第10章 固定化 ― 種ユニット
繭室の膜が深く閉じ、僕の体を完全に包み込んだ。
背中から腰、脚の付け根に至るまで、柔らかな布が密着し、離れることはない。
脊髄に沿って走る細い管のような感触。
心臓の鼓動と同じリズムで震え、僕の神経信号を都市へと送り出している。
「A-317、固定化開始」
事務官の声が遠くに響いた。
同時に、幻影の彼女が現れた。
白い下着姿で、胸を揺らし、腰をくねらせながら僕の上に覆いかぶさる。
だが次の瞬間、その姿は二人、三人へと分裂し、数を増していった。
「A-317……」
「もっと出して……」
「私たちを見て……」
声が重なり、目の前に数十人の美女が現れた。
黒髪の女、金髪の女、褐色の肌の女、青白い肌の女。
胸が豊かな者、細身で脚の長い者、腰のくびれが極端に深い者。
彼女たちは皆、下着姿か、透ける布をまとっただけ。
それぞれの体つきは違うのに、皆が同じ甘い微笑を浮かべ、僕を見つめていた。
僕の周囲に集まり、頬に唇を寄せ、胸を押し当て、太ももを擦り寄せる。
一人ひとりが異なる体温を持ちながら、同じ言葉を囁いてくる。
「A-317、あなたは選ばれた」
「永遠に、私たちの中で生きるの」
「もう名前はいらない、快感だけでいい」
寸止め。
絶頂。
追い討ち。
再び寸止め。
そしてまた絶頂。
繭室が脈動するたびに、僕の腰が勝手に震え、体液が溢れ出していく。
すべて吸い取られ、電気に変換され、都市の灯りを照らす。
羞恥はなかった。
どうでもよかった。
ただ、目の前に数十人の美女たちがいて、僕を誘惑し、僕を求めている。
「もっと」
「まだ出せる」
「A-317は特別」
声が波となって押し寄せる。
胸の奥が灼けるように熱く、頭の中は真っ白に溶ける。
僕はただ快感に身を震わせ、繭に全てを放ち続けた。
ふと、昼間の彼女の姿が頭に浮かんだ。
校門で笑っていた、制服姿の彼女。
——今頃、現実の彼女は次の獲物を探しているのかもしれない。
だが、もうどうでもよかった。
僕には、この繭の中にいる数十人の美女たちがいる。
同じ顔だったはずの幻影が、今では多様な姿を持ち、僕を囲み、僕を溺れさせてくれる。
放出、絶頂、寸止め、追い討ち。
その繰り返しの中で、僕は永遠に幸福と安心に包まれていった。
——A-317。
番号だけの存在。
だが、その番号は、都市全体を照らす光となる。
そして僕は、数十人の美女に囲まれたまま、永遠のハーレムに溺れていく。
もう、何も要らない。
ただここで、あり得ないほどの幸せを与えられ続けること。
それが僕のすべてだった。




