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こんにちは、私が噂の美少女です。兄は居ません  作者: 月 朱莉(燈あかり灯)


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隣で舌打ち





「よく来られた。昨夜は安らかに眠られましたか?」

「ええ、この城は過ごし易い。お陰でよく眠れたよ。」

「それは良かった。所で、そちらが妹さんですか。さあ、席に座って顔をよく見せて下さい。」


私とは初対面の人と話す皇太子。目元を黒い布の様なもので覆っているが、手を引かれながら席まで歩く最中、後で教えてあげる、と囁かれたので、瞬きで了承した。


目線を外した私が目にしたものは、何となく、この部屋に散らばった違和感の欠片だった。


これでもう三度目に訪問をしているこの国だが、この城の使用人達。それだけでなく、護衛達までもが、こんなにも内心の慌ただしさが知られる様な愚物、いや、俗物、えっと、怠け者、違くて、ばk……駄目だ。

言い換えようとすると脳内皇太子変換辞書録と私のちんけな語彙しか出て来ない。困った。


兎にも角にも、一目だけなら気付かれない程度だから許容範囲にしろ、それは今の所だけで、この会議が長丁場になればなるほどに参加者達の気を削ぎ神経を刺激するものとなりかねない様子だったのだ。



例えば、時偶に何かを見たい様で見ない様に必死に堪えてます、みたいな目線。


又は、それとなく服の裾や帯剣の帯にと各々の癖が出る部分に触れたり、直前で止まって触れなかったり。


或いは、もう正気じゃ無いのに、己が仕える護衛対象の後頭部を痛い位に見つめる事で正気を保とうと必死な人とか。


はたまた、我を忘れて、ぼうっと私の前を行く皇太子の顔を、ほうっと息を吐きながら見惚れてしまったりだとか。



よくよく見れば、一目瞭然。落ち着きのない彼らに、それとなく目を眇めていた私は、皇太子に椅子を引かれて、当然の様に胴体を掴まれて持ち上げられて椅子に座った後、余所見をしていた隙に、何かを見落としていたらしい。こんなにも、注意を払って見ていたのに。


何故か、先程、上げた点を含めても不思議な位に静まり返った室内にキョトンとした。


首を傾げようとして、向けられた視線の数に動きを止めた。

何だろう。皆、子供好きとか?いや、違うか。私よりも皇太子の方を見る視線の方が多い。


あ、成る程、私ではない。直接的な原因は皇太子。じゃあ良いや。


ふぁ、と漏れそうになった欠伸に、ギチっ、と舌を噛みそうな勢いで口を閉じた。

危ない危ない。幾ら早起きをし過ぎたとしても、ちゃんとその後に寝たもの。


しかし、ギリギリで巻き込まれたらしく、歯が掠めた舌先に、逆に強い痛みを覚えた。

痛みを誤魔化そうと口の中で舌を敢えて動かしてみたりすると、さっきよりは、ちょっとマシになった。刺激を与えてから、そうじゃない時の方のマシさを知る、っとね。


何より、子供とは言え、こんな所で眠りかけたら、次からは子供用のベッドまで用意されて、挙句に、最初から椅子を取り払われてもうベッドに行くしかない選択肢が無くなる未来しか見えない。そんなの恥ずかしさで死んでしまう。

軽く目からハイライトが消えた私は、カタッ、と鳴った音に、瞬きをしながらそちらを見た。隣で舌打ちが聞こえた気がしたけど気の所為だよね。


濡れた様な艶やかな髪に、香り立つ様な色香とは、こう言う人の事を言うのかもしれない。


ちら、と、机に隠れて見えない彼の足元を脳内でイメージしながら、どの辺りだろうかと探りつつ、顔を素通りして、頭のてっぺんへと目を向けた。


なかなかに身長が高いな。この人。と珍獣でも見るみたいな感想を抱いてしまった。

だって、ほらよく見てみて?全部ピッタシでは無くとも、大体の護衛の背丈は殆ど揃っている。その身長は、それが彼らの護衛対象とほぼ同じであり、いざと言う時の囮としても使い易い事を示していた。


蛇足だが、遺伝子の構造なのか、髪の采配によるものか、決して、低い者が居なーーい訳では無いけれど、その唯一の一人は欠席しているからーーい為、高身長の高貴な方々の身長はデコボコと言う程でもないのだ。まあ、一番高い人と低い人を並べたら、勿論、差は出るけれど。


しかしながら、そんな風にして皆が一律の中で、一人だけ異様に背が高いと言う事は、明らかに何かがあったと触れ回っているも同然だ。


例え、友好国同士の会とは言え、一堂に会する場で、もし、欠けを急遽その場凌ぎに増員するとしても、それなりのレベルの腕が立つ物を見つける事が難しくとも、こうして、変に目立つ事をすれば角が立ちかねない事も理解している筈だ。


けれど、と、そこでその男の斜め前に座る主人の方を見ると、あの黒い布の人が居た。


目が合ったのが分かったのか、ぴらぴらと手を振られた。


素直に嬉しかったので、ふわり、と微笑み返した。

手は振らない。いやだって隣に居る皇太子に、笑うだけで冷たい目で見られるんだもん。


こほん。話を戻すと、主催者側の国のハイテレンジア国と言えば、つい先日まで、ナチア海岸沿いに、ハイテレンジアの内紛の煽りを受けた北方連合国群相手にドンパチやらかしたと暫くは新聞の一面記事を、その関連の話題で埋めては、平和な茶の間に彩り?を添えていた国である。


