表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏空  作者:
第1章
14/94

第14話 名門校のスーパールーキー

高校に入学してから3カ月がたった。

 制服も夏服へと移ってとうとう本格的な夏って感じの雰囲気だ。

 照りつける初夏の日差しよりも俺には気になることがある。

 

 この学校にクーラーは無いのか?

 暑すぎてやってられん!


「あぁ、暑すぎる」


「だらしない、男なんだからもうちょっとしゃっきとすれば?」


 くそ、なんで席替えで舞の隣になっちまったんだ?

 席替えが始まってずっとだぞ、もう誰か仕組んでいるとしか思えない。


 ちなみに北川とはこの3か月の間、口を聞いていない。

 向こうが俺のことを避けているようにも思えた。


 一方で山中は夏の予選も近いせいかたまに見かけると緊張感ある顔つきをしていた。

 この3カ月は俺に話しかけてきても野球部への勧誘はしてこなかった。


「もうすぐ夏休みかぁ」


「7月中は補習があるから学校だけどね」


 いちいち、落ち込むようなこと言いやがって。

 あぁ、そうですよ、俺は期末の点悪かったから皆より補習の数多いですよ!


「つーか、お前は期末どうだったんだよ?」


「ん? はい」


 舞が出したのは期末テストの点や順位が書かれた紙。

 ……学年4位だと?


「お前! いつの間に勉強してたんだ!?」


「少し勉強したらこの程度のテストなんて簡単よ」


 ぐぅ……なぜこいつはこんなチートキャラなんだ?

 これで性格さえ大人しい性格だったら……


「よからぬこと考えてたらひっぱたくわよ」


 心を読むのも殴るのも勘弁して下さい。
















Side 藤井 高志


「飯村ぁ、俺、取材行ってくるから」


「は!? まだ、仕事残ってるじゃないですか!」


「んー……じゃあ、お前も来い」



「なんで私まで……」


「編集長には俺から言っとくからよ」


 そんな落ち込むなって。

 こいつはもう少し融通が利くようになる必要があるな。


「で、どこの取材行くんですか?」


「報明学園のスーパールーキーの所だ」


「前、記事にしてたじゃないですか」


「直接見たいんだよ」


 春・夏合わして甲子園で3度の優勝を誇る兵庫の名門・報明学園で1年生ながらレギュラーを勝ち取ったその実力をな。


「そら、着いたぞ」


「うわー、相変わらず部員が多いですね」

 

 新人のこいつが圧倒されるのも無理はない。

 100人近い部員が2面あるグラウンドで縦横無尽に動き回っている。

 一切の無駄を省いた機械的な動きで部員たちは練習を行っている。


 相変わらず血の通ってない練習だな。

 結果が全ての勝負の世界、しかし、俺は近年の高校野球は何か大事なものを失っているような気がしてならなかった。



「監督、御無沙汰しています」


「あぁ、君か。

また取材か?」


「まぁ、そんな所です」


 報明(ここ)の監督は相変わらず威圧感半端ねぇな。


「新井君はどこです?」


「あそこだ」


 監督の指先には体中泥だらけになり三塁手(サード)でノックを受けるスーパールーキーの姿。

 ただひたすらにがむしゃらに練習する姿は1年生らしい初々しさを感じずにはいられなかった。


「今年の夏は(甲子園に)いけそうですか?」


「勝負はやってみないと分からん、しかし、新井の加入によって、戦力的には報明(うち)が1番だ」


 確かに……いや、新井君が加入する以前から報明学園は参加校数160校を超える兵庫の絶対王者。

 ここ数年はほとんど夏の甲子園は報明が出場している。

 そこに近畿屈指のスラッガーの加入はまさに鬼に金棒だな。


「新井君に対抗出来る1年生は居ると思いますか?」


「そうだな……どこかの公立に進学した山中 淳ぐらいではないか?

彼にも報明(うち)に来て欲しかったのだが……」


「神谷 功はどう思いますか?」


「あの子か……ダメだな。

まだ、荒すぎる。

才能が開花するには3年は短すぎる」


「しかし、もし、この3年で開花すれば……」


「他の追随を許さないほどの圧倒的な選手になるだろうな」


 やはり……あれほどの才能が歴史の闇へ消えていくのは、よくないのではないか?

 何か……きっかけさえあれば。


 彼は再び野球を始めるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