1-6 ココアとクッキーと、苦い過去
気が付くと、私は、小野寺出版の社長室にある、ソファーに収まっていた。
重厚な家具に囲まれたその部屋のソファーは、革張りでそれは大きく立派で、座っているというよりも、収まるという方がピッタリだった。
篠田さんはまだ戻っておらず、なぜか若社長も居なかった。
その代わり、隣に東野部長が座っていて、慈しむように頭をなでてくれていた。
視線の斜め前ほどには、先ほどから東野部長の近くに居た壮年の男性が、沈痛な表情で立っていた。
私の思考がようやっと回復してきたのを見て、その男性は、こちらに歩みよってきた。
「この度は、大変申し訳ないことを……」
「い、いえ……!こちらこそ、助けて頂いて、ありがとうございます」
私は慌てて、頭を下げるた。
悪いのは、あの美園社長と言う人で、決してこの会社の人ではない。
しかし、それを言っても、彼らは自分には『関係ない』ことだと言うのだろう。
そうかも知れないが、割り切れない気持ちでいっぱいだ。
「なんとお礼を言っていいのか……その、なんだか大きな仕事が……」
そこまで言うと、案の定、東野部長が頭を横に振った。いい香りがする柔らかい髪の毛が、頬をくすぐる。
「そのことはあなたのせいじゃないの。
だから、気にしてはダメ。
泣いてもいいけど、そのことでは泣かないで。
ところで、怪我はない?」
「はい。おかげさまで……」
「しかし、そうは言っても、もし、後からでも、怪我はもちろん、精神的なものも含めて、何かあったら、すぐに連絡をして下さい」
目の前の男の人が、東野部長の言葉を受けて、手渡してきた名刺には『小野寺出版 広報・マーケティング部 部長 青井竜彦』とあった。
東野部長と並ぶ、偉い人だ。
しかし、東野部長は私からその名刺を奪うと、テーブルに置いた。
すげなく扱われた名刺の主が、苦笑した。
「こういうのは、同性同士の方が相談しやすいと思うわ。
私が昨日、渡した名刺、持ってる?
まさか捨てちゃった?」
「いえ!あります!」
「東野部長……この子に名刺を?」
「ええ、昨日、ちょっとね。
篠田さんに相談してもいいかもね。
あの人なら、絶対に、黙ってないと思うし、あなたも相談しやすいでしょう」
青井部長の不審な顔など、ものともせず、ふふふ、と意味深に笑う表情が魅力的だった。
「そうですね」と同意しようとした時、社長室にまた一人の男性が入ってきた。
身なりは若社長と同じくらい良く、年は私の父親くらい……だと思う。
「冬馬社長は何を考えているんだ!?」
男性は、いきなり怒鳴るような口調で言った。
部屋の中に、目的の人物がいないと確認出来ないほど、怒っているらしい。
東野部長は、それに対して、立ち上がって答えた。
「若社長なら居ませんよ、井上常務」
「東野部長か……君が居ながら、なんたる様だ。
今すぐ、冬馬社長に謝罪させなければ。
今度のプロジェクトは、もはや小野寺グループの社運がかかっている一大事になっているのだぞ。
すでに資金も投入されている。失敗は許されない。
冬馬社長の勝手で、好きにしていいものではないのだ」
「お言葉ですが、美園なんかに、うちの若社長の頭を一ミリだって下げさせるつもりはありません」
「では君が責任を取れるのか?」
「我々全員が、総力を挙げてなんとかするんですよ」
「井上常務、我々の総意です、協力をお願いします」
東野部長を援護するように青井部長が言った。
社長室に続く秘書室から、秘書たちが様子を伺っているのが見えた。
牧田秘書室長だけが、難しい顔で電話をしている。
「あなたが、若社長のことを良く思ってないことは知っています。
ですが、同時に大社長に対して、絶対の忠誠を誓っているのも存じ上げています。
ならばこそ、小野寺の為に、全力を尽くしてくれると……信じていますわ」
東野部長は艶やかに微笑んで見せた。
「まったく、雨宮との縁談は壊す、美園とのプロジェクトはダメにする。
一体、自分を何様だと……」
彼の言葉に、私はドキリ、とした。
そうしたら、まるで、その感情が伝わったかのように、若社長に悪態をついていた井上常務が私に気が付いた。
彼は場違いな存在に眉を顰める。
「君は……?」
若社長から借りた上着の前をしっかりと合わせ直し、まだ覚束ない足で立ち上がろうとした。
「立たなくてもいいわよ、真白ちゃん」
東野が彼女の肩に手を置きながら言った。
それを聞いた、井上常務の表情に変化があった。
「ましろ?」
「はい。
椛島真白と申します」
座ったまま自己紹介した私は、なんとか若社長の弁明をしようとした。
しかし、改めて私の姿を見た男性、井上常務の顔が赤くなったかと思ったら、青くなり、再び、赤くなった。
どんな想像をしたのか、あまり考えたくないが、おそらく、彼は限りなく正解に近い答えをだした。
「なんてこと!
