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コンビニって素晴らしい

相変わらず主人公の心の中が荒ぶってます。


「ふざけているのか?」


やあ、俺だ。


「いえいえ、滅相もございません」


勘のいい方は気づくかもしれないが、以前にも行っていたあれ・・だ。


「1日に2回も警察のお世話になる奴なんてそうはいねえよ」


世の中は非情である。


この就職氷河期の被害を一身に受けている俺は、もちろん定職などあるはずも無く、権力者が吹けば飛ぶような身分でしかない社畜にも劣る社会の歯車なのだ。


「深くお詫び申し上げるとともに二度とこのようなことが起きないように肝に銘じ、改めて社会への貢献を意識し、公共の福祉に配慮した行動を心がけようと思う次第でございます」


当然、事件のあらまし全てを話してしまっては2人の身が危ないのは自明の理である。


「まともに話す気は無いのか…」


世の中には中途半端にしていいものとしちゃいけないものがある、と俺は思う。


飽き性である俺は買ったゲームが期待を大きく外れていたり、ネット小説の更新が遅かったり、アニメのキャラの声が自分の思っていたのと違ったり、ほのぼのアニメかと思ったら急にスプラッタになるものは中途半端になることが多い。


「カメラと録音機外せば殴ってもいいか?」


「落ち着いてください部長」


色々と中途半端に終わらせてしまう俺だが、人との約束は中途半端にしないようにしている。


彼女達を助けているのも1度正義かわいいの味方を名乗ってしまった自分との約束けじめだ。


「お前の報告によれば、お前は今話題の誘拐犯の正体に思い至り、何故か・・・気まぐれで警察おれたちに報告することもなく、犯人捕縛に向かったというわけだが?」


知り合いの警察官が額に青筋を浮かべながらも部下から貰った報告書を指差す。


そう言えばカルシウムが足りないと怒りっぽくなるとよく聞くがあれはほんとなのだろうか。


「私としても若気の至りという他なく、慙愧に堪えなく遺憾の極みでございます」


知性の高い動物になると食の好き嫌いが生じるのはしょうがないことではあるが、だからと言って好きなものだけを食べていきていられるほど人間は丈夫ではない。バランスを考えて食事を取り、偶には不味いものも食べて、自らを空腹の状態におくことで食べることの楽しさに気付けるのではないのであろうか。


すまん適当言った。


「最上級の反省の言葉なんだが、お前がこの場で言うと喧嘩売ってるようにしか聞こえない」


時刻は夜の真っ只中。槍の猛攻を撃退したのが夕方近くだったのでそれからの移動時間もあり、このような時刻でむさい男に囲まれながら事情聴取をされている。


「幸いにも被害による怪我人もなし、地下にいた人たちも五体満足で救出することが出来た」


地下にいた子達は例のギャルの友達含めて全員何かされたことも無く、単なる人身売買だったんだろう。


研究には金がかかると聞く、奴も資金繰りに苦労していたのだろう。手段は決して許されるものではないが。


「最初、猫が誘拐被害者を連れてきた時は我が目を疑ったぞ…」


そう、俺が以前に召喚した猫は建設中の建物の中に隠されている人たちを救っていたのだ。

見張りの人や警備の人がいたかもしれないが、見つかったところで「なんだ、猫か」となったに違いない。万が一襲われたとしても、俺の分身でもあるので簡単にやられはしない。


「お前がなにか隠しているのは分かる。俺達もメンツは保てなかったが、被害が抑えられて何よりだと思っている」


尋問をする警察官とは1年の付き合いだ。

そこまで長い付き合いではないが、俺のことをこの国の中で一番知っている人物かもしれない。


「この国に黙秘権は存在しない。お前が純粋にこの国の人間じゃない能力者だから上の連中もある程度は黙認している。だが、これ以上なにかことを起こしたら

その時は覚悟しといた方がいい。俺はどうすることも出来ない」


「寛大な措置に感謝の言葉もありません」


警察官の男─クリスは俺に最後の通告をするとため息をついて書類を見てまたため息をつく。


ため息は幸せを逃がすというが、あれは口から幸せが逃げているということだろうか?

