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妖精とクマ  作者: さぁこ/結城敦子
第五章 椛島真白の不安。
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5-1 変化した日常

 父の夢が叶えば、すべてが変わると思っていた。

 実際に、私の周りは急激に変化した。良い方に向かっていると思う。

 少なくとも、表向きは。

 だけど、漠然と不安を感じずにはいられなかった。


 梅雨は終わり、入道雲が浮かぶ夏空。

 照りつける太陽が明るければ明るいほど、得体の知れない不安が濃くなっていった。


 父がまた小説を書かなくなったことなのか。

 姫ちゃんが、私を避けるようになったことなのか。


 それとも―――


 あれ以来、若社長が優しすぎるほど、優しいせいなのか。


***


「燕尾じゃない……」


 ついうっかり、ボソッと呟いただけだ。

 聞こえるか聞こえないか、それぐらいの小さな声のはず。

 けれども、若社長にはしっかり聞こえていたらしく、己の服装を見直すように袖口に目をやった。


「え? 燕尾の方が良かった?

牧田、聞いたか?

真白ちゃん、燕尾がいいって」


「やめて下さい。

主催がドレスコードを乱してどうするんですか。

今日は燕尾では……あ、いえ、真白ちゃんのお父上の授賞記念パーティーですからね。

それは、とても大事なパーティーなのは、重々、分かっていますよ。

勿論です。

しかし、やはり燕尾服では、周りのお客様と格が合いません」


「いえ! 違います!

ただ今日は燕尾服じゃないんだな……って思っただけですから!

思っただけです! 別に着て欲しいとは思っていませんから!!」


 大慌てで、力一杯、否定した。

 そうしなかったら、若社長は今にも着替えに行ってしまいそうだった。


 ここの所、若社長はこんな風に私に優しい……と言うか、度を越して『甘い』。

 これはもう、娘扱いどころか、初めての孫娘レベルの甘やかしっぷりだ。

 うっかりしてことが言えなくて、正直、疲れる。


 そんな若社長に甘えて、燕尾服姿をもう一度見てみたい、という誘惑もあるけど。

 クリスマスのお披露目パーティーの時に着ていた姿が、とても素敵だった。

 あんなに緊張していなかったら、もっとじっくり堪能出来たと思うと、もったいなかったと、今更ながら悔し涙が出る。

 直後から最近までは、そんな余裕もなく、あの燕尾服姿は私のおぼろげな記憶の中でしか存在していないのだ。

 だから、もしかしたら、今日、見られるかも、という期待が大きすぎて、前述のうっかり発言に繋がってしまったのだ。


「まぁ、うちの若社長、体格が良いから、燕尾服が似合うものね〜。

うちの娘も王子様みたいって、喜んでいたわ。

今度はいつ見られるのかしら?

結婚式が、一番、近いかしら?」


「燕尾は苦手ですから、紋付がいいですね、東野とうの部長」


「あら、やだ! それじゃあ、お嫁さんはウェディングドレスが着られないじゃない。

そりゃあ、和装も素敵だけど……どっちを着るか決めるのは、お嫁さんよ!

