転校前々日
夢を引きずる、まだ寝起きのぼんやりした頭のまま、新しい制服に袖を通してゆく。まだ、一度しか袖を通したことがない制服が、なんだかゴワゴワしている気がする。
「・・・はぁ。」
無意識のうちにため息が漏れる。馴染んでいないこの制服が私自身の写し鏡のようで憂鬱だった。私は今年で高校2年生になる。つい数か月前までは生まれ育った町で十六年間を過ごしてきたのだが、どこにでもある、“家庭の事情”により転校を余儀なくされた。転校をすること自体にあまり抵抗はなかったが、新しい環境・新しい人間関係を作り直さなければならないというのは、織香にとっては憂鬱になる原因でもあった。
(転校生ってそれだけで周りに注目されるってことでしょ。前に立って自己紹介でもさせられたら・・・私・・・。)
そんなことを考えることさえ嫌だというように首を振った。不安だけが大きくなってゆくせいで普段から青白い顔はさらに白さが増している。大きな瞳を縁どる睫毛の影がその白さを際立たせており,きゅっと結んだ赤い唇が微かに震えていた。何もかも嫌だといっても始まらない。一時の注目を我慢すれば全て上手くいくのだ。これまで何度も言い聞かせてきた言葉を胸の内で繰り返して深呼吸をした。
「あら、似合うじゃない。」
リビングへ降りてみると,母が開口一番にそういった。
母は,高い鼻梁・深い二重の瞳,そして薄い唇は眉目秀麗という言葉がふさわしい顔立ちをしている。織花とは違う,健康的な少し焼けた肌は母を美しく生き生きと見せていた。その整った顔にふさわしく,気の強そうな瞳力は,初対面の相手を委縮させるらしく,会社で営業をする立場としてはもってこいだと,以前,母の職場の同僚が話してくれたの覚えている。そのあと,母に足蹴りされていたが。その気の強さも姿見も織花とは,あまり似ていない。母は太陽のようにまるで内側から輝いているようなオーラを放っているが,織花にはそんな華やかさなどは縁遠かった。
「・・・そうかな。私には派手な色合いじゃない?」
着ている制服を見下ろしてそういうと母は明るく笑い飛ばした。
「なにいってるの。それくらいの色なら逆に目立っていいじゃない?」
新しく袖を通した制服は,前の学校とは違いブレザーだ。紺を基調とし,白い糸の刺繍で縫われたラインが袖口に美しいラインとなって縫われている。胸元には学園の象徴の白鳥のマークが銀糸で縫われており,そのふちを赤や緑,黄色で鮮やかに表現してある。スカートは赤色のチェックになっていてなかなか可愛らしい。
「ねえ,ほんとに一人で大丈夫?私,やっぱり仕事休もうかしら。」
急にそう切り出した母は心配そうに眉をさげている。織花がこの制服をきているのは,明後日,入学手続きをした神坂学園に校内案内という名目でいかなければならないからだ。
「大丈夫だよ,今日は校内を案内してもらうだけだし,それだけなら私一人でも大丈夫。それに,急に仕事休んだら会社の人が困るでしょ。」
「そう? だって女の子だしやっぱり心配じゃない。なにかあったら・・・」 。
「あのね,学校だよ?何も起きたりしません。」それに,私は小さな子じゃありません,とつけくわえる。
「そうだけど・・・。」
それでも,どうやら心配らしい。物事を決断する時には,ほとんど悩まず即決をする母なのだが,織花のことになるといつもこの調子になる。
(家具一式買うときには,値段も見ないでサインしていたのに・・・この慎重さをもっと違うところにいかしてほしい。)そうは思っても織花の人見知りが激しい性格を知っている母が心配に思うことは当たり前なのかもしれない。
(私もほんとは心細いんだけど,いつまでも甘えてられないよね。これから自分の通う学校になるわけだし。)
なんとなくチラと見た時計を見てハッとする。
「ね,もう時間だよ。早く行って。」
母も織香につられたように時計を見た。
「え?やだ,ほんとだわ。遅刻しちゃう。あ,朝食はサンドウィッチが作ってあるから,それ食べて。」
「うん。わかった。」