あのあほボンが!この神聖な小野寺出版でよくも……!
………………!!
そ、それで君は大丈夫なのか?その……」
微妙な問題なだけに、ズバリとは聞けない中年男性と、はっきりと答えられない私に代わって、東野部長がとりあえず無事なことを伝えてくれた。
「だが、今はそうでも、後々、何かあるかもしれない。
精神的なこともあるだろうし……」
ブツブツ言いながら、井上常務は青野部長とほぼ同じ文句を言いながら自らの名刺を差し出した。
突然の豹変ぶりに訝しくも思ったけど、彼が小野寺グループの一員として、不正や非道に対しては厳しいらしいことは分かった。
プロジェクトに関しても協力してくれるらしい。
不安と井上常務への反発心も薄れたので、素直に名刺を受取ろうとしたが、両手が塞がっていた。
ここでも代わりに東野部長が受け取ってくれた……と思ったら、青井部長の名刺と同じ運命を辿った。
同じ部長職はともかく、常務と言えば、さらに偉い人なのに、こんな扱いをしていいのだろうか。
私の方が相手の顔を伺ってしまう。
そこに、ノックもそこそこに入ってきた、可愛らしい声が部屋に響いた。
「落ち着きました?
あ、これ、コーヒーです。良かったらどうぞ。
それから、私の名刺もどうぞ。女の子同士、年が近い方が話しやすいかもしれないでしょ」
「あら、素敵な言い草ね、静香ちゃん」
東野部長の冷たい視線に臆することなく、その女性は私の目の前にコーヒーを置くと、常務と部長の名刺が並ぶテーブルの上に、自分の名刺を置いた。
そこには、社長秘書である肩書と、永井静香と言う名前が書かれていた。
それから、自分があの美園に目をつけられ、いかに嫌な思いをしたか、私がひどい目にあって申し訳ないと思っていること、一撃を食らわせたことに対する賞賛……と、次々に訴えた。
「そのうち、きっとお礼をさせてね。
今は、コーヒーをどうぞ、ミルクと砂糖は要ります?
あ、みなさんの分もちゃんと淹れてきましたよ〜!」
クルクル変わる表情と大きな目が、とても愛くるしい人だ。
それなのに、彼女が心を込めて淹れたというコーヒーに誰も手を出そうとはしなかった。
私はありがたく頂いこうとしたが、そう言えば、未だに手が塞がっているので無理だった。
「篠田さん……遅いですね」
思わず呟くと、永井秘書が「あっ」と声を上げて、上司であるはずの井上常務と青井部長に向かって、「ここ今は男子禁制ですよ!」と追い出しにかかった。
二人の背中を押して部屋から出ていく。
入れ替わりに、篠田さんが着替えを持って来てくれたので、ようやく新しい服を着ることが出来る。
貸してもらった若社長の上着を脱ぐのが、もったいないと思ったのは秘密だ。
部屋に戻ってきた永井秘書にそれを手渡したのを、彼女が手慣れた感じでハンガーにかけて片づけたのを見て、うらやましいと思ってしまったのも、秘密だ。
自分が羨望の目で見られていることを知らない永井秘書は、私の方を見ると冷める前に、とさらにコーヒーを勧めた。
篠田さんにも声をかけたが、他の人と同じように、コーヒーの前で逡巡している。
のきなみ拒絶されているコーヒーだが、何か問題でもあるのだろうか?