結婚式の新郎なんて、付け合せの芋みたいなもの。

無いと寂しいけど、あっても主役じゃないの。

……で、真白ちゃんは、どっちを着るか決めた?」


「はい?」


 東野部長が振った際どい話題を、平然と受け流した若社長と違って、私は、どぎまぎしてしまった。

 こういう時は、自分からはあまり反応しない方が得策だと言うことを、学んでいた……いたのだけど、やっぱり顔が熱くなるのは止められなかった。

 若社長が、心底嫌そうな顔で、ため息を付くのを、目の端がとらえた。

 優しいし、甘いけど、そういう話題になると、この人は途端に、私に冷淡になる。

 気が付かない様にやっているつもりなのだろうけど、若社長は知らないのだ。

 恋する乙女が、どれだけ自分のことを観察しているのかを。


 案の定、東野部長が聞いたのは、私が今日のパーティーに来ていくドレスの話だった。

 父はすでに衣服を整え、どこかに消え去っていた。

 高校から真っ直ぐ、会場のあるホテル、例のクリスマスのお披露目パーティーと同じホテルにやって来た私は、有無を言わさず、永井秘書に、この一室に連れてこられた。

 ここで、小野寺出版が用意したドレスを着て、メイクまでしてくれるらしい。


 しかし、その若社長の準備したドレスがあまりにダサいと、東野部長が自分達の選んだドレスを持って来たのだ。


 若社長が選んでくれたドレスは、ドレスと言うよりもベビーピンク色のワンピースで、セーラーの襟、黒いベルトが、どことなく、学校の制服と似ていた。

 可愛いとは思うけど、東野部長が評して「うちの娘のピアノの発表会じゃないんだから」と言うのにも頷ける子供っぽさだった。

 対して、東野部長のドレスは、大人っぽすぎる。

 黒のシルクで、スカートは膝丈どころか、腿の上まで丸見えだし、オフショルダーで肩とデコルテが大きく開いている。


 かつてジャン・ルイ・ソレイユの服を着たことがある身としては、着られない訳ではないけど……やっぱり無理です。


 気持ち的には圧倒的に若社長の選んでくれた服を着たいけど、あまりに子供扱いされるのにも、反発心を覚えてしまう。

 それに、このワンピースを着るのと、今の制服と、どれだけ違うのかが分からない。

 若社長のワンピースの方が、色がちょっと付いていて、スカートの丈が長いくらいだ。

 特進科は他の科よりも、真面目な子は多いけど、一般的な女子高校生として、スカート丈はこだわるべきだ……と、ええっと、友達のリサからの受け売りなんだけど、だから、自分もちょっとだけ裾を上げているのだ。

 それほど短くはしていないけど、上とのバランスは、個人的に気に入っている。


「用意してもらって、とてもありがたく、嬉しいと思っていますが、制服を着ていきます」


 私がそう決めると、若社長は頷いてくれた。


「じゃあ、髪の毛を整えてもらうといいよ」


「ええ〜真白ちゃん、このドレス嫌い?

すっごい似合うと思うんだけどー。

でも、そうねぇ、制服の方が、若社長の選んだワンピより、可愛いものね……。

志桜館の制服なんて、なかなか着られるものじゃないし。

私も憧れたわ。その白いセーラー服。

あ、髪の毛だけじゃなくって、化粧もしてあげてね。

鼻の頭に油が浮いているわよ。

真白ちゃん、まさかと思うけど、自転車で来たでしょ?

帰り遅くなるのに駄目じゃない」


「自転車はこちらで、もう家に送り返したよ。

帰りはお父上と一緒に、こちらが準備した車があるからね」


「……若社長、手際良いですね」


「さすがにね……どうしたの? 真白ちゃん?」


 両手で、鼻を隠しながら、後ずさる私を、若社長が怪訝そうな目で見る。

 だって、東野部長が鼻の頭に油が浮いているって言うから。

 多分、髪の毛もぐしゃぐしゃなのだろう。

 自分だって、自転車で着いたら、まずトイレに入って、見られる格好に整えようと思っていたのだ。

 「そんなことは後からなんとかしますよ」と言う、永井秘書の言葉は嘘ではなかったけど、出来れば若社長に会う前に、なんとかして欲しかった。


 望みは完膚なきまでに叩き潰され、そのあまりの絶望の深さに落ち込んだ私に気を遣った若社長が、持ち前の優しさで対応してくれているのは分かっているけど、それでも、まだよく見せたい自分が居るのだ。


「顔を洗ってきます!」


 脱兎のごとく、若社長の脇をすり抜け、バスルームへ駆け込む。


 私の部屋より大きくて綺麗な部屋だった。

 照明も明るくて、鼻の頭だけでなく、額や頬までテカッているのが分かった。


「うぁああ」


 頭を抱えていると、永井秘書が、洗顔セットとタオルを持ってきてくれた。


「制服濡らさないようにして下さいね。

あと、髪の毛もここで整えましょう。

あんなに人が居たら、落ち着けませんものね。

そうそう、お父様のこと! 改めておめでとう!

