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黒幕?

少し長くなってしまったので二つに分けました。


さて、犯人を追い詰める前にやらなくてはいけないことがある。


「とりあえずは、『猫の手も借りたい』」


苦労人のスキルを使って自分の分身体(猫)を作り出す。使用者に似てふてぶてしい感じを醸し出しているが、気にする余裕はない。


「にゃお」


「やることは理解しているな?」


「うにゃん」


この猫と俺は意識を共有しているのでカクカク云々が通じる唯一の存在である。特にこれ以上話すこともないので無言で各自の役目のためにその場を後にした。


最近はやたらと猫との絡みが多い気がするが、気のせいだと信じたい。








「予想が当たっていれば、ここのはずだな」


目的地に向かって5分程したところ、特に何かと出くわすことなく無事に到着することが出来た。

ここまでは想定内なので、問題はここからだ。


中に入るとすぐに『探偵』の人探しスキルを使って周辺の人の分布具合を調べる。


探偵のスキルで導き出した結果は予想通り、まばらに広がる人の分布に不自然に人のいない場所が存在することを示している。


「当然といえば当然だが、こういう大きな事件にはある程度人を動かせるだけの権力背景が必要だよな」


『ぼっち』の気配遮断を使用して、今回の件の首謀者がいるであろう場所へと歩を進める。


例えスキルを使って気配を消しているとはいえ監視カメラに映る事は変わらないので細心の注意を払ってカメラの死角やフレームの間隔を突いて行くことを忘れてはいけない。




ハイ


そして、目的の部屋の前へと来たわけだが……

今更ながら俺は現在進行形で中に入る際の台詞や雰囲気をどうしようかと迷っていた。いやこの際無言で入室するのも悪くはないが、それだとスタイリッシュさが足りない。かと言って派手さを求めた末にドアを吹っ飛ばしての入室は弁償代が怖い。


「犯人はあなたです」と言いながらの入室はなんとなくダメな気がする。


「ゲロカス以下の匂いがぷんぷんするぜ」とか言って入ったらキチガイだし、「正義執行!」とか「我、降臨!」だったらただの痛い人だろう。


入室の仕方を考える続けること15秒結局……




「宅配便デース」


これに落ち着くことになった。


という訳で宅配業者を装うという、スパイではテンプレとも言える方法を選んでみた。服と段ボールは『アイテムボックス』から以前のバイト先で使用かつ譲渡されて肥やしとなっていた制服と引越しの際に詰めたままだったダンボールを起用している。


掛け声とともに部屋のドアを開けて中に入ると、まず目に付いたのがその部屋の飾り気のなさであろうか。壁に何も飾られておらず、剥き出しの壁の白がこれでもかと清潔感を主張している。


「はいおじゃましまーす。いやー、最近の荷物は重いし大きいし大変ですね。ガタガタ動くしまるで生きてるみたいですね、院長先生・・・・?」


俺さそう言って重そうに段ボールを下ろすふりをして件の首謀者に対して気さくな宅配業者を演じる。勿論、段ボールの中には何も入っていない。


部屋に入って気づくことは内装の少なさであろうか、壁掛け、表彰、トロフィー、など病院の権威を表すものが一切無い。棚が無いのは固定4次元収納があるから当然とも言えるが、まるで壁に何かあるかのが邪魔だとでも言わんばかりの徹底ぶりだ。


「私の勘違いでなければ宅配を頼んだ覚えはないんだけどねえ」


「も〜またまた~、ボケたんですか? 頭の中換気した方がいいんじゃないんですか?」


「いきなり入ってきてそのセリフは失礼じゃないかい?」


その何も無い空間の中央にあるデスクには、資料の山が双璧を成し、その中の男を囲んでいる。


場所は病院の院長室。当然そこにいるのは院長だというのは言うまでもない。


「そもそも、荷物ならここまで運ぶ必要は無いのではないかい?」


男は手に持った資料から目を話すことなく、俺を咎めてくる。


「またまた〜、毎日荷物運んでるじゃないっすか〜。院長室のどこかに」


取り敢えず警戒心を抱かせない為に軽いノリで行ってみることにした、のだが、なんだかチャラ男みたいになってしまった。まあ、何時ぞやの謎キャラよりは全然ましだけど。


「ふざけているのかい? 考えてみれば宅配業者がこの部屋に入ってこれるわけがないんだよね。職員に止められなかったのかい?」


どうやら相手側の態度は軟化どころか難化してしまったようだ。そしてあっさり指摘される矛盾点、考えなしに行動するのは良くないな。


「何言ってんすか〜、さっさと判子押してくださいよ〜」


なんだかこのキャラ普通にうざいな。


そんなうざい俺のキャラに眉ひとつ動かすことなく、男は淡々と資料に目を通しては判子を押していく。


「私は見ての通り忙しいんだ。君のような頭のおかしい人間に付き合っている暇はない。今もこうしているうちに私の貴重な時間が過ぎていくのは人類の損失といえよう。親切心としてここでは頭の治療は扱っていないとだけ言っておこう」


前言撤回、俺のキャラが目じゃないくらいうざい。

ねえ、もう◯っちゃって良いよね?


