が進まなかった。


「マイルズ! 直ぐに離脱するぞ! 総員に武装させろ!」


「アイ・アイ・サー」


 納屋で休んでいた兵員をたたき起こして、準備させる。


「ここでの戦闘は不利だ。敵の様子も規模も解らない。そこで、尾根に向かって移動し廃村跡へ向かう」


「大丈夫なの?」


「必要な物は手に入れた。数人でテントになる布と物資を持って向かえ。食料は各自自分の分を持って行くんだ」


 直ぐ行動できるように各自に分散して所持させていた。

 更に納屋の中に馬がいたので徴発させて貰う。火事場泥棒に近いがどうこう言っていられない。


「へ、兵隊さん! か、海賊がやって来ました。助けて下さい」


 その時、村長がやって来てカイル達に助けを求めたが。


「残念だが、こうなっては危険だ。この村はもう持たない」


 村の中に侵入された上、数が多いのではこちらに勝ち目はない。


「村を放棄して逃げ延びるんだ」


「そんな……」


「でないと全員海賊に殺されるぞ。俺たちは川を渡って向こう側の廃村に向かう。死にたくなかったら付いてこい」


 そう言ってカイルは全員を引き連れて南に向かった。


「隊長! 連中が川にも回っているようです」


 先に偵察に行った水兵のステファンが報告する。

 村は南側の斜面にあり、真下に昨日渡ってきた川がある。

 海賊が村人全員を逃さないように川側にも展開しているようだ。


「どうします?」


「丁度良い。潰そう」


 やたらと好戦的な台詞だが、この状況ではこちらが優位だ。川は村の下の方、つまり村にいる自分たちの方が上の方にいるため有利だ。

 銃による一斉射撃を浴びせることが出来る。


「海兵隊並べ! 撃て!」


 海兵隊員を横隊に並べて銃撃を浴びせる。数人の海賊が銃撃を浴びて倒れ、連中の包囲網が崩れた。


「脱出するぞ」


 カイル達は、斜面を駆け下りて川の畔にやって来る。そして、浅瀬を渡って向こう岸へ行き、今日来た道を戻り始めた。




「何とか脱出出来たか」


 カイルは付き従っている全員を確認した。多少の怪我、擦り傷程度で済んでおり重傷者もいない。


「ところで大丈夫なの? 夜の山道を歩くなんて危険じゃない?」


 レナがカイルに尋ねる。


「ああ、僕は夜目が利くから見えるよ」


 エルフは夜でも物がよく見える。しかも今夜は晴れて星明かりがあり、周りは明るい。確かに森の中は、多少暗いが大丈夫だろう。


「とりあえずロープで全員を繋いで。ロープから離れないようにしておけば、離ればなれになる事はない」


「本当に人外ね、あなたは」


「あれ、エルフだって言うこと忘れていない?」


 レナは呆れつつ、カイルに従ってロープを自分に結びつけた。

 部下達もロープを持って繋いだ。


「さあ、出発だ。海賊に追いつかれないよう夜通し歩いて、廃村に向かう」


「隊長! 村人達がやって来ます」


 海賊に襲われた村人達が村を捨てて逃げだして来たのだ。その後ろには村人を襲う海賊達がいた。


「海兵並べ! 海賊に対して銃撃せよ!」


 本当なら川を渡って助けに行くべきなのだろうが、そんな余裕は無い。

 川を天然の防壁にして、上がってくる海賊を仕留めるしか無い。


「海賊が泳いで来ました」


「海兵隊は対岸への銃撃を行え。レナ、水兵に抜刀させて上陸してきた海賊を仕留めてくれ」


「うん」


 嬉しそうにレナが言うと、こちらにやって来る海賊を仕留めて行く。

 足場が悪く、川を渡るためにバラバラになっていた海賊は次々とレナの率いる水兵に斬り殺されて行く。一人に対して三人で襲いかかり、確実に殺していった。

 最後には村人も加わって海賊を撃退した。

 やがて不利を悟った海賊達は村の財貨を手に入れた方が良いと考え、引き返していった。


「よし、今のうちに尾根を越えるぞ」


 海賊が村の財貨を奪いきる前に行かなくては。欲の皮のつっぱた連中だったら、自分たちの持っている財貨も狙ってくるはずだ。




 幸いにも、海賊の追跡は無く、カイルは尾根を登り切った後、そこで夜明けを待った。下り坂の方が危険だからだ。

 更に村の状況やブレイクの位置を確認したかった。

 夜が明けて周りが見えるようになると、村の方角を見た。一部煙は出ているが、無事なようだ。

 次に海の方角を見る。

 村の近くを流れる川の河口に二隻の船が見える。

 襲撃してきた海賊船だろう。


「どうして村を襲ったの?」


「大蒼洋へ行けなくて、手っ取り早く財貨を手に入れるために襲撃してきたんだろうな」


 海賊が商船を捕まえる事が出来なくて陸上の村や町を襲うことは良くある事だ。

 合同艦隊の作戦が上手く行っている証左だが、カイル達にはピンチだ。


「どうするの?」


「予定通り、廃村に向かう。そこで様子を見よう。海賊が出て行くなら戻る。イスパニアの当局への連絡は村長が村人を隣村に送ってくれているそうだから、連絡は出来そうだな」


 ただ、村人を連れているので歩みは遅い。村を略奪し終えた海賊が襲撃に来られたら追いつかれる可能性がある。


「ここで迎え撃つか」


 カイルは決断すると周辺の木々を伐採するよう部下に命じた。

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