……あの、今度、サインもらえないかな?

私と、同僚の分と……あ、無理ならいいの、ごめんー」



 最近、変わったこと。

 父のファンが増えた。

 小説の、だけでなく、父自身のだ。


 受賞会見に現れた父は、浮世離れした雰囲気を存分に発揮した。

 それが、なぜか、女性たちの心を鷲掴みにした。

 母性本能をくすぐるとでもいうのだろうか。

 最初は真面目な対談番組に、それからバラエティー番組に呼ばれた。

 驚いたことに、浮世離れしつつも、どんな事態にも無難に対応した父には、さらにいろいろな仕事が来た。

 特にクイズ番組や情報番組のコメンテーターの仕事では、その博識ぶりを如何なく発揮し、周囲を唸らせた。

 そう言えば、私が小さい頃、よく本を読んでくれたのだが、とても上手だった。

 本だけではなく、自ら作った話も面白かった。

 公園に一緒に遊びに行くと、父は近所の同い年くらいの子に取り囲まれた。

 本当か嘘か分からないような外国の話や、昔の物語に、みんな夢中になって聞き入ったものだ。

 保護者からは、仕事に行っている様子もなく、昼間からフラフラしている男が、子供達を集めて荒唐無稽な話をしていると苦情もあったが、その都度、父はやたら難しい言葉と、論理だった話で、うまく丸め込んでしまった。

 特に母親達からのウケは良かった。父は恰好良かったのだ。


 容姿がよく、頭もよく、話術が巧みで、そして、妻を亡くした影のある中年男性。


 永井秘書のような良い意味で軽いミーハー気分のファンなら良かったが、中には、本気で自分こそ、父を幸せに出来ると思い込んで婚姻届を郵送してくるファンまで現れるようになった。

 住所がばれると、何人かの熱狂的な女性ファンが自宅の前に待ち伏せするようになり、私にも「新しいお母さんよ」と話しかけてくる人も出てきた。

 若社長は、その事態を憂慮して、父に何度も何度も、それはしつこいくらいに転居を勧めた。

 なんなら、会社が持っているマンションの一室に避難するようにとまで申し出てくれた。

 それを父は全て撥ね退けた。

 編集長の戸田さんも、静かな環境で、受賞作に続く新しい小説を書いて欲しいと切に望んだのに、それも無視しているのだ。


 「君が頑固なのは父親譲りみたいだね」と、何度目かの転居の勧めを断られた後、若社長は不機嫌そうだった。

 それでも、「真白ちゃんだけでも、うちの用意した部屋に住むといいよ。今の部屋は、あまりに危ない。鍵もあってないようなものだし。窓だって、すぐに破られそうだ。警察には気を付けてもらうようにはお願いはしているけど、年頃の女の子を住まわせるには不安だよ。ほとんどが、君のお父さん目当てだからって、油断しては駄目だからね」と言ってくれた。

 結果として、返したはずの携帯が戻ってきた。

 ただし、キッズ携帯ではなく、可愛い水色のスマートフォンにしてくれたのは、大きな進化だった。

 もっとも、我儘を言って、ショップで代えてもらったのが真相なんだけど。

 今の若社長は蜂蜜に砂糖を溶かして煮詰めたくらい甘いので、キッズ携帯では恥ずかしくて、友達に見せられないと訴えたら、あっさり交換に応じてくれた。

 その上、「ちゃんと操作方法確認してね。いざと言う時に、使えないと意味ないからね。どんな些細なことでも、いつでもいいから、連絡すること」と、本気で心配してくれて、毎晩、メールをくれる。

