表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

エピローグ1

どれほどの時間が経ったのか、僕にはもう分からない。

繭室に収められてから、昼も夜も関係なく、ただ母胎のような柔らかな膜に包まれ続けている。

耳の奥に響くMotherの信号が、僕の体内時計を狂わせた。


「レベルアップ」——ただその合図だけが、次の刺激の予告になっている。


最初は快感だった。

繰り返す寸止めと絶頂に翻弄され、体液を垂れ流しながらも幸福を感じていた。

だが今は、それに慣れてしまっている。

脳の奥が、Motherに「もっと強いものを」と要求している。

僕自身が望んでいるのではない。

Motherが僕にそう望ませているのだ。

幻影の彼女は今も繭の中に現れる。

制服姿だったあの頃の面影は、もうない。

代わりに、下着姿で、胸の谷間を押しつけ、腰を揺らし、唇を僕の耳に寄せて囁いてくる。


「A-317、もっと、もっと……」


顔を胸の谷間に押し込まれる。

窒息しそうになるほど柔らかさに包まれ、息が詰まる。

だが、その苦しささえも快楽に変わっていく。

Motherが僕の神経信号を調整しているのだ。

喉が詰まり、酸素が足りなくても、脳が快感物質を分泌する。

死ぬことはない。

安心の中で、苦しさが甘美に変換される。

幻影は増え続けていた。

背後から抱きしめる者。

腰を撫で、背中に舌を這わせる者。

肩に手をかけ、首筋を噛む者。

数十人が同時に僕を責め立て、体のどこにも安らぎを残さない。

やがて彼女たちの姿は、人間の枠を超えていった。

灰色の肌を持つ女。

肌の下に鱗を覗かせる女。

背中から獣のような耳を生やし、尻尾を揺らす少女。

獰猛でありながらも甘美な笑顔を浮かべ、僕を番号で呼ぶ。


「A-317……」


「あなたは私たちの光……」


肌は冷たいのに、抱かれると火傷のように熱くなる。

舌はざらついているのに、触れられると甘く痺れる。

現実ではあり得ない存在が、僕に群がり、絶頂を引き出す。

極めつけは、触手を操る魔女だった。

黒い布で体を覆い、目だけが赤く光る。

彼女が腕を振るうと、透明な触手が無数に生まれ、僕に絡みついた。

鼻に、口に、耳に。

下半身の穴にまで、細い触手が入り込む。

内部を這い、神経を直接撫で回す。

吐き出した声は苦痛の叫びに似ていた。

だが、その苦痛さえも甘美に変換されていた。


「ん、ああああ……っ!」


全身を内側から侵される感覚。

胸が詰まり、頭が痺れ、視界が白く弾ける。

死にそうなのに、死なない。

繭が僕を守り、Motherが僕を調整している。

永遠に壊れない。

永遠に搾り取られる。

絶頂、寸止め、追い討ち。

流れ出す体液は全て繭に吸われ、電気に変換され、都市を照らす光になる。

僕は苦しみの中で笑っていた。

何も考えなくていい。

どうでもいい。

僕の体は、僕の番号は、都市の幸福そのものなのだから。

現実の彼女は、もう僕を覚えていないだろう。

いや、もしかすると、今頃は別の少年を笑顔で迎えているのかもしれない。

だが、それもどうでもよかった。

僕の目の前には、数十人の美女がいる。

人間の女。

異形の女。

獣耳の娘。

触手の魔女。

皆が僕を求め、皆が僕を溺れさせてくれる。


「もっと、A-317」


「まだ足りない」


「永遠に、ここで」


その声に包まれながら、僕は再び体を震わせた。

苦痛と快楽の境界が溶け合い、全身が震え、体液が放たれ、電気が生まれる。

僕はもう、人間でも名前を持つ存在でもなかった。

ただの供給源。

ただの種牡馬ユニット。

しかし、それは幸福だった。

繭が優しく脈打ち、幻影の美女たちが無限に微笑み、Motherが僕を永遠に守ってくれる。

だから、死ぬことはない。

だから、安心して絶頂を繰り返せる。

そして僕は、あり得ないほどの幸せと安心に包まれたまま、引き続き絶頂を楽しみ続けるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