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【書籍化】生産スキルで内政無双~辺境からモノづくりで幸せをお届けします~  作者: スタジオぞうさん


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第92話 見つからないクロスポイント

 その日の午後もクロスポイントを発見できなかった。

 けれど、近づいている感じはするとエルフたちは言っている。


 日が傾いてきたので湖から離れ、野営地にする乾いた場所を探し始める。

 このあたりは湿地帯だから、湿っていない場所を見つけるのはそれなりに大変だ。成果がないことで徒労感も増してくる。


 野営地が決まったところで、僕は収納していた内部を拡張したテントを出した。

 騎士もエルフも、疲れた顔に嬉しそうな表情を浮かべて入っていく。


「うわあ! やっぱり広い。不思議だけどいいわあ」

「見た目は普通のテントなのに」

「虫が入ってこないのは素晴らしい」


 今日はみんながよく眠れるといいな。

 僕はいつものように温かい紅茶の入ったポットを差し入れると、「じゃあまた明日」と言って、オフィーリアと一緒に工房に転移する。


 工房に戻ると、僕らはすぐにカフェに行った。

「ベイカーさん、チェリーパイは凄く美味しかったよ! みんなも元気が出るって言ってたよ」


「甘味と酸味のバランスが良く、疲れが取れそうだと好評でした」

「まあ、お二人とも褒め過ぎですよ。でも私の作ったお菓子で皆さんが元気になったのなら嬉しいです」


 その後でオフィーリアに「お疲れ様」と言って別れたら、工房の自分の部屋に向かう。

 今日はまだ時間があるから、少し鑑定をしようかな。


 未開地では、見慣れない植物とかを見つけると取り敢えず収納している。

 その場でゆっくり鑑定できないから、まだ鑑定していないものがいろいろある。


 湿地の前に行った大河の近くの肥沃そうな土地では、香りの良い草を見つけていた。

 どこか懐かしい香りだと思ったんだけど、どんなものなんだろう。


 鑑定してみると、前世のスイートバジルとほぼ同じものだった!

 バジルは好きだったから嬉しい。

 これまで、この世界では見たことが無かったんだ。


 元の世界ではバジルというとイタリア料理のイメージが強い。

 でも、インドあたりの熱帯アジアが原産地で、南ヨーロッパにいつ伝わったかは諸説あるみたいだ。


 スイートバジルはトマトやチーズによく合うし、ハーブの王様と呼ばれることもある。栽培も簡単だ。 

 これは良い物を見つけたな。


 次の朝、探索隊の野営地に転移すると、ギルバートが笑顔で寄って来た。

「ウィリアム様、おかげでぐっすり眠れました! やっぱりベッドはいいっすね」


「よく眠れたのなら良かったよ」

 他の騎士たちやエルフたちも集まって来た。


「テントの中が広いのでゆっくりできました!」

「地面の上で寝るより湿気が気にならずに済みました」

「虫が来ませんでした!」


 みんな昨日の夕方より元気そうだ。

 僕の作ったテントが役に立って良かった。


 そして今日も探索が始まる。

 地脈を感じられるエルフたちがクロスポイントを探し、そのエルフたちを護衛して騎士たちが進む。


 湖岸はもう調べているから、少し離れたところも調べることにした。

 ときどき襲ってくるカエルのような魔物を退治しながら探索を進める。


 太陽の位置がだんだん高くなってきた。

 気温が上がると湿度も上がってきて、少し蒸し暑い。

 うっすらと汗がにじんでくる。


 少し早いけれどランチ休憩をすることになった。

 草原を探索するときより疲れやすいから、早めに休むのは大事だよね。

 今日のランチの差し入れは、料理長の焼いてくれたバゲットとハムやチーズだ。


 ランチで一息入れると、午後も湿地を探索した。

 エルフたちは湖の周辺で地脈が強く感じられると言っている。

 けれど、地脈のクロスポイントはなかなか見つからない。


 日が傾いてきたところで、無理をせずに探索を切り上げた。

 いつものように温かい飲み物を差し入れると、工房に転移して戻った。



 それから二日が経った。

 みんな真剣に探しているけれど、依然としてクロスポイントは見つからない。

 大河の源になっているような大きな湖だけれど、それでも調べ尽くした感じだ。


 口には出さないけれど、みんな焦っているのが分かるし、疲れの色も見える。

「ウィリアム様、ちょっといいですかい」とジェームスに呼ばれた。アウラスニールも一緒にいる。


「どうしたんだい? 何か相談かな」

 少し離れたところに行き、三人だけで話す。


「救世主様の差し入れで元気を頂き、テントのお陰で夜も休めております。ただ、正直に申せば、みな疲れてきております」


「フェアチャイルド辺境伯領まで戻る分の体力も残しておかないといけねえですし、今日も駄目なら引き返した方がいいと思いやす」

 言いにくいことをはっきり言うのはジェームズのいいところだ。


「そうか。残念ではあるけれど、無事に帰るのが一番大事だ」

「近くまで来ているのは間違いないのですが」

 アウラスニールは悔しそうだ。


「湖の周りはだいたい調べ尽くしやした」

「うん、みんな頑張って湿地の中を探してくれていた。一体どこにクロスポイントはあるんだろうね?」


「そうですね、調べていないといえば、もうあとは湖の中の島くらいでしょうか」

 湖の真ん中には、大きな島があった。


「ですが、湖岸から島までは結構距離がありそうです」

「泳いでいくのは危険ですな」

「島に渡る方法があるといいんだけど。木のボートなら作れそうかな」


「ああ、ウィリアム様なら作れそうですな。水中にどんな生き物がいるか分かりやせんから危険はありやすが、泳ぐよりはましでしょう」

「もし救世主様にボートを作って頂けるなら、島に行ってみます」


 うーん、確かに木のボートだと危険はありそうだなあ。

 危険がなく島に渡れる方法があるといいんだけれど。


 待てよ、僕は一度行った場所しか転移できないと思っていたけど、正確に言えば一度自分の目で見た場所なら転移できる。

 湖の中の島は、こうして見えるんだから転移できるんじゃないかな。


「ジェームス、アウラスニール。たぶん僕はあの島まで転移魔法で行けるよ」



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