鞄を手に駆け出した母を玄関まで送っていく。どたどたと慌ただしい人だと思うけれどしんみりしてるよりもこちらの方が母らしい。パンプスを履き終えた母が扉の取っ手に手をかけて振り返る。顎のラインで切りそろえた黒髪がふわりと広がった。
「じゃあ,いってきます。今日の帰りはそんなに遅くならないと思うけど,なるだけ早く帰るから。」
「わかった。」
「あ,それと,何かあったら必ずメールしてよ?」
「ふふ,はい。早く行かないとほんとに遅刻しちゃうよ?」
約束よ,と念をおして仕事に出かけて行った。織香も自分の身支度を済ます前に母のお手製サンドウィッチを食べるため,リビングへと向かった。
⁂⁂⁂
神坂学園――織花の通うことになるこの学校が創立されたのは八十年程前である。この学園で他と異なっているとすれば高校と大学が合併していることであった。たとえ社会にでていなくとも絶えず自力で成長する・仲間と支え合いながら困難に立ち向かう力をつけることが学校のテーマであるらしい。そのため,上の者が下の者の面倒を見る。下の者は上の者を敬う。というのは当然のことで差をつけるのではなく切磋琢磨し,よりよい社会をつくる人材を生み出すことが今の若者には必要だと考える理事長の考えもあるらしい。
(へえ・・・。大学生と高校生が同じ校舎に・・・。)
読んでいたパンフレットから織香は顔をあげた。家からおよそ二十分程歩いたところにこの神坂学園はある。織花は都心である東京からこの福井県まで引っ越してきた。はじめは抵抗があったものの,こちらにきて三週間―。周りはビルではなく木々の方が目立つ。住宅もぼちぼちみられるがやはり東京と比べると機械的なものが少なく感じる。今まで見かけていた車,騒音や,酔っ払いは全く見ないこの場所は心が安らげる気持ちになれる。織花はそんなこの場所が好きになりつつあった。
そんな場所にそぐわない建物がある。それが今,織花の目の前にある学園だった。周りの木よりもはるかに高い幾何学的な建物は違和感さえも感じる。都会にあるようなビルのような形になっており,窓はガラス張りだ。他にも温水プールや,温室,図書館などの施設も整っているようだ。さらに,この学園には近くに寮も完備しているため,県外からの学生ほとんどは寮に住んでいるらしい。幸い,織花は実家から通える距離だったため寮生活にはならなかったが,もしも母が出張ともなれば家にいるのは自分だけになる。そうなれば,ほとんど一人暮らしも同然だ。
「事務室を探さないと。」
いつまでも入り口で立ち続けているわけにはいかないので事前に言われていた通りに事務室を探すことにした。数段階段を上り校舎の入り口に立つと,織花よりも先にドアがスライドした。
(このまえ初めてきたときも驚いたけど。学校にこのハイテクはびっくりするな。)校舎に入ると生徒たちの靴箱が並んでいる。棚には,靴しか入らないような小さなスペースが並んでいてそのなかにはローファーが入っていた。織花はどこに自分の靴をおけばいいのか躊躇い,そのまま置いておくのも違う気がしたので,目立たない高い場所に靴を置くことにした。来客用と書かれたスリッパを履き,奥まで続く廊下へ進む。どうやらこの階には生徒がいないようだ。そのことに少し安心して,さらに廊下を進んでいくと,「事務室」と書かれている札をみつけ,少し除いて中を窺う。人影がちらほら見えるがそれほど沢山の人がいるわけではなさそうだった。
(名前を言って,担任の先生に取り次いでもらって,お礼を言う。よし。)先日寝る前に繰り返した段取りを胸に手をあてて復習して,ノックをしようとするとまた自動でドアが開く。
「あ・・・。」
前触れなくドアから現れた少女の姿に,中にいた人々が驚いて視線を向ける。その視線に,さっきまで復唱していたはずの言葉がでてこない。体がこわばって口がパクパクするだけだ。
(いわないといけないのに・・どうしよう・・。)
気持ちが焦るばかりで動けないでいると,女性が近づいてきた。
「こんにちは。」