やっと両手が空いたので、試しに飲んでみようと、カップに手を伸ばした時、扉をノックする音がし、コーヒーの香りを凌ぐ、濃厚な甘いココアの香りが漂ってきた。
不思議に思って顔を上げると、そこには、トレイを手にもった若社長がいた。
トレイの上には、社食に併設されているカフェのココアが載っていた。
自販機の紙コップに入っているココアではなく、ちゃんとしたカップに入っており、マシュマロとチョコレートソースに、カラフルなミックスカラースプレーまでトッピングされている上に、シナモンの香りもしている。
その隣には、チョコチップたっぷりの大きなクッキーまで添えられていた。
女子社員の八割がその甘い魅力に抗えず、体重計の上で悲嘆にくれることから、『天国と地獄』と称されている社食併設のカフェのものだ!
「どうぞ。甘くて美味しいよ」
私は言葉を無くし、篠田さん、東野部長、永井秘書の女性三人は、同音異句のうめき声を上げた。
「出来れば、一番人気のレモンメレンゲパイがあれば良かったのだけど、もうこれか、ゴマクッキーしかなくて……ゴマの方が良かった?
……多分、君はこちらの方が好きだと思ったのだけど」
またもや、三者三様の言葉にならない声がした。
しかし、その意味を推察している余裕はなかった。
「はい……好きですチョコチップクッキーも……ココアも」
絞められたカエルの方が、まだマシかもしれない声で、必死に答えた。
ココアは大好きだ。
そして、それを知っているのは若社長だけかもしれない。
なぜなら、ココアを飲むことが出来るのは、この会社にバイトに来た朝だけだからだ。
『女の子が好そうなもの』と言う単純な理由だけとは考えたくなかった。
きっと、『私が』好きだと知って、わざわざテイクアウトして来てくれたのだ。
私が見ているほどではないにしろ、少なくとも若社長は、『私を』認識してくれている。
思いもかけぬ感動にときめきながら、ココアに口を付けたのだったが、カップの縁に当たった唇が、ガサガサしているのに気づく。
しまった……今日もリップをつけていなかったのだ。
たとえ、昨日の夕飯を抜いてでも、リップを買っておくべきだった。
……いや、鏡が無いので分からないが、先ほどまで大泣きしていたのだ。
きっと、リップを塗っているか、そうでないかなんて、大したことがないくらい、ひどい顔をしているに違いない。
憧れの男性の前に出られるような有様ではない。
ココアを持ったまま、固まってしまった私に、心配するような声々が投げかけられる。
「大丈夫です。
ちょっと熱かったので、少し冷ましてから……」
周りの大人たちが真剣に気遣ってくれているのに、まさかこんな浮ついた理由とは言えない。
目の前に座った人の大事な仕事が台無しになっているのだ。
それでも、若社長もまた、私を責めることなく、むしろ謝罪の言葉を口にする。
「そう?
しかし、あんなことがあった後だから……。
今はまだ、動揺していてるようだし、詳しい話は後日の方がいいかもしれないね。
こちらとしては、可能な限りお詫びをさせてもらいたい。
本当に申し訳なくて、何と言っていいのか。
海老沢所長にはこちらから連絡しておくから、今日はもう帰った方がいい。
誰かに……いや、私が家まで送っていこう。
ご両親にも事情を話して、お詫びを……」
「駄目です!!!駄目!
