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海戦 前編

 オールドマンの一件により、合同艦隊の動きが活発化した。

 フリゲート艦による哨戒網が構築され、奪われた商船の発見保護、奪回がザ・ロック周辺で行われた。

 ブレイクもオールドマンを回航した後、再び哨戒に出撃し商船の発見保護に務めていた。

 現在南風を受けつつ西に向かって航行中だ。


「いたちごっこね」


 苛立つようにレナが呟いた。


「これまで多くの商船を保護してきたけど、奪われては奪回するの繰り返しじゃない」


「でも助けない訳にはいかないよ」


 隣で一緒に当直に立っていたカイルがたしなめた。


「けど、奪っている海賊船を撃破しないと被害は無くならないわよ」


「確かにね」


 そこは素直に認めた。

 海賊に襲われる商船が多いのだから、襲った海賊船を撃破すれば奪われる商船の数が少なくなるのは自明の理だ。


「けど、その海賊船が何処にいるんだい?」


「それは」


 カイルに聞かれてレナが黙り込んでしまった。

 この広い海で一隻の船を、それも特定の一隻を見つけるのは難しい。

 点のように小さい船では、目視による監視に限界がある。ドラゴンやワイバーンを使った哨戒も出来るが、陸地から離れると何の目標も無いため戻れなくなる可能性が高く、積極的に行われていない。

 それに上空から海賊船か商船か否かを判断するのは難しい。

 竜騎士に船の知識があれば良いのだが、彼らにそんな知識はないし覚えようともしない。

 精々、船の位置を近くの軍艦に知らせる程度だ。


「前方に船影を確認!」


 マストのトップから報告が降りてきた。

 前の方を見ると確かに船影が見える。


「あの船は?」


「多分、海賊だと思うよ」


 カルタゴ大陸近くを航行する船など海賊船くらいだ。


「今のブレイクの進路は西で、相手は反対の東に向かっているから奪われた船かな」


 東に向かうと言うことはマグレブへ向かう船と言うことだ。


「戦闘配置に付けて停船命令と臨検隊の準備だね」


 世間知らずの普通の商船かも知れないが、万が一の戦闘に備えて戦闘配置を命じている。

 そうしていつも通りの準備を整えて、カイルは相手の船に停戦を命令した。


「船影接近してきます!」


「何!」


 こちらにやって来るとは、戦闘意欲が強い。


「やけに好戦的ね」


「多分、本物の海賊船だね」


 カイルはそう推測した。

 今までのは海賊船が襲って奪った商船で、回航のための最低限の人数しか海賊を乗せていなかった。

 今度は海賊船本体。回航要員を割いているだろうが、本格的な装備を搭載しているに違いない。


「総員に通達! 戦闘配置! 進路を西南西へ! 敵は本物の海賊船、奪われた商船では無い。心して掛かれ!」


「はい!」




 掌帆長が号笛を鳴らし海兵隊の鼓手がドラムを叩いて戦闘配置を伝える。


「それ! 準備しろ!」


 艦内では休息中だったり、ローブの手入れをしていた水兵達が立ち上がり配置に向かう。

 置いてあったテーブルを片付け、士官室の仕切り壁を解体、艦長室の仕切りや家具もかたづけて砲甲板をがらんどうにする。

 そこへ砂をぶちまける。甲板が濡れて、足が滑らない様にするための措置だ。

 それらが終わると砲の準備を行う。


「各砲! 装填急げ!」


「おし、砲弾を装填しろ」


 ビーティー海尉の命令で、マイルズは自分の班員に担当の砲へ装填を命じる。

 まず、海水や風が侵入しないように閉じている砲扉を開放し、動きやすくする。

 更に、点火装置の覆いを外し、火打ち石を装着。同時に機能するか確認。

 全てよし。


「火薬持ってきました」


「うわっ」


 突然背後に現れたウィルマにマイルズが驚いた。


「いきなり後ろに立つなと言っているだろう。それに火薬を運ぶときは大声で<火薬運びます>と言え。ぶつかって火薬溢したら危険だろうが!」


「はい」


 ウィルマは有能なのだが、余りにも静かすぎて動きが読めない。


「兎に角、火薬を入れろ!」


 ウィルマの持ってきた弾薬嚢から火薬の入った包を出して大砲の砲口から挿入。棒で押しつけ奥へ。更に砲弾を入れて奥にやり、最後に<押さえ>を入れて砲弾と火薬が動かないようにする。

 同時に通火孔へ針を入れて包に穴を開けて火を通り易くする。さらに導火用の火薬を詰めて完璧を期す。


「押し出せ!」


 発砲準備が整って、左右の二人が滑車装置に繋がれたロープを率いて大砲を前進させる。

 砲口が艦外に出て砲撃準備は整う。


「準備完了しました!」


 この間、僅か数分。

 日頃、訓練している賜物だ。




「戦闘配置に付きました!」


「うむ」


 後甲板に上がったサクリング艦長が掌帆長の報告を受けて頷く。


「ミスタ・クロフォード。どちらで戦闘をするべきだ」


 カイルは、自分の意見を開陳する。


「風上側からすれ違い様に砲撃後、上手回しで反転。追撃します」


「宜しい。航海の指揮を続け給え」


「アイ・アイ・サー! さて、腕の勝負といこうか」


 カイルは目の前の海賊船に向かって呟いた。 

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