「随分気が早いですね。俺が入室した時に真っ先に隠した紙がそんなに気になりますか?」


俺がそういうと、男は資料に向けていた視線をやっと俺に向ける。良い加減失礼なんだよその態度。


「随分と目敏いね。だけど、君の想像しているような怪しいものでもないから安心したまえ」


露骨な誤魔化し方だ。俺がいつ怪しいものって言ったんだよ、三流役者。


「そうですか〜。それにしても最近変なことばっかりっすよね〜」


「何が言いたい?」


俺がそう話題を切り替えると、男は資料に目を戻しながら、興味なさげに聞いてくる。


「大まかに言えば、誘拐事件、立て続く神社などの取り壊し及び新たな建造物の設置、病院の対応遅延。この3つがなんも関係ないと考えるのには少し無理があるんすよ」


「へえ、つまり君はこの病院が何かしらの形で残りの2つに関係しているとでも言いたいのかい?」


「最初は気のせいかと思ったんすけど。警察が路地裏を一生懸命探してるのに誘拐犯が見つからないことがどうにも引っかかったんすよね」


「確かに最近の誘拐事件は犯人発見に難航しているらしいね」


飄々と応える男に少なからず苛立ちが積もる。


「警察に見つからずに誘拐を成功させる方法。それは即ち、転移でも賄賂でもない、単なる原始的な方法。輸送だと思ったんすよ」


「まあ、確かに転移をこの国で使用したらすぐに観測されて足がつくだろうね。賄賂は上の者からして効きそうにないし」


「転移ではない、それが分かっているから警察も路地裏や人目のつかない場所を念入りに捜査してたっすね。では、肝心の犯人はどうやって対象を攫ったかというとさっき言ったように輸送ってことになるんすね」


「輸送って言っても捕まえる時はどうするんだい?君が言うには警察は路地裏を警戒していたのだろう?それに転移が使われていないんだから警察が輸送車を怪しく思わないわけがない。君の言っていることはめちゃくちゃだよ」