父には言わないで下さい。
お願いですから。
父に知られたら…………困るんです」
突然、頭の中が現実に引き戻された。
若社長の表情が曇る。
それはそうだ、これではまるで私が悪いことをして親を呼ぶ、と言われたような反応だ。
どう説明しようか、口ごもっていると、若社長が問いかけてきた。
「君は……」
子供が何かに怯えるような顔だった。
「もしかして、君は……父親に殴られてたり……するの?」
「へっ……??
………………!!
そんな、私の父はそんな……!!」
あまりの見当違いの質問に、寸前の所で、「どこからそんな考えが浮かぶんですか!?」と叫びそうになったのを堪えた。
目の前の人を見る。
私の気持ちを察したのか、井上常務が言い聞かせるように、そして、若社長を非難するように言った。
「小野寺社長は立派な方です。
子供を殴ったり蹴ったり、働きもせず飲む・買う・打つ、みたいな人間では決してありません」
それは、暗に、若社長のかつての父がそうだったと語っていた。
私と同じように、そのことを知らなかったらしい部長二人と秘書の永井さんも驚いた顔で自らの社長を方を見ていた。
自分が若社長の思い出したくないであろう過去を暴いてしまった気がして、罪悪感に苛まれずにはいられない。
そんな壮絶な過去を持っているのに、いや、だからこそ、若社長は人の傷が気になるのかもしれない。
だけど、父親の名誉もはっきりさせたかった。
「父は、私を殴ったりはしません。
ただ、夢があるのです」
「夢?」
「はい。夢です。
今、それを叶える大事な時らしいので……邪魔したくないんです」
「だからって……では、せめて母親に……」
「母は亡くなりました」
若社長がはっと身を固くしたのが分かった。
今まで言葉を交わしたのは挨拶程度であり、こんな風に会話をしたことは初めてだった。
それが、こんなプライベートなことを話すとは、意外でもあり、また緊張することでもあった。
この間、学校であった英語弁論大会の方が、よほど楽だった。
胸が高鳴って、思い通りに言葉が出てこない。
つっかえながらも、懸命に訴える。
「母は最期まで、父の夢を叶える為に協力を惜しみませんでした」
「だから君も?親の犠牲になるのか?」
感情がこもってない平坦な声だったのに、なぜだか、とても痛切な響きに聞こえた。
それは貴方のことですか?
何かを犠牲にしているのですか?
そう聞いてみたかったけど、私と若社長はそんな事を出来る間柄ではない。
今日、こんなことが起きるまで、たまに朝会って、挨拶する程度の仲なのだ。
「そうは……なりたくないですけど。
でも、父の夢は母の夢でもあったのです。
その為に、確かに母は苦労しました。
だからこそ、このまま父の夢が叶わなかったら、母が報われません。
そうでしょ?
若社長だって、家族の夢の為に、頑張っているじゃないですか」
怪訝な顔をする若社長に、私は続けた。
「小野寺出版の……グループのみんなは家族なんでしょ?
プロジェクトは夢なんでしょ?」
稚拙な言い回しだったが、伝わるのもはあったようだ。
「そう……言う、見方もあるね」
必死になるあまり、不躾に見つめていたらしい、居心地が悪そうに、視線は逸らされてしまったけど、同意はもらった。
「あの、だから、お詫びは結構です。
逆に申し訳ないと思っているのは私なので。
……じゃあ、私、仕事に戻ります」
これ以上、若社長の前に居て、謝罪されたりするのは嫌だった。
ココアは名残惜しいけど、立ち上がって、部屋を出ようとすると、若社長に腕を掴まれた。
「えっ……ちょっと待った。
君、俺の……じゃない、私の言うこと、聞いていた?