もしそういう事なら不幸な人は誰かが吐いたため息を吸うことで幸せになれるのだろうか? 真偽の程はわからないし、こいつのため息を吸うつもりもないけどな。


「いい加減に自分のクランを作ったらどうだ?身持ちも堅くなるというし、お前も安定した生活がしたいだろ」


結婚かよ。


結婚は人生の墓場だと言われている。


彼女いない歴年齢の俺なので鵜呑みにする訳では無いが、使えるお金が減っていくのは確かだろう。


俺はまだ買いたいゲームは沢山あるし、逃した|戦利品(ウ=ス異本)を獅子の穴で委託しなければならない。欲を出せば止まることこの上なし。


「生憎、ほかの奴らと違って最初から人がいたわけじゃないし、これから一緒にいてくれるような人も見つかりそうにないな」


敬語とはここぞという時に使ってこそ効果を発揮する。希少価値と利用価値が合わさることでその価値は相乗上昇していくのだ。


「そうは言ってもな、クランを持ってない能力者って10人もいないだろ?」


流石に1年の付き合いともなると俺の口調の変化なんぞどうでもいいのか、顔色人使えずに俺の言い訳に反論してきた。


「俺以外にいるってだけでそれは前代未聞でもなんでもないだろ。俺だって最初から人がいたなら作ってたけどな」


「お前がまだいいって言うならそれでいいんだけどよ」


クリスはそう言ってタバコを取り出すとライターで火をつけて吸い始める。


最近奥さんが妊娠したらしいし、家じゃ吸えないのかもな。


「じゃあ、後は片付けだけだな」


「やっぱりやらなくちゃいけないのか……」


当然のように、壊れた病院の修理は俺がすることとなる。このくらいで見逃してくれるのは寛大な措置ではあるのだが、今の時間は夜の12時。修理の時間は早く見積もって1時間。帰宅とその他諸々の時間を考えると2時に帰宅することになるだろう。


「当然だ、このぐらいで済んでいるのが恐ろしいほどだ」


「俺が働かないことで有効需要が生まれて、それが国に返って利益を齎すんじゃないか?」


一応、自分のサボリを頭の良さそうに正当化してみる。


「今は国が拡張工事で有効需要を創出しているから問題ないな。つべこべ言わずに修理してこい。経費は国持ちなんだから感謝してほしいところだ」


「はいよっと」


その後しっかり院長室や被害を受けた部屋を新品同然に修理した。


1日にこれ程修理した人間も珍しいのではないか。まあ、この世界のギネスにはもっと凄いのがいそうだけど。







明くる日


朝の透き通った日差しと子鳥のさえずりの中で爽やかに起床──なんてことも無く、家の近くのラジオ体操で起こされた。


コケコッコー



今日は夜にバイトが入っているので朝と昼はオールフリーだ。


取り敢えず、冷蔵庫の中を開けてみる。


「物の見事に空っぽだな」


冷蔵庫の中は辛子やマヨネーズ、ケチャップなどの調味料はあるものの、肝心の具材となるものが一切無かった。


「コンビニ行くか」


いちいち戻って作るのも面倒臭いしコンビニ弁当で済ますか。


一応一人暮らしが長く、料理を作る仕事にもついていたことがあるので人並み以上に料理ができるのが俺の唯一のチャームポイントだろう。


マスター証は首にぶら下げる紐を外して財布に入れたある。ぶら下げるのはパトロールなどの時に便利なのでやっているだけであって、1日中つけている訳では無い。



近くのコンビニに着くと、コンビニ弁当とタバコを買う。


以前奮発したせいで高い買い物はできない。あの時に飯を台無しにしてしまったのが悔やまれる。


イートインで朝食を素早く済ませて外でタバコを吸う。


そう言えばタバコが体に悪くないと思っている人も一定数居ることを最近知った。タバコを薬として扱っていた所もあるらしいし、本当なのだろうか。

いや、薬に関しては麻薬とかも薬だったらしいし、一概にそうとは言えないな。


「あ、おじさん」


「昨日ぶりですね。おはようございます」


取り留めのない思考に沈んでいると、現実に引き戻してくる声が聞こえてきた。


「お兄さんと呼びなさい」


なんとも奇遇かな、昨日散々と争いの中心となった例の2人と遭遇した。この前あった時と同じコンビニだから、単純によくここを通るだけだろうけど。


子供の目の前でタバコを吸うのは流石に躊躇われるので、すぐさま捨てる。


「今日もコンビニですか?」


「コンビニばっか行ってると体に悪いわよ」


俺が連日コンビニに行っていることに対して2人は違った反応を示す。


舐めてはいけないな、世のサラリーマンなる人種はカロリーメイト常備が当たり前らしいし、さらにその上のSEなるものはエナジードリンクを机に並べるのが趣味になってしまう人がいるくらいだ。多種多様のエナジードリンクが机に並ぶ様は圧巻と言えよう。そんなことより仕事しろよと思わなくもない。あと、社内の自動販売機でエナジードリンクだけ売り切れにさせるのやめろ、俺の分がなくなるだろ。


