第3章 神殿
神殿の外見の絢爛豪華さとは裏腹に、中は、非常に質素な雰囲気がしていた。
「やっぱり、ここはいつ来ても、不思議な雰囲気だな」
「そう?私はもう慣れたわ」
そう言って、妻は受付の所で、参り下向に来た事を告げた。名前を言った時、ある、一枚の紙がトムに渡された。受付の人は、トムとジアスに伝えた。
「あなた方は、向こうに行った時、この紙を見せてください」
そして、彼女は右手のドアから入るように言った。
そこは、自然の鍾乳洞のような涼しさがあった。
「あれ?こんなところだっけ?」
「いや、なんだか違ったような…」
そして、何分か歩いたら扉があり、そこを通ると部屋があった。これまでのような涼しい部屋ではなく、ほどほどに暖かい部屋。その中央に、とある大きな灰色の機械が置かれていた。
「なんだ?これは」
彼は近づいて、それに触れようとした。その時、電気が流れたような感覚があり、手をすぐに引っ込めた。
「なんだ?この機械は…」
「その機械こそが、ファーザートムだ」
バッと振り返ると、そこには法衣に身を包んだ人が立っていた。
「譜代様ですか」
この宗教は、直系と呼ばれる最上位の人を中心にして、譜代、外様、名代、一般と分かれており、さらに、一般の中にも上中下と、3つのランクに分かれていた。トム達は、名代に位置しており、譜代は名代の上の地位なので、敬語を使っているのだった。
「この機械は、いつ出来、誰が作り、どのような目的なのかが、まったく分かっていない。とにかく言えるのは、この世界が出来た時には既にあり、我々が認知しないほどの長きに渡り、この世界を平和を維持し続けてきたと言う事だけだ」
「それと、これとどのような関係があるのでしょうか」
「君達は、ファーザートムに選ばれた。君達が、直系の血筋であると、彼は言ったのだ。これまで、分かっている間だけでも、制度上にしか存在していなかった直系の血筋。君達だと言う証拠を見せると、ファーザートムは言っている」
そんな中、どこからともなく、声が聞こえだした。
「やってきたか…トム・キリハラとジアス・キリハラよ」
「誰ですか!」
「我が名はファーザートム…この世界を創りしものなり…」
その時、トムとジアスの体が光り輝きだした。
「体から…光が…!」
「ファーザートムよ、自分達をどうしようとなさるのですか!」
「行けば分かる…往けば変わる…いけば知る…」
その言葉の後、トムとジアスの体は瞬間的に、消えた。
5分後、何事もなかったこのように、再び光だして、そこに、二人の姿があった。しかし、ジアスは、大人びた風格を漂わせていた。
「やっぱり、家が一番落ち着くね」
「そうだな」
そして、ファーザートムが、何かを言い出した。
「帰ってこれたか…」
「ええ、帰ってくる事が出来ましたよ。第4世界の神、クシャトル神。こちらでは、ほんのわずかの時間かもしれませんが、自分達は、7年弱を第1空間で過ごしました。あまりにも長い年月は、娘を別人のように姿を変えました」
「さすが、直系だな…そこの譜代。トム・キリハラ及びジアス・キリハラを直系に任命する。彼らに、任命式を」
「しかし…それは…」
「我が命が受けられぬとでも言うのか?」
「…いいえ、ファーザートムよ」
「ならば、任命を。彼らこそ、我が直系だ」
「分かりました。直ちに準備を」
そして、この任命式は全ての国民が見る事になり、視聴率は全ての空間でも唯一100%に達した番組となった。
「やれやれ、ようやく家に帰れた」
結局、家に帰れたのは4日後だった。彼らは何事も手につかずに、帰ってきてからすぐに眠った。