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こんにちは、私が噂の美少女です。兄は居ません  作者: 月 朱莉(燈あかり灯)


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なんとも激しいラブコール




あの男。私の持つ黄金の瞳ーー世にも珍しい妖精眼の一つとしても知られている目に憧れるあまり、元々、彼が持っていたラズベリー色の目の色を強制的に、非人道的な方法で変えてみせたのだ。


胡散臭くとも、絆され掛けつつあった。


そんな時に、その知り合いが、ある日、私の目の「劣化版」だなどと告げながら変えた目の色を、まざまざと見せ付けて来たとしたら。一体、どんな目で見れば良いのか。


私には分からなかった。


「疲労ですね。」

「ひろう。」


皇太子が顎先で使った使用人によって呼び出された医者が、気絶して倒れてから一時間後に目覚めた私に向かって告げた言葉を、何とも飲み込みにくいカフェオレを飲んだ時みたいな顔になって、繰り返した。


カチャリ、と、医者が眼鏡を押し上げた。


「過去に、何か精神的なストレスを感じた事はありませんか?」

「そんなものは無い。」

「ご本人に聞いています。」

「あります。」


ありまくりますが何か?


腕を組んだ皇太子に呆れた目を向けられながら、お前が私を妹と言って連れ回さなければ、あの男に会っていなかったんだぞと叫びたくなった。


だが、叫ばない。いやだって、あの日に迷子になって、見つかってしまったのは自分の所為だとも思うから。いや、いずれは知り合っていたのかもしれない。


悪魔みたいな、いやもう悪魔そのものな彼が摂政になる予定も、私に出会わずともそう変わらなかったのだとしたら。

気儘に旅をする彼が、私の生家がある場所へと辿り着くもも時間の問題だっただろうから。


一つ言っておくと、この世界には、魔法は無い。


そして、伝説上のドラゴンだとかユニコーンなんて言う、幻想に住まう生物は、空想好きな人間と夢を見る子供達の世界の中にだけ存在していた。

大抵は、そんなのが存在すると言われたら鼻で笑うか、生温かい目で見られる。


だが、唯一と言っても良い、世界に知られている希少な価値を有する物の枠組みにあったのが、近年の遺伝子の研究によって発表されている、人には存在しない筈の目の色を持って生まれる子供達の事である。学会で発表される限りでは、先天性の病気ともされていた。


彼らは、大抵が、知恵遅れだったり、若しくは、他の疾病を抱えており、成人まで生きた例が極端に少なかった。


だが、普通の子供の様に、ぴょんびょんと跳ね回り、寧ろ、酷く落ち着いた大人の様な顔をして大人や混じって話も出来る私と出会えた事を僥倖だと宣う、激しく興奮した医者に監禁され、そこを救われたとしても、私は、「君は今日から私の妹だ」と、ポッケに手を突っ込んで見下ろして来た皇太子を、ちっとも懐く相手だとは思えなかった。笑顔がもう信用出来ない人のそれだった。


そして、寝惚け眼の朝食の席ですら会話よりもフワッフワに軽か感じられた、その宣言の所為で、私は彼に連れ回される事になったのだから。


家を去る前に最後に見た、頭を下げる両親の姿は、幾ら思い出しても色が褪せた様に現実味が無い。


否定しようがない診断を告げられ、静かに目を伏せた子供に、二人の大人は目配せをして、退室しようと即座に判断した。長居は無用だ。


医者からの安静に、と言う言葉に小さく頷いて、ありがとうございますと頭を下げた。


お菓子禁止令を心の底から絶望した顔で聞き終えた私は、俯きながら、心の中で呪詛に似た怒りを紡ぎ、皇太子に無事、頬を鷲掴まれた。


先に医者を部屋から出し、その後、出て行く直前に、「お菓子を食べたら一週間伸ばすから」と要らぬ台詞を、此方を振り返って笑顔で告げた皇太子が出て行った。

ドアが閉まった瞬間に、枕をドアに投げ付けたのは言うまでもない。


「わーん!!!皇太子なんか嫌い!皇太子なんか禿げちゃえ!!いや、子孫が可哀想だから、やっぱり今の無し。あっ、そうだ。不眠症にでも悩んじゃえ!!!」

「なんとも激しいラブコールで。」

「安静にと言われたんじゃなかったか?」


ベッドの上で飛び跳ねまくりながらも、ちゃっかりと、侍女達を下げている辺りに怒られる事をしている自覚がある私を、苦笑しながら見ていた二人の男が居た。


会議は、私が部屋に搬送された後にも、通常通りに進み、三十分後位には終わっていたらしい。


不思議なのは、何故か、会議中のリューおじ様の失言により、あのトート経由で第四王女の縁談が組まされ、更には、成人後に即婚姻を結ぶ手筈が私の目覚めて数分後には整っていたと言う事だった。


……どうしよう。何も分からないよ。


困惑した顔で、ゾーイおじ様を見ると、「奇遇だね。俺にも、何で、お姫さんを落ち着かせる為にこの話題をチョイスしたのかが分からないよ」と言われた。なら何故それにした。


しかし、ぷふっ、と、顔を背けて腕で顔を隠したゾーイおじ様が、ぷるぷると震えながら付け足した。


「そう言えば、くふっ、龍呼ばわりされて恐れられているあの王弟様が、青褪めた顔で、ぷっ。摂政殿の差し出した書類に調印する様には驚いたな。ぷ、ふふっ。」

「確かに。言われてみれば、皇太子殿下の次に敵に回したくない人が、あそこまで動揺していたぐらいには、王女が大切に思われていたって事だよな。」


うん、分からない。何も分からないったら分からない。


分かった事は一つだけ。リューおじ様に呆れた目を向けられている事にも気づいていない、椅子からも崩れ落ちてしまったゾーイおじ様が、思った以上に、黒布の人と悪友?みたいな立ち位置に居たという事である。


あ、そうだ。


「皇太子殿下の弱みぃ?」

「うん!あの黒布さんから何か聞いてたりしないっ?」


そう。どうやら、ゾーイおじ様は、この国に私ぐらいよりも少し上の歳で暮らしていたと言う。ならば、もしかしたら、あの腹黒万年最低いじめっこ皇太子をこてんぱんにする策を思い付く情報でもくれるのでは?と思ったのだ。お菓子の恨みは怖いのだ。思い知れ、この思いぃ!!


へっへっへ、と、握り拳を作って、低く笑っていた私に、頭を後ろに回した手で掻き、片眉を上げつつも彼は答えてくれた。


「あー、そうだなー。犬が苦手?ってのは、聞いた事あるかも?でも、そんなのルーダコーハにでも聞けば良いじゃん。何で俺?」


な、なんだってー?!


有益過ぎる情報を貰えた私は、何も無いと言われてすっ転ぶ準備をしていたのに、と、ちょっと残念に思いつつ、チッチッチ、分かってないな。と、指を振る。

そこ、ベッドの上でどうやってすっ転ぶのだとか言うツッコミは要らないから!!


「そりゃ、本人にバレたら阻止されるかもでしょ!!」

「あははッ。確かに、お姫さんってばお転婆だなぁ。」

「ふふん、見てて!絶対に、ぎゃふんって言わせてみせるから。」


鼻息荒く得意げに胸を張る私の頭を撫でるゾーイおじ様。


さてさて、犬をどう調達しよう。皇太子が排除出来ない位、文句の言えない立場の人の犬にしないといけない。

下手をしたら犬に処罰が下りかねないなら、何もしない方がマシだしね。そこん所は、私だって分かっている。皇太子と言う身分は伊達じゃないのだ。


「良いのか、これ……。」


一歩引いた心の距離感で、上手く行かなさそうな気がする、と、そんな呟きをするリュッシェンティエンの呟きなど、この部屋に居る他の二人には知る由も無かった。





寝た。しっかり寝てしまった。


夜にも寝れるだろうかと心配する私に、よく眠れるお茶を淹れますからご心配なさらずにと言ってくれたサフィラを信じて、いそいそと寝衣から着替えた。

お菓子は駄目だが、簡単に摘めるサラダならと言ったサフィラに抱き付くと、「私も姫様が大好きです」と言われた。……うん?よく分からないけど、私も大切だよ、サフィラ。


その日の晩、カードゲームで遊ぼう、と、誘っていた一人、ゾーホンおじ様が早速、時間通りにやって来た。

まだかな、まだかね、と言いながらサフィラの淹れてくれた目が覚める方の美味しいお茶を飲みつつ、彼と二人、一緒になってカードを人数分、振り分けていた時だった。


靴は脱いでいるけれども、寧ろ、素足では無くとも足を見せる事事態があまり宜しくなかったりする文化の所もある。


何だか慌ただしく走っている足音が近付いてくる音を聞いて、ビクリとする。

途中からカード分けを手伝おうとした時に、机に置いたカードに手が届かず、これ以上は手が伸ばせないからと椅子の上に立っていたのだ。これを見られたら大変、と、誰が来るかも分からないので慌てて座ろうとした私が落ちそうになった。


「きゃっ!」


サフィラの悲鳴に、目を瞑った。


しかしながら、すんでの所で、ゾーホンおじ様が助けてくれたので、セーフだった。ああ、心臓がバクバクする……。

一緒にカードを分ける為にと、おじ様が隣に寄ってくれていなかったら、本日二度目のお医者様との時間になりそうで、別の意味でも怖かった。皇太子に何を言われるか。いや、頬を鷲掴みされるか分からない。


心配そうな顔をしたサフィラが倒れた椅子を戻した。そこに、おじ様が私を下ろしてくれた。


「あっぶね……ビックリさせるなよな、もう。」

「ごめんなひゃい。」

「ま、別に良いけどよ。って、何だ?!」


ぽん、と優しく頭を撫でられて、にへへと笑う私達の周りに居た使用人達の間にも和やかなムードが広がっていた。


けれども、私の部屋に集まるメンバーだった予定の灰色髪のリューおじ様が、汗だくで走り込んで来たのだ。ゾーホンおじ様が開け放たれたドアの音に驚いていた。

つい、良いリアクションにグッドサインを送ってしまう。お、おう?と言いながらも同じ様に、親指を立ててくれたゾーホンおじ様って本当に良い人だと思うのだ。ちょっとチャラい気もするけど。いや、そこも良いのだろうか。お子様には分かりません。


部屋の入り口の方へと、首だけで振り向いた私は、彼の表情を見て、うわー、と思った。嫌な予感が的中した事に天を仰いだ。


「王妃が、デュゼキエム(黒百合)様が亡くなられた!!」


…………ま?








かの国には、黒百合様の他に、青薔薇様、赤椿様、白蘭様が居るらしいとか。因みに、後宮ではなく、公爵とか侯爵とかの奥方を讃える為の通称名。


魔法は無いけれど、不思議な事は度々起こる。

黒布さんは夜になると巨人になるとか、皇太子は三度生き返っていると言う噂があるそう。王族ってものは不思議な噂に事欠かない。


会談後に行われた立食形式の提案パーティー

「あの子、大丈夫かしらねぇ。」

「大丈夫ですよ。何となく、倒れる時に受け身取っていましたし。逞しくて丈夫そうですし。」

「あら、女の子に逞しいだなんて……。っふふ。でも、確かに何だか皇太子殿が過保護過ぎる様にも思えるのだから、そうかもしれないわね。」


「いや、何で従者が主人を差し置いて堂々とパーティーで食い倒れ企画並みに食べてるんだ?しかも、ユーテフォリの王妃様も気付いていないのかいるのか……。」

「リュッシェンティエン。見るな。あれは気にした方が負けの類のアレだ。」

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