第93話 湖の中の島
「私も一緒に行ってよろしいでしょうか?」
湖の中の島に転移すると言ったら、アウラスニールが同行を申し出てくれた。
地脈はエルフにしか感じ取れないから、エルフの誰かと一緒に行く必要がある。エルフの中から一人となると、探索隊長のアウラスニールは適任だ。
「護衛として私も同行したいのですが」
オフィーリアは責任感が強い騎士だ。
初めて行く島は危険がないとは言えない。
うーん、どうしよう。
これまでやったことはないけれど、感覚では三人一緒でも転移できると思う。
「それじゃあ三人で行こう」
僕はアウラスニールとオフィーリアと手をつないだ。
島には木が茂っているけれど、ところどころに開けた空間がある。
湖岸から見える空間に意識を集中して生産スキルを発動する。
スキルが発動すると、次の瞬間には島にいた。
どうやら目指していたスペースにうまく転移できたようだ。
それに、これで三人でも転移できることが分かった。
「これが転移魔法ですか。まさに救世主様の御業です」
アウラスニールは大袈裟に僕を褒めた直後、目を見開いた。
「おお、これは!」
「救世主様、この地には地脈の力が溢れております。この島に地脈のクロスポイントがきっとあります」
おお、ついに地脈のクロスポイントが見つかりそうだ。
アウラスニールは島の中央の方により強い地脈の力を感じるようだ。
先頭にアウラスニール、真ん中に僕、殿がオフィーリアという隊列で、島の中央に向かって進む。
木が邪魔になるときはアウラスニールの魔法で木にどいてもらう。エルフが一緒にいてくれると森の探索は楽になるね。
しばらく進むと、僕らは島の中央にある広場に着いた。
どうして広場になっているんだろう?
人の手が入っている感じはないけれど、木はなくて草花が生えている不思議な場所だった。
広場の真ん中まで進むと、アウラスニールは膝をついて空を仰いだ。
「おお、女神よ」
祈りを終えて立ち上がった彼は、感動した様子だった。
「救世主様、オフィーリア殿。ここが地脈のクロスポイントです。間違いありません」
「良かった。今回は発見できないかと思ったよ」
「ついに辿り着きましたね」
僕らは湖岸に転移して戻った。
みんなが駆け寄ってくる。
「地脈のクロスポイントは湖の中の島にあった」
アウラスニールの言葉に、エルフたちは喜ぶというより、ほっとした様子だった。中には座り込む者もいる。
「これもエルフの探索隊のみんなが頑張ってくれたおかげだ。ありがとう」
そして、ここまで来られたのは、休暇を取って同行してくれた騎士たちの助けも大きい。
「騎士のみんなにも感謝を。ここまで付き合ってくれて本当にありがとう」
「ウィリアム様、御礼を言われるようなことじゃあねえです。道中でエルフたちと話したんですが、彼らは人類のために困難な使命をずっと果たしてきたんですぜ。俺たち人間も少しは手伝わねえとバチが当たるってもんです」
ああ、ジェームスはやはり立派な騎士だな。
周りの騎士たちも頷いている。
その様子を見て、エルフたちは嬉しそうな顔をした。
こうやって人間とエルフの間に信頼関係ができていくといいな。
ついに探索は終わった。
もう湿地から離れても大丈夫だ。
湖岸から大きく離れ、乾いた土地まで移動する。
湿地で繋がれていると虫が寄ってきて嫌だったみたいで、心なしか馬も喜んでいる気がする。
「ああ、乾いた地面だ」
「ようやく湿地とおさらばできます」
騎士もエルフも喜んでいる。
一息入れたところで、湖の中の島の様子について、みんなに話した。
アウラスニールによると、地脈のクロスポイントのあたりが広場になっているのは、地脈の力が強すぎて普通の木は育つことができないためらしい。
「いいか、無事にフェアチャイルド領に戻るまでが遠征だ。みんな気を抜くんじゃねえぞ!」
みんなのほっとした様子を見て、ジェームスは檄を飛ばした。
そのとおりだな。全員が無事に戻ることが大切だ。
いつものように温かい紅茶のポットを差し入れると、僕はオフィーリアと工房に向けて転移した。
ノーザンフォードに戻ると、やはりほっとするな。
「オフィーリア、お疲れ様」
「ウィリアム様もお疲れ様でした。館に戻られますか?」
「いや、今日はエルフの森に寄って報告してからうちに戻るよ。クロスポイントの発見を早く伝えるべきだと思うから」
「そうですね。では私は辺境伯閣下にご報告しておきましょうか?」
「ありがとう、お願いするね」
オフィーリアが部屋から出ると、僕はエルフの森に転移した。
「うわ、救世主様。分かっていても驚きますね」
エルフの隠れ里の広場に転移すると、近くにいたエルフが驚いた。
「ごめんね、驚かせて。今日は急いで知らせたいことがあったんだ」
「嬉しそうなお顔をされてますから、きっと良い知らせですね。族長と古老を呼んできます」
「ありがとう」
「ウィリアム様、よくいらっしゃいました」
「ああ、ルーセリナに古老さん。急に転移魔法でお邪魔してすみません。でも、早く伝えたかったんです」
「といいますと?」
「地脈のクロスポイントが見つかりました」
「まあ、素晴らしいニュースです」
ルーセリナは緑色の大きな瞳を輝かせて喜んでくれた。
「ありがとうございます、救世主様。これで世界樹を成長させる道筋が見えました」
古老さんは冷静な口調だけれど、ほっとした様子がうかがえる。
広場に集まったエルフたちは歓声を上げた。




