表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏空  作者:
第1章
17/94

第17話 見てくれた?

Side 山中 淳


「すみません、僕のせいで負けてしもて」


 そう言ってワイは先輩たちに頭を下げた、チャンスで打てず本当に申し訳ないことをしてしまった。

 高校生になって始めての公式戦、すなわち甲子園への1回目の挑戦は3回戦で終わってしもた。

 

「やっぱ、投手か……」


 ワイはボソッと呟いた。

 長い険しい甲子園への道を進むには開成高校(うち)の投手力じゃ足りない。

 やっぱり神谷(あいつ)を……いや、無理やな。

 

「山中君、先輩たち行っちゃったよ」


「ああ、すぐ行くわぁ」


 以前、北川からワイは神谷と北川の兄との間にあったことを全て聞いてしまった。

 それを聞いてしまった以上、ワイは神谷を誘うことをあきらめた。


「でも、山中君ってやっぱり凄いんだね。

三回戦までこれたのも山中君のおかげだね」


「北川、慰めは勘弁してくれや。

ワイがもっと打てば勝てた試合やったしな」


「最後の打席以外は敬遠されたんだから仕方ないよ。

それに3試合で2本ホームラン打った、山中君を誰も責めないよ」


「そりゃありがたい」


 でも、ワイや他の1年で投手を出来る奴はおらん。

 本気で甲子園を目指すならどのみち全国区の投手が必要だな。


Side out











「こうにぃ、愛の活躍見てくれた?」


「もちろん、相変わらずお前は凄いな。

さすが暴君の妹だ」


「功……誰が暴君ですって?」


 落ちつけ俺、後ろからの殺気はスルーするんだ。

 しかし、愛はホントすげぇな。

 エースで4番、打っては4打数4安打、投げては2安打完封、もはや怪物だな。


「えへへ、伊達にこうにぃと一緒に遊んでたわけじゃないよ」


 確かに少し前までは一緒に野球をして遊んでいたが、もう俺より上手いんじゃね?

 どうやれば4安打も打てるのか是非とも俺が聞きたい。


「でも、これで愛は推薦で高校に行けそうだな」


「愛は推薦来ても行かないよ」


「は? 高校でもソフトやるんだろ?」


「こうにぃとまいねぇの高校にもソフト部あるんでしょ?

だったら、愛は開成に行くよ」


 このお嬢さんは一体何を考えてんだ?

 それだけの才能を持ちながらなんと勿体無い、いや……俺も似たようなもんか。


「あんたはまだ言っているの?

母さんは別に私立でもいいって言ってるのよ」


「絶対嫌!

だって、こうにぃやまいねぇと一緒に高校行きたいもん!」


「まったく我が妹ながら頑固ね」


 舞よ、お前も十分頑固だからな。

 さて、愛とも合流したことだし帰るか……ん?


「あ、神谷と斉藤やんけ」


「山名君に沙希ちゃん……2人でどうしたの?」


「今日、試合でな。

その帰りや」


 人ごみの向こうから現れたのは試合帰りの山中と北川。

 山中は別にいいが正直、北川は気まずすぎる。


「舞、悪いけど俺、先に家に帰っとくから、愛のことよろしく」


「え? ちょっと功!」


「わりぃ、北川。

ワイも先、帰るから後はよろしゅう」


「山中君まで何言って……行っちゃった」


「こうにぃ……」 

 

 2人の男が去った場所には3人の少女のため息が聞こえるだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