 他愛もない内容だけど、それが嬉しくて仕方がなかった。

 たまには電話もくれる。

 前みたいに、繋がらないと困るからね、と言われると、あの日のことを思い出す。


 私、若社長に告白したのよね。

 そして、きっぱり別れたはずなのに。


 うやむやになっている今の状況が良い訳ないと、頭では理解している。

 でも、あの時の気持ちが辛すぎて、このぬるま湯が心地よすぎて、若社長の優しさに甘えてしまう。


 私が悩んでいる間にもプロのメイクさんは、手際よく作業を終えて、感情が中途半端なまま若社長に手渡される。


 大きな手に誘われて、会場に入る。

 高い天井の広い部屋だ。目を引くのは、中央奥にある会場上部を巡るバルコニーに繋がる階段だ。

 両脇から緩く螺旋を描いて降りてきた階段は中央で合流し、舞台代わりにも使える踊り場になり、一つの幅の広い階段となって、数段でフロアに辿りつく。

 そこでは、時に一階と中二階に分かれ、パーティーを楽しんだり、楽団が演奏したり、劇が行われたりする場所になるらしい。

 舞台として使う時に便利なように、踊り場の上手と下手側に該当する壁には、それと分からない様に隠された扉があって、楽屋となる小部屋に繋がっているのだ。

 『妖精』のお披露目パーティーの時は、踊り場からそのまま真っ直ぐに伸びる仮設のランウェイが造られ、私はその上を歩いた。


 あの日、若社長は螺旋階段の陰に隠れて、私の顔がみんなの前に晒されるのから守ってくれた。

 突然の出来事に驚いてしまい、足が震え、一歩も踏み出せない気分になった私を励ましてもくれた。

 

 『行っておいで、俺の可愛い妖精さん』

 

 そう、言ってくれたのだ。嘘でもあんなに嬉しい言葉はなかった。二か月間はあの言葉を思い出して、フワフワ、ニヤニヤしていたものだ。

 ……その後、冷静になって、全く連絡も接触もなく、接点も失ったことに気が付き、お別れを決意した……はずだったのだけど。



「真白ちゃん? 大丈夫?」


 いけない! 若社長の前で、ボーっとしてしまった。

 これに続く言葉は「具合悪いの?」「お腹すいた?」「眠いの?」のどれかだ。

 違うの!!

 大抵は、若社長に見とれているか、若社長との思い出に浸っているかのどれかなのに。

 言えないけど。


「えっ? いえ、あの……父の為にこんなに立派な祝賀会を開いて下さって……感激してしまって」


 今日は、踊り場の舞台の上に、父を祝う看板が掲げられていた。

 たくさんの花も飾られているし、立食パーティーで、美味しそうな料理がすでに並べられていた。

 料理人がついて、出来たてを提供してくれる場所もあった。

 それに、ああ! あの宝石の様に輝くデザート類!

 うっとりしちゃう。


 その視線に気づいたのか、若社長に笑い堪えながら言われた。

 恥ずかしい。


「ここの料理は美味しいから、たくさん食べるといいよ。

この間は、食べられなかっただろう?