女性が微笑みながら話しかけてくれた。恰好をみると職員のようで胸のあたりに「能呂」という名札がぶら下がっている。
「・・・こ,こんにちは。」人柄のよさそうな笑みにつられてはにかみながらも挨拶をかえす。
「何組の子?お名前は?」どうやら学校の生徒と勘違いされているようだった。
「あ,の,向坂織花といいます。更木先生にお会いしたいんですが。」
「更木先生? ああ。そういえば,転入生の子がくるって言ってたかしら。もしかして,あなたが?」
「・・はい・・」と織花が答えるとなぜか歓声があがる
「あらあら,更木先生から聞いてるわ。すぐ先生に連絡するわね。ここに座って少し待っててくれるかしら。」
うなずくと,ドアの近くに設置してあるソファへと促され,織花は腰を下ろした。
忙しない様子で、野呂さんが連絡を取ってくれている間,周りの人の視線を感じて織花は俯くしかなかった。物珍しい視線が自分に向けられているのを感じ、息が苦しくなった。こんな調子でクラスになじめるのだろうか。人見知りの自分には,逃げずに座っているだけで精一杯だった。
「連絡がとれたわよ。更木先生がすぐこちらに来るそうよ。」手配してくれた野呂さんの温かい笑みに,心が和む。
「・・・ありがとうございます。」
「更木先生はいい先生よ。緊張しなくても大丈夫。ところで,向坂さんは,どちらからいらしたの?」
「・・東京です。」
「あら,そうなの。私の娘も東京に住んでるのよ。東京に上京したら,ここがどんなに田舎だったか実感したって言ってたわ。向坂さんは,ここがすごく田舎で驚いたんじゃない。ここってほら,家はみんな立派で新しいものも多いのにあんまりスーパーとかお買い物ができる場所が少ないじゃない?」
初めは確かに驚いたが慣れればそんなこともない。母が市外に働きに行くために買い物は全て済ませてきてくれるし,織花も物欲があまりない性質なので心底困るということはなかった。強いて言うならば,書店がないことくらいだろうか。
「・・いいえ,そんなことはないです。」
「あら,そーお?私は生まれも育ちもここだから,なにか不便があったら遠慮なく相談しに来てね。私,だいたいここにいるから。」
「あ,ありがとうございます。」
裏表のなさそうな優しい笑顔につられて思わず笑ってしまうと,あら,と言われる。
「向坂さん,綺麗な子え。」
え,と思わず顔が固まってしまう。今のどこにそんな場面があったのだろうか。なんと返答をしていいのかわからず詰まってしまい,たじたじとしているのを見て,さらに野呂さんが笑う。そんなとき,事務室のドアが開いた。
「すみません,更木です。」
「あら,更木先生。来るのがほんとに早かったわね。」
入ってきたのは長身の男性だった。野呂さんと話している姿から,2人は仲がいいようだ。野呂さんの話に,更木先生は頭を掻きながら笑顔で対応している。目元が優しげで女生徒にも人気のありそうな雰囲気だ。
(なんだか,優しそうな先生でよかった。)織花はそんな二人をみて単純な感想を抱いていた。慌てて,自分も挨拶をしなければと立ち上がったが,話をきりだせずオドオドしていると,更木先生と目があった。目が合った瞬間に微笑まれてしまい,このような場面でどうすればよいかわからず,思わず目線をそらしてしまった。。
「遅くなりました,向坂織花さんですよね。」
「は,はい。」
「時間通りに来てもらったみたいなのに来るのが遅くなってしまって申し訳ないです。更木といいます。よろしくね。」
俯きがちな織花の顔を覗き込んでふんわりと微笑まれた。間近でみた父親以外の男性の笑顔に頬が熱くなる。
「い,いえ,野呂さんが一緒にいてくれたので・・・。こちらこそ,よろしくお願いします。」
真っ赤になりながら,かまないよう必死で言葉を紡いだ。
以前,母と学園に来た時には更木先生は出張で会うことができなかったため,今日が初対面になる。紳士的な態度といい,かなり女性受けのよさそうな先生だ。
「それじゃあ,校舎を案内するのでついてきてもらえますか。」
「あ,わ,わかりました。」
