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こんにちは、私が噂の美少女です。兄は居ません  作者: 月 朱莉(燈あかり灯)


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黄色いお月様





重苦しくて敵わないと、皇太子までもが本の少し胸元を緩めるほどには、悪い空気が立ち込める中。


ガラリと部屋の雰囲気を変える風がやって来たのだ。そう、そいつは。そい、そいつ、そい……つ、がっ。


そいつは。


「ごめんっ。お待たせ!!」


ーーあ。……。嘘だぁあぁぁあああああア゛ア゛ア゛!!!!


せめて小さい方の殿下が来てよぅ(大号泣)。


私の知らぬ間に、然りげ無く使用人が閉めたカーテンの向こう側で、音も聞こえない程に遠くの暗雲が白い稲妻を落としていた。


心の中で、えぐえぐ、と泣いているのがバレたんだろう。

皇太子が、いやに優しい手付きで、ちょっとしつこく感じる位、黒い前髪を梳いていた。視界の邪魔なんだよばぁあああぁか!!!!ふえぇええええん゛ん゛ん゛んッッッ。







出来る事なら、「びえーっい。遅れるなら来んなよぉぉぉ」と、大声で泣き叫びたい気持ちで、がっくしと項垂れていた私は、お菓子の山を作ってくれたお姉さんに改めて感謝していた。

この山が私を隠してくれていなかったら、今頃、私は、入室者に頬擦りでもされながら捕まっていただろうから。


基本的に、この男に対して皇太子は、にこやかに私を見ている様で見ていない目で送り出してくれるし、今までに私とこの男の間で何があったって放置して来た。情操教育に悪い云々は何処に行った、とかは、これには適用されないのだ。


西風の黄金狼。


そんな異名の掲げる本当の意味も知らず、彼らは、あの悪魔トート=ノット・グリダゼダ・ストーの元へと、己が望みを叶える為に、或いは、一縷の望みに縋るべく、尋ねて行くのだ。


そうして、去って行くその最中の誰一人もが、何かを失っていない者を私の知る限りでは、見た事が無かった。


その人にとって一番大事なもの。或いは、その人自身を貰うーー


胸糞の悪い契約書を当たり前の様に、自分達にしか見えない文字列と特殊なレンズを通してしか見えないインクを使い、足が付かない様に徹底している辺り、自分達が何れだけの業を積んでいるのかぐらいは自覚があるのだろう。


悪徳とまでは言わないが、彼らのやり方は、決して、私の好む所じゃない。

子供に、こんな台詞を言わせる所からして情操教育には悪い。


だが、基本的には使えるものは使う主義の全方位爽やか腹黒皇太子で通している皇太子が、使わない相手である時点で、たぶん、幾ら、表で好評な商いをしていても、本性の裏側。悪魔みたいなやり口はバレているんだろう。

少し前に国まで丸ごと飲み込んで玉座に好みの傀儡を座らせて自身は摂政の、所謂、補佐として、あまり変わらぬ日々を送っているそうだ。


大商人が、摂政になる位なのだから、権力欲があるのかと言えば、そうでもない様だ。


ただ、彼自身にとっての価値あるモノは、人とは少し違うらしい。


そのお眼鏡に、どうしてか適ってしまった私は、彼が私目当てに行く先々で待ち構えている事に、いつからか、怯える様にまでなってしまっていた。

何故、ここまでの拒否反応を示しているのか。自分の状態が、こうなってしまったのかは分からない。覚えて、いない、のだ。


最初は、仲が良かった、とは行かなくても、気の良いお兄さんとして見ていた気がする。


「うっ。」

「どうした?」

「……何でもない。ほら、話に参加したら。」


ズキズキと痛む頭を手で押さえるのを堪えながら、ギュッと目を閉じた。

さっきから俯いていたのが功を奏したのか、隣の小声で囁いて来る皇太子以外には、たぶん、バレていない。


「分かった。それでも、何かあったら言うんだよ。」


仕方ないやつ、とでも言いたそうな顔をして、そう言った彼に、こくん、と頷くと、その瞳は正面へと戻っていった。


……どうしよう。またこれだ。割れそうな、ほどに、痛くて、いや、痛くない。熱い?熱い。痛い?いや、痛みは、どうしてだろう。何処かに置いて来てしまった何かと、交換こした様な。交換こ?痛みを?どうやって。それこそ。


それこそ。悪魔か、人ならぬ術を持つ誰かの手を借りでもしなければ、いや、そんな事。有り得ない。


黄色いお月様と同じ瞳の色をした男が、お菓子の山からそっと顔を出した私の視線に気が付くと、しぃ〜っ。と、唇に指を添えた。

何が、「内緒」だ。気色の悪い。や、つ……、ま、あ、これ。ちょっと、本当に。


まるで、電話の受話器を向こう側に先に置かれた時の様に、プツリ、と何も聞こえなくなった。





電話は発明されて約二十年目らしい。鉄道関係を言ってに担う豪商は、トートの祖父と同い年。


黒髪美少女の内心で言いたかったこと

「待って、これ、ちょっと本当に気絶するかもーー」


その時、ちゃんと皇太子の服を掴んでいた点に関して、それのお陰で機嫌を良くした皇太子により、トートに気絶された妹を渡されずに済んだとか。

裾が皺くちゃになった皇太子の服を見て、ランドリールーム付きの使用人は首を傾げたらしい。

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