俺は今から、挨拶回りとか、仕事があるから、後は永井秘書に任せる。

何事も彼女と一緒に居れば安心だから」


「お任せ下さい。

美味しいの、いっぱい食べましょうね」


 黄色地に銀のスパンコールのストラップのホルタ―ネックドレスを着た永井秘書が頼もしげに微笑んだ。


「本来ならば、大社長が来るはずだったのですが、体調がお悪いらしく、若社長が取り仕切ることになったの。

私も調整とか大変だったけど、若社長はもっと忙しかったし、緊張してらっしゃるでしょうね。

何しろ、大社長念願の文学賞の記念パーティーなんですもの。

何かあったら、また、あいつらに文句を言われる……っと、いけない、失言、失言っと」


 若社長の背中を見送ってから、永井秘書がこっそり教えてくれた話は、毎晩メールしているのに、私には絶対に教えてくれないことだった。

 そういうことを知るにつけ、一線を引かれているなぁ、と思う。


 父と一緒に舞台に立つ若社長が遠い人に思える。

 元々、遠い人なんだけど、気が付くと鼻と鼻がくっつきそうになるくらい近くに居ると感じるときもあるし、判断に困る人だ。


 父は相変わらず観客を魅了する挨拶をし、舞台を降りてからも人々に囲まれて、近づくことも出来なかった。

 若社長も同じだ。

 緊張しているようには見えないけど、もし、そうなら、あのミントの香りを返したい。


 でも、近づけなかった。

 綺麗な女の人が取り囲んでいる。

 その中に、姫ちゃんの姿もあった。


 変わったこと。

 姫ちゃんが余所余所しいこと。


 理由は当然、若社長だ。

 姫ちゃんは恋をした。

 あのお茶会の後、姫ちゃんは、若社長が優しくて素敵な人だと認めてくれた。

 そして、言った。


「どうして真白ちゃんにするみたいに、私にも笑ってくれないのかしら?」


 足ることを知っていた姫ちゃんが、初めて見せた執着だった。

 なんでも手に入るはずの姫ちゃんに、初めて手に入れられなかったものでもあった。


 例の『妖精の騎士』の一件で、姫ちゃんの若社長への関心は一層高まって、ついに、正式に雨宮家からの縁談が小野寺家に持ち込まれたらしい。

 らしい、と言うのは、もうその頃になると、姫ちゃんは私と顔を合わせてはくれなくなったし、交換日記も滞ってしまったからだ。

 でも、こういう噂は非情なまでに広まる。

 高校の中で姫ちゃんの関心を得られなかった一部の生徒によって、好き勝手に吹聴されてしまったのだ。


 姫ちゃんの初恋が、雨宮家の縁談が、若社長によってきっぱりと断られたことを。


 その時の私の気持ちを、なんと表現したらいいのだろう。

 振られた、と言う点で、私と姫ちゃんは同じだ。

 姫ちゃんは学校に三日、来なかった。

 私だって、父のことがなかったら、それくらいは休んでいたかもしれない。

 でも、すぐに若社長に優しくしてもらった。

 希望は無かったけど、好きでいてもいい、甘えてもいい、と言われた気がした。

 対して、姫ちゃんはどうだろう。

 若社長はもう、お茶会には顔を出さない。

 その代わりに、姫ちゃんが若社長を追いかけるようになった。

 彼女は雨宮財閥のご令嬢だから、若社長が出るパーティーには、全て顔を出せるのだ。

 その為に、姫ちゃんは社交界デビューを前倒しにした。

 まさかここまで、姫ちゃんに積極性があるとは思わなかった。

 自分に手に入らないものはない、と信じているのかもしれない。

 実際、そうなるかもしれない。

 なんといっても、姫ちゃんは、雨宮財閥のご令嬢なのだから。

 そして、若社長は少なくとも、公の場所で姫ちゃんに恥をかかせるような真似はしないようだ。


 そう考えると、どっちが有利なのかしら。

 私? それとも姫ちゃん?

 どちらも望み薄?


 それなのに、私と姫ちゃんは互いに慰めあうこともせずに、一人の男性を巡って争っている。


 そう思うと、心ときめく初恋をしていたはずなのに、ドロドロした感情が襲ってくる。

 姫ちゃんと二人で、若社長の素敵なところを話して楽しむはずだったのに、今はそんな風にはとても思えない。

 恋心と言うのもは、こんなにも身勝手で残酷な感情なのかしら。

 もっと楽しいものだと思っていたのに。


 なんだか、とても不安だ。

 世界が、あまりに早く変わりすぎている。


 不安すぎて、背中に寒気を感じる。 



「おや、誰かと思ったら、お掃除の可愛い子ちゃんじゃないか」


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