何でそんな落ち着きの無い国にて、どうして、通常通りに、会が行われるのかと言えば、歴史上のただの一度も、順番に回って来たその席順が抜けたり入ったりの差はあれども変わらなかったからだ。


だからこそ、たぶん、国王数ヶ月目の陛下なりたてホヤホヤ新人キッズが混ざっていたとしても、何なら、その国がホストに回ったとしても、全くこの会はブレずに行われるだろう。その例もこれまでに何度かあったそうだし。

正直、この場で話される事は既に決まった事ばかりで、本当の目的は、この会が終わった後に待っている、見せ物の王族と化すパレードの更にその後の時間で行われる各国の自由対談だ。


どの国がどの国と話しているのかは知られず、ただ、話がしたい相手の国の名前が書かれたプレートが集められ、集計後に、告げられた時間と場所に向かうのだ。

別に一国だけ、と決まっている訳でも無いので、三国同時とか五国同時、何なら、この会と同じ顔ぶれの面子だったりもする。


暇を持て余した爺さん達が参加している場合には、爺さん同士とか、或いは、私を名指しで指名されて普通にお茶会だけしてほのぼのと船乗りや花畑に遊びに行ったりして過ごすなんて事も、度々起こる。

これが楽しいもので、絶対に会いたくない相手とほぼ九割の確率で会うとしても、皇太子にイヤイヤと首を振りながらも背を押されるのを良しとしている理由の一つだった。


……今回は、ユーテフォリ国の王妃様が平均年齢を上げている他は、特に収穫は無さそうだが。


それに、内紛真っ最中なら未だしも、既に半年前に締結条約まで結ばれており、更には、国内外からの使者によって、暫くは戦事は起こしませんと北方連合国群共々、約束の取り決めをした事は知られていた。


そうして、決められている時間までの雑談を各々し出した中で、私は、つい、と視線を黒布さんの私から見てドアよりも奥の席に座る私の方に近いーー因みに、何故か私だけがドアから一番遠いお誕生日席で、その左隣に皇太子が居た。皇太子側に黒布さんが居て、黒布さんの方から見て一つ右側の対面に座っているのがユーテフォリ王妃様だーー後ろの護衛に向けた。


顎の下までの髪の長さ、茶髪、垂れ目ながらも目元の黒子がクールビューティーながらも、落ち着いた雰囲気と理性的な暗い紫の瞳が全体的に無駄な部分を押さえてくれていた。

その隣に居る男とは正反対に、規律違反を決してしなそうな模範的な護衛の人である。とは、まあ、見た目だけの印象だけれども。

何回か会ったから、見た目の印象通りに真面目な事と、少し不器用であるとも知っていた。こう言う人と居ると穏やかな心地になれて、非常に有難い存在でもある。


ふふ、と、口端を上げた私は、私自身を見ている中でも、より強く見られている視線に、口を一文字に結んだ。


また、ドアの近くの方に居る黒一色の、野生の獣みたいな荒削りささえ感じられる男を、隣の皇太子がよくするみたいに、でも少し私らしくアレンジして、両頬を膝をテーブルに置いた手で支えながら上目遣いで見つめ返した。

何か、「げほっ」「ゴホッ」「ぐふ……っ、ガハァッ」とか、最後の方は余波?ダメージまで喰らったみたいな声が聞こえた気がするけれど。ふ、きっと気の所為だってば。


しかし、この見ちゃいけないものを路地裏で見つけてしまった所を皇太子に見つかったみたいな、後味の悪さと舌触りの不愉快さを押し付けてくる存在。


目を逸らしたら、喰われそうなのに、寧ろ、見ている方がより喰われそうで。

目を逸らし終えた直後に、はた、と、この感じ、何処かで?と、首を傾げた。


ーーあ、何か、見た事が。


いや、無いな。……誰だっけ?





興味の色すら浮かべず、一瞥しただけで、すい、と視線を直ぐに逸らした黒髪の美少女は、自身が、どれほどの注目を浴びているのかも知らないでいた。


だからこそ、誰もが気にしないではいられなかった魔性の男。そう、まるで、魔王城で魔王をも鼻で笑い優雅に見下ろしているであろう真っ黒な男を、通り掛かりの普通の通行人が普通の通行人をスルーして視界に入れている様で入れない鮮やかなお手並みを拝見させてしまったのだ。


もしも、彼女が、正しく、自身がこんなにも注目されており、且つ、その理由を知っていたのだとしたら。確実に、前に倣えで下手くそな演技でも打っていた筈である。


ーーやらないよりはマシだから、とか何とかウンザリする心境を純粋な瞳に隠しながら。


つらつらと考えている隙に、自分以外の全員が、目、或いは、意識を向けている何かがあると気が付いた。

何だろうと思って一番近くに居た皇太子の視線を辿った。あ、と視界にそれが映ろうとした所で、パッと視界が暗くなった。


突然の事に困惑していたが、頭の後ろに回されている腕の位置や、近くにある温もりからして慣れたものだと、直ぐに落ち着いた。しかし、何故、視線を遮ったのか。

そんなに隠したいものが?と、思った矢先、目隠しをして来た皇太子が発言する方が先だった。


「中座する前にお願いしたいのだが、会議に集中出来そうも無いので、そこの方は退室して頂きたい。……何より、この子の情操教育上、あまり同じ空間にいて欲しくないのでね。」


何を言うのだ。この男は。




黒髪美少女は見えていなかったが、皇太子が「そこの方」と言った時に、黒布さん呼ばわりされている人に目を向けてから、その背後にいる魔性の男を睨み付けていた。一見、周囲の人間が見惚れてしまう様な微笑みにも見える表情で。

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