ソファに置いていた鞄を掴み,野呂さんにもお礼を伝えて,更木先生の後を追った。
「パンフレット読んでいてくれるみたいだからわかると思うけど,この学園は三階から,七階までが生徒たちの利用する教室になっていて,八階からは,大学生が利用する部屋がほとんどだね。職員室は二階にあります。普通の学校とは違うから慣れるのは大変かもしれないけど,慣れるのはすぐだよ。大体案内終わったけど何か質問はあるかな。」
「・・特にないです。」
「今すぐには思い浮かばないかな。また聞きたいことがあれば聞いてください。」
「は,はい・・」
(・・更木先生の笑顔って・・・)
なんだかこちらが誘惑されているような,好意を持たずにはいられない危ない笑顔だ。なぜだか,頬が熱くなる。
突然,目の前を歩いていた先生が立ち止まる。
「やあ,静稀くん。どうしたんだい,こんなところで。」
「・・更木先生。こんにちは。理事長室に行った帰りです。」
急に立ち止まる先生の視線の先にはで女生徒が立っていた。織花よりも背が高く,肩のあたりまでの長さで切り揃えられたの美しい髪。整った顔立ちからは意志の強そうな,そして,凛々しい雰囲気が感じられた。
「ああ,そうか。その様子じゃ,また無理なお願いでもされたのかな。」
「・・いいえ,そのようなことはありません。」
織花からしてみれば,彼女の表情は無表情にしか見えないのだが,更木先生は彼女の変化に気づいているらしかった。それにしても,理事長室に呼ばれていたということは,彼女は一体何者なのだろう。
「・・・ところで先生。彼女は?」
目の前の美少女に“彼女”とよばれる人物はこの場で織花しかいなかった。見上げれば美少女の瞳がじっとこちらを見つめていた。真正面からみたその顔の美しさに思わず息をのむ。
「ああ。彼女は転校生だよ。君よりも一つ下の学年になるかな。」
「そうですか・・。初めまして。神坂学園の生徒会長を務めている深山静稀です。」
(生徒会長なんだ・・・。美人なうえに人をまとめる力もあるなんてすごい。まさに才色兼備)美少女から白くて長い指のそろった手が織花にのばされる。戸惑いながらも,織花もおずおずとその手を握り返した。触れた手は温かかった。
「は,はじめまして。向坂織花で,す。」
言った瞬間,思わず赤面してしまう。自分はこんなに顔が赤くなるたちだったろうか。今日は赤面してばかりの気がする。
「よろしく。向坂さん。」にこりと微笑まれる。ドキリと心臓がはねた。
「あ! よ,よろしくおねがいします。」
赤面が止まらない。生徒会長さんはさっきまで無表情に淡々と話していたのに,笑顔はまるで花が咲いたように美しくて見惚れてしまった。だけど,そんな笑顔も,よく見ると瞳は笑っていなかった。冷えた水底のようなイメージが浮かんできて,すっと背筋が冷たくなった。
「では,更木先生,私はこれで。」
「ああ,引き留めて悪かったね。」
私の手を離した静稀さんは,そのまま一礼をして歩いて行った。
歩き去る前,一瞬だけ私に視線を向けて。
「彼女は,今までで一番若い生徒会長なんだ。優秀で先生方も頼りにしているんだよ。」
確かに,理事長室にも出入りするくらいの信頼があるのだろう。頼りない自分に比べれば一つ年上なだけの静稀さんとは年齢差以上に責任感とか重圧感とか背負っているもの自体が違うのだろうなと漠然と思った。振り返れば彼女の姿はないものの,あの華やかな笑顔とは対照的だった瞳がとても印象的だった・
先生の案内は再開されたものの,授業中なので教室の説明は簡単に見ただけだった。他にも生徒達が使用している教室は見るだけにしておき,使用していなかった特別教室や(円卓のテーブルが並び前方に映画館並みの巨大なスクリーンがあった),LL教室(教卓を中心にパソコンがならんでいた)を案内してもらった。ほとんど一周したような形で,再び一階のホールに戻ってきたところで更木先生を呼ぶアナウンスが響いた。どうやら,先生に急ぎの電話がきたらしい。先生には,待っていてくれと言われたけれど,転校生だからと言っていつまでも先生を独占しているわけにもいかない。校舎を案内してもらったことに礼を言い,あとは一人で行くことを告げて更木先生と別れた。が