「誘拐した対象を夜ではなく昼に運べば問題は解決するな」


「確かに昼の都市の交通に紛れればどうにかなるかもしれないね」


俺の発言に付和雷同なその態度には余裕の色が透けて見える。何かしらの自信を持たせる要素があるのだろうか。


「そして運ぶまでの間は近くの建設中の建物に対象を隠しておけばどうとでもなる訳だ」


意味わからん口調は会話の崩壊を招きかねないのでそれとなく辞めておく。


「なるほど、あえて次元的な手段を用いない原始的な方法を使うことによって警察の目を欺けるという訳だね?」


「考えついたやつは猿にも劣る野蛮人かなにかだな」


最後に発案者を煽っていくことを忘れてはいけない。

やつも俺の推理にご満悦なのか笑顔でこちらを見つめてくる。俺にそのような趣味はないので見つめられる相手が美少女だったらと思わなくもない。


「探偵ごっこは終わりかい? 随分呆気ないものだね。その推理からなんで私のところまで来れるのか不思議だよ。」


「最近この病院は人の出入りが多いらしいな。なにか催し物でもあるのか?」


男の話しは敢えて無視する。


「特にこれといったものは無いね。強いて言うなら私があと2日で誕生日を迎えることぐらいかね」


最後の情報が要らなすぎて失明しそうだが、この男の繕わない発言は何かしらの意図を感じないでもない。


「じゃあ後はこの部屋の地下にいる人の集団とここに集まってくるトラックを調べたら万事解決だな」


「さて、君の与太話に付き合うのもここまでだ。手段を選ばず退場してもらおうかね」


男はそう言って再び資料に視線を戻した直後、背後から風を裂く音と共に槍が飛んでくる。


「うおっ!? あぶねえ!!」


「やっぱり能力者ともなると素体のスペックが著しく高いね。まさか音速で迫る槍の攻撃を避けられるとは想定の範囲内だったよ」


なんとも嫌らしいやつだ。


俺が避けた槍は対角線上にいた男のとこまで進み、そのまま男にぶつかることなくそいつの目の前で静止している。


精神感応機能を搭載しているのだろう。槍が穂先を上に向けながら男の周りをグルグルと回っている。


つまり、こいつは俺がここに来ることを知っておきながら待ち構えていたのだ。


「都市と言われる場所で、しかもその中でも医療の最先端を行く人が槍みたいな旧石器時代の武器を使うなんて随分な懐古趣味だな」


男は下卑た笑みを浮かべながらこちらを見据える。

本当にこんな物が能力者に通じると思っているのだろうか? 無駄なことを敢えてするようなやつとは思えないが…。


「これが前時代的かどうかはこの性能を見てから判断したまえ」


言い終わると同時に槍がこちらへと穂先を向け、先程よりも速く鋭く迫ってくる。空気を裂く音もせずに無言の鉄棒は男の意思のままに俺へと肉薄してきた。


音速を超えているからとはいえなにか違和感を感じる……。


これはもしや?


とりあえず様子見として受けるのではなく、前回と同様に避けて凌ぐ。


「速度を上げた所で君たちの領域からしたら微々たるものか」


平然と見守る男に動揺を与えたいところたが、慢心は後悔しか産まないので油断はしない。


俺という目標を見失い槍はそのまま全身を続け、壁へと吸い込まれるように消えた・・・。槍が通って空いた穴はまるで最初からそこにそれが存在していたかのような不自然な抉られ方をしている。

射出された時の穴は依然として残り続け、閉じる様子はない。しかし注意深く観察してみると二つの穴は槍の直径よりも少しばかり大きいことに気がついた。


「消滅か?」


確信めいたものが心に浮かび、つい言葉として外へと放出されてしまう。一人生活は独り言を増加させる傾向があるとはホントのことのようだ。


「ご明察だね。君の言う通り、この槍には消滅機能が搭載されている。知っての通り、触れたものを消滅させていくことが出来る」


消滅は現象としては最強の破壊力を秘めるものであろう。質量をエネルギーと捉え、その質量をエネルギーに変えてしまうのが消滅という現象だ。逆に言えばエネルギーさえあれば物質を生み出すことも可能である。


「消滅と強奪、最強の能力と言えばこの二つは必ず挙がってくるのかもしれない───この世界を除いて」


槍が再び死角の壁から音もなく飛び出してくる。

その槍に対して俺は───掴むことでその動きを止めた。


「素晴らしいね! 話には聞いていたがやはり能力者達きみたちには消滅が効かないようだね」


男は興奮しながら槍を素手で止める俺を観察している。


この世界の一部の住民及び一般的な能力者はチンケな消滅は屁ともしない。常識という程でもないが少し能力者について齧った人間なら知っているかもしれない。


先程言ったように消滅が現象ならば反応速度が存在するのは当然の理である。つまり一瞬のうちに消滅しているように見えていても同時に全てが消滅している訳では無い。


それゆえに再生スピードが消滅のスピードと同じになると平衡状態となって見かけ上変化しないことになるのだ。再生スピードが消滅のスピードを上回ると逆に再生していくわけだ。


「君たちの再生能力はスライムなどとは比べ物にならない程素晴らしい!! 一体どういうメカニズムでそれほどの代謝を生み出すことが出来るのかぜひとも知りたいよ!!」


興奮冷めやらぬのか嬉嬉として言葉を並べる男の様子は医者というよりも科学者としての側面を大いに感じさせる。


「しかし、能力による消滅は現象による消滅とはまた違ったものと聞くがそうなのかね?」


興奮の最中に突如として疑問が浮かんだのか、男は急に冷静になって質問を問いかけてくる。


「能力者の使う消滅は違ったアプローチだからな。能力同士での対抗になるだろうな」


言いながら掴んだ槍を男へと返す、もちろん光速で。


さすがの消滅も光の速度での維持は難しいのか、槍は蒸発して男の元にたどり着く前にその姿を失ってしまった。


余波が男へと向かうが、見えない壁が存在するのか、衝撃は円形に広がり男へと到達することは無かった。


「驚くべき腕力だね、やっぱり興味が尽きないよ」


それた衝撃は壁を吹き飛ばし、壁の奥に控えていたのだろう多数の槍が現れる。その剣山のようにように並び立つ槍の中央に一際異彩を放つものが存在する。


「科学者達には他のことを研究することをオススメするけどな」


次回のASアフターストーリー


「俺を襲った理由は何だ?」

「君自身にも興味があることは否定はできない」

「『職業』と言うらしいね、君の能力は」

『限界点に到達。ゲイ・ボルグ_ghost_起動』

『エネルギー保存。対象特定』

「ちぃぃぃいいいえぇぇぇすとおおおお!!!!」

「能力どうしの衝突は、より練度の優れた方が打ち勝つようになっている」

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