「毎日ってわけじゃないけど結構な頻度でここには来るな」


言いながら「高麗人参50mg配合!」 と書かれたエナジードリンクを開ける。


気の抜ける軽快な音とともにエナジードリンク特有の

ツンとした刺激臭があたりに漂う。


「うわ、私この臭い嫌いなのよ」


ソラはそう言って加齢臭がきつくなってきた父をウザがる娘のように鼻をつまんで手の平をこちらに向かって仰ぐ。


臭いは人参ではないと思うけど。


「悪かったな。こちとら徹夜で作業してたせいでこういうの飲まなきゃやってられねーんだよ」


そう言って小瓶のそれを一気に飲み干す。


喉の奥を熱いものが通り過ぎる感覚とともにお腹の奥が熱くなる。懐かしい感覚だ。以前会社勤めだった時は箱ごと机の上に置いていた気がする。


「あのー、やっぱり疲れている時はしっかり休んだ方がいいんじゃないですか?」


ソニアはそう言ってこちらを心配してくる。


諸君は掃き溜めの中に咲く綺麗な花をご存知だろうか。


君はほんとにいい子だ。


「慣れるとこれが病みつきになってむしろ進んで飲みたくなって来るんだよ」


まずい、もう一杯と言う程ではないが、ド〇ペ的な中毒があるはずだ。


俺が学生の頃はエナジードリンクを飲んでから寝る強者もいた。あいつは元気してるだろうか?


「そういうものでしょうか?」


「そういうもんよ」


そんなふうな会話をして不思議そうに首を傾げるソニアとどうでも良さそうなソラを見ていると一つの違和感に気付いた。


「そう言えばあの猫はどこいったんだ?」


昨日夢中のあまり連れて行ったメシアと名付けられた猫が彼女達の側にいなかった。


「あー、あのお姉ちゃんが勝手に連れて行っちゃった猫ね」


ソラはそう言って呆れたようにソニアに視線を送る。


「その節はすみません!」


「いや、別に俺のペットでもないし謝ることじゃないよ」


持って行ってくれて感謝感謝。


「メシアちゃんの事なのですが、実は気付いたらどっかいっちゃってたんですよ」


「そうそう、家に入れて御飯を作ってる間に消えてたんだよね」


感謝感謝っと思っていたらあの猫は何処かへ行ってしまったらしい。


「まあ、猫は神出鬼没で、マイペースだからな」


そう言って今度は「マルチビタミン」と書かれたゼリー飲料を取り出す。ビタミンは大事だ。これを取らねば人間生きていられない。


「え、まだあるんですか!?」


この子にはこっちの世界はまだ早すぎたかもしれない。


さらに食物繊維のために買ってきたリンゴゼリー飲料を出したらどんな反応をするだろうか。


生きていく上でバランスは大事だよ。


「こんなのやっぱりダメです!」


「ん?」


しかし、彼女は何か気に入らないのか、否定の声を上げた。


「こんな食生活じゃ体壊しちゃいますよ。この前ソラを助けてもらったお礼に私が料理をご馳走します!」


どうやらいらぬ心配を掛け過ぎてしまった様だ。


「お礼と言ってもそこまでする必要は……」


悲しきかな「お礼なんていらない」とは言えない自分の欲の深さ。


「お昼になったら近くの公園に来てください。私たちの支部に案内します」


異論は認めません!! と口に出している訳では無いが、似たようなオーラを感じる。


「こうなったお姉ちゃんはテコでも動かないのよ」


付け足すようにソラがボソリと呟く。


「じゃあ私準備しますので」


「あ、おい」


ソニアはそう言うとすぐにソラを連れて去って言った。


あまりのスピードにソラが引き摺られているが、ソニアが気づく様子はない。


「何が悪かったんだろうか。やっぱりカルシウムが足りなかったのがいけないのか?」


今度からは牛乳も一緒に買おう。と心に決めた。


次回のASアフターストーリー

「わひゃあ!?」

「変なこととは失礼だね! これは立派な証明なんだよ」

「失うのはあっという間だった。目の前が真っ白になるって言うのはああいう事をなんだね」

「ボクは必死に暗闇の中でもがいた。溺れぬようにと。そしてつかむことが出来たんだ暗闇の中に差し込む一筋の光を」

「すいません! ブルーム様には悪気しかないのです! すいません!」



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