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【書籍化】生産スキルで内政無双~辺境からモノづくりで幸せをお届けします~  作者: スタジオぞうさん


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第89話 テントを改造しよう

 南の未開地から転移魔法で工房に戻ってきた。

「お疲れさま、オフィーリア。今日もありがとう」

「ウィリアム様もお疲れ様でした。