今日はもう帰るんだ。
明日のバイトも出なくていい」
「でも、今、人手が……ないし。
バイト代が出ないと困ります」
「休んだ分のバイト代はこちらが出す。
当然だろう。
人手がないなら、本社から何人か派遣して貰えばいい。
その為の人員もいるし、病気で欠勤者が増えたのは海老沢所長の失態ではないし、第一、君が考えることじゃない。
君は高校生だろう? それも試験期間中の。
それも、志桜館の特進コースの特待生だよね?」
「えっ……そうなの!?」
脇に避けていた東野部長が声を上げた。
その声が聞こえているのかいないのか、若社長は続けて説教……そうだ、これはもはや説教としか言いようがない。
「なのに、今朝、君は寝坊して危うく遅刻しそうになった」
「真白ちゃん! そうなの!?」
篠田さんには知られたくなかったのに。
でも、若社長を非難する気にはなれない。
やはり今朝、私を起こしてくれたのは、若社長だった。
しかし、そんな湧き上がってきた感激と感謝の気持ちを吹き飛ばす勢いで、説教は続いた。
「こんなことがあって、勉強に集中出来るかどうか、気が気じゃないよ。
もし、成績が落ちたら、奨学金を取り消されるかもしれないのに。
父親の夢も大事かもしれないけど、君の夢も大事だろう?
今は無くても、いずれ出来るかもしれない。
それを叶える為には、高校は卒業しないと。
今度のことで、高校生活が駄目になったら、責任はこちらにある」
「その通りでですね。
その時には、勿論、学費は援助させてもらうことになりますが」
青井部長が若社長の言葉に同意するので、私はびっくりしてしまった。
篠田さんは、そんな私の腕から、やんわりと若社長の手を外すと、自分の方へ引き寄せた。
「真白ちゃん、大人には大人の責任があるの。
意地をはらないで、言うことを聞いてあげて。
そうしないと、この場は収まらないわ」
「私は君のお願いを聞いた。
ならば、こちらの頼みも聞いてくれないか?」
そこまで言われて、やっと自らの身勝手さに気が付かない訳にはいかなかった。
自立するのと、人の善意を無碍にするのは違うことだ。
「ごめんなさい」
ほぅっと、若社長がため息をついたので、どれだけ自分が意固地になって、困らせていたかを知り、今日何度目かの、羞恥心で赤面する。
「分かってくれたようで良かったよ。
で、大丈夫そう?
何ならカウンセリングでも……確か、医務室に……今日は」
「今日は駐在の日ではありませんね。
しかし、必要ならば呼び出します」
唖然とした様子の永井秘書の隣で、その上司が冷静に社長の疑問に答えた。
「だ、大丈夫です」
本当は大丈夫ではない。
でも、それは美園との一件がなくもなかったが、大体は若社長のせいなので、言えるはずがなかった。
「……不安だ」
「大丈夫です!絶対に大丈夫です!」
疑わしげな若社長を納得させる為に、ことさら強く言い放ってしまった。
しまった……と思ったけど、若社長は、目を見張ったものの、「そう」と安心したように微笑みかけてくれた。
そのせいで、私の顔は、恥ずかしいくらいに真っ赤になってしまったのだけど。
こんなたくさん人がいる前で、みんなに若社長への想いがバレてしまうのではないかと、気が気ではない。
心なしか、若社長の顔も赤い気がする。
いや、それは、気のせいよね。
「じゃあ、何かあったら、いつでも気にせずに連絡を……名刺を……っと」
若社長が、名刺を渡そうと、胸元に手をやったが、上着を着ていないことに気が付く。
部屋の中を目で追って、いつもの指定場所にあることを確認し、取りに行こうとしたが、周囲の人間に止められる。
「いいえ、若社長、名刺はもう十分ですわ」
東野部長がテーブルの上を指し示すと、そこには、綺麗に並んだ名刺が三枚。
その一枚一枚に瞬時に目を通すと、若社長は眉を軽くあげた。