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第1章 宗教国家

天那教第2支部支部長をしている、トム・キリハラは、ファーザートムへの参り下向の準備をしていた。傍らでは、娘である、ジアス・キリハラが、トムの手伝いをしていた。妻は、外出していた。

「やれやれ、あらかたできたかな?」

「本当?着替えとかも入れた?」

「ああ、入れたさ」

ジアスは、10歳になり、ますます、トムの世話をしたがるようになってきていた。トムには自覚がないようだが、傍目から見れば、トムは非常に頼りがいがなさそうな男だった。しかし、彼には運があった。そのおかげで、この場にいるようなものだった。


「さて、妻はどこにいったかな?」

「お母さんなら、まだ外出中よ。お買い物に行くって言って、大体30分ぐらい前だったよ」

「そうか、じゃあ、まだ大丈夫だな」

彼はそのまま、ちゃんと中に入っている荷物が正しいか確かめていた。


妻が帰ってきたのは、それから15分ほど経ってからだった。トムは既に荷物の確認を済ましており、リビングで新聞を読んでいた。

「ただいま〜」

「おかえりなさい」

ジアスが、トムの妻を迎えに走って行った。トムは、そんなジアスの後ろ姿を見ながら歩いて行った。

「おかえり」

「ただいま、あなた」

彼らは、軽くキスをした。そして、荷物を持って中に入った。


「荷物は準備したし、後は出るだけだな。参り下向に出てから、大体1週間は帰って来れないから、その間の戸締りはしっかりしておかないといけないな」

「家族揃っての参り下向は初めてね。この子も10歳になったから、顔見せも必要ですしね」

「ファーザートムって、どんな人なの?」

「彼はこの世界を創った人なんだ。1万年前、世界を混沌と静寂の中からすくいあげた種を元にして、育てたお方なんだ。この世界はファーザートムが、何もかもをお創りになられたんだよ」

「へえ〜」

「って、学校で教わっただろ?」

「学校で教わったことの1%でもこれからの人生に必要じゃないって、先生が言ってたから」

「…確かにそりゃそうなんだがな。それでも、学校で教わったことは、基本的な常識だから、忘れないように」

「はーい」

「じゃあ、また明日だな。明日、朝6時に家を出発したら、大体、10時ぐらいに到着するだろうから…」

「明日は、午前5時には起きないとね」

「今は、まだ午後5時だ。もうちょっとしたら眠らないといけないな」

「え〜、まだ眠くないよ〜」

ジアスが、不満を口にした。トムと妻がそれをなだめた。

「でもね、ファーザートムの前で眠る事をしちゃいけないの。そもそも、眠れないと思うけどね。だからこそ、早めに今日は眠って、明日に備える必要があるの。分かった?」

ジアスは、うなづいた。それを見て、トムと妻は微笑んで、ジアスを寝室へと連れて行った。


「やれやれ、眠ったか?」

「ええ、どうにかね」

妻は、ソファーに座っているトムの横に座った。

「どうした?」

「ファーザートムって、どんなお方なのかしらって」

「見た事がないのか?」

「ずっと、昔に1回だけね。それ以後は生理とかで、そもそも神殿内に入れなかったの」

「なるほどね。不浄なる者、入る事勿れか。そう言えば、そんな戒律もあったな」

「もう、忘れないでよ。男の人はそんな事がないから、気にしないだろうけど、女性は、どうしても、戒律にある以上気にしてしまわなくちゃいけないのよ」

「そうだな…とにかく、明日は、ファーザートムに会いに行くんだ。何年ぶりになる?数年前か。娘が、最初の受難の時に、助けを乞いに行ったきりだからな」

「ああ、足を粉砕骨折した時の?」

「あんな交通事故に巻き込まれて命を落した人もいた中で、生き延びれたのも、あんな足になっても、ちゃんと走れるまでに回復したのも、何もかも、ファーザートムのおかげだよ。だが、今回は、10歳になった事を報告するためと、それと、ファーザートムに俺自身が呼ばれているから、それについての話に行くからな。戒律違反とかはないから、何に呼ばれているのかが分からないんだ」

「とりあえずは、行ってみましょう?何かあれば、私もいる事ですし」

「そうだな…」

そして、彼らも午後8時ごろになる前に、明日に備えて眠りに落ちた。

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