「ふう。見て回るのだけでも疲れる・・・」
ため息と同時に独り言がこぼれた。あと,見学していない建物と言えばここから近い図書館と旧校舎だ。本好きとしては,図書館へ行ってみたい気持ちが大きかったが,もし人に出くわしたらということを考えてしまい,そちらに足が向かない。図書館へ行くのは学園生活に慣れてからでも十分だろうと思い直し,地図で旧校舎を確認する。新校舎よりも二回り小さい建物のようだ。更木先生は,学園生活の中で旧校舎を使うことはほとんどないと話していた。学園建設時の建物だそうで,どうゆうわけかそのままの状態保存という形で残しているらしい。となれば,行ったとしても方向音痴な織花にしてみれば自ら迷いに行くようなものだ。
(さっき別れたばかりだけど先生に挨拶をして,今日のところは帰らせてもらおうかな。意外と疲れたし。)
そう考えて職員室まで行こうとしたとき。はっと立ち止まる。階段上からいくつかの足跡に交じり,声が聞こえてきた。複数聞こえるそれらは間違いなく階下を目指している。このままでは鉢合わせになってしまう。
まだ,他の生徒と会える心の準備ができていない――。考えるよりも先に足が動き出し,階段から離れ廊下の奥へとほとんど逃走に近い早歩きでその場から離れる。
(普通なら,同じ年代の子と会うのに心の準備なんて必要ないのに・・・。いつまで,私はこうして逃げ続けるの?)
情けなさから胸が苦しくなる。成長できない自分が歯がゆくて仕方ない。逃げた先にも階段があり,やはりそこからも足音が聞こえてくる。思わず,目の前にあったドアノブを回して外に出てしまった。
(え,ここって・・旧校舎?)
目の前には木造建築の建物がそびえていた。決して新しくはないものの,かといって,古びれている印象でもない。
(新校舎がデジタル時計とすれば,旧校舎がアナログ時計みたいな・・・?ここまで正反対のものが同じ敷地内にあるなんて,なんかすごい違和感・・・)
立ち止まっているうちに後ろの方からがやがやと声が大きくなってきた。隠れようにもかくれようがない。迷っている暇もなく,目の前にあるドアノブを回した。
)
ギギ・・・
旧校舎はその見た目とは違い,入ってみるとまだ校舎としても使えそうなくらい綺麗な状態だった。近くの教室をのぞいてみると蛍光灯は嵌められたままで,黒板にはチョークがそのまま置かれている。別段,埃がつもっているわけでもない。
「学園生活で使わないにしたって,綺麗すぎるような・・・」
(人気はないのにまるで・・さっきまで人が使っていたみたいな・・・ううん,違う。)他の教室もみてみると,机の上には真っ白なシーツが被されており,窓の淵にはかすかに埃のようなものが積もっていた。なのに,先程に見た部屋は人がいた形跡がいたるところにみられた。
さっきから感じるもやもやはなんだろう。身体を触れるか,触れないかの距離で逆撫でされているような。
(ううん,気のせい気のせい。ましてや今はお昼時だし。幽霊とかでる時間帯じゃないし。)ぶんぶんと頭をふって気味の悪い考えを追い払おうとする。背後に目をやると,明るい陽射しの中,新校舎の廊下には沢山の生徒が話しながら歩いていたり,走って他の生徒を追い抜いたりしている姿がみえた。明日から自分のあの中の一員になることをじわじわと感じた。
(あ,この時間なら,お昼休憩かな。今戻っても人が多そうだし,もう二度と立ち入ることもないならもう少し探検しよう。)
普段は,湧いても無視する好奇心をこのときなぜか採用する気持ちになっていた。
これからどうなっていくのか作者にも見当がつきません。
主人公の成長をメインに書いていきたいという軸をぶれることなく,時に恋愛もまぜて書いていきたい思います。
皆様,長い目でみてください。よろしくお願いします。
更新はマイペースですが,頑張ります