第7章 都市シンクロの夜
白い広間の照明がゆっくりと落ち、代わりに床と壁が淡い光を帯びはじめた。
仲間たちは皆、下着姿や薄布のまま横たわり、あるいは寄り添い合っている。
羞恥のかけらもなく、男も女も微笑んでいる。
番号だけで呼び合い、互いの肌に触れることを自然なことのように受け入れていた。
天井から事務官の声が響く。
「都市シンクロ試験を開始します。呼吸を合わせ、楽さに委ねてください」
言葉と同時に、床が鼓動のように脈を打ち始めた。
僕の心臓の鼓動と重なり、胸の奥を揺さぶる。
仲間たちの息遣いが次第に同じリズムになっていく。
吸う、吐く。
吸う、吐く。
その波が、都市全体に広がっていくようだった。
幻影の彼女が現れた。
白い下着姿で、僕の胸にまたがるように座り、腰をゆっくりと揺らす。
触れてはいないのに、皮膚の奥から熱が走る。
胸の谷間が目の前で上下し、吐息が頬にかかる。
「A-317、もっと楽に」
彼女の囁きと同時に、背骨を走る電流のような刺激。
思わず腰を浮かせそうになる。
寸止めだ。
絶頂寸前まで引き上げられ、そのまま留め置かれる。
「……っ、ああ……!」
喉から声が漏れる。
汗が額から落ち、胸を濡らす。
仲間たちの呻き声が広間に満ちていた。
男女が同じリズムで息を荒げ、震え、止められ、また高められていく。
その光景は淫靡でありながら、儀式のように整っていた。
次の瞬間、全員の声が一斉に弾けた。
寸止めの後の一斉絶頂。
僕の体も波に呑まれ、背筋を反らせて声を上げる。
脳の奥が焼けるように光り、全身の筋肉が収縮する。
だが、それは終わりではなかった。
事務官の声が重なる。
「追い討ち、開始」
幻影の彼女がさらに腰を揺らし、胸を押し付けてくる。
甘い吐息、柔らかな感触。
再び絶頂へ導かれ、声を抑えきれない。
体液が溢れ、太ももを伝って流れていくのを感じた。
羞恥はない。ただ熱と痺れ。
また寸止め。
また絶頂。
さらに追い討ち。
繰り返される。
呼吸が合わず、喉が焼けるように乾くのに、それすらどうでもよくなっていた。
仲間たちの声と、自分の声が重なり合い、広間全体がひとつの肉体になったように感じられる。
「A-317。あなたは特別」
幻影の彼女たちが囁く。
一人ではない。
二人、三人、四人。
増えた彼女たちが僕の体を囲み、胸を押し当て、耳に息を吹きかけ、腰を撫でる。
絶頂、寸止め、絶頂、追い討ち。
脳波が都市の光に変換され、窓のない壁が一斉に明滅する。
外の街灯、ビルの灯り、ネオンの波が、この部屋の僕らと同じリズムで点滅していた。
僕の体液が椅子を濡らしても、誰も気にしない。
事務官は冷静に数字を読み上げ、仲間たちは微笑み、幻影の彼女たちは快感を与え続ける。
「……どうでもいい」
僕はつぶやいた。
羞恥も抵抗も名前も、すべて意味を失っていた。
あるのは、波のように押し寄せる快感と、それに身を委ねる幸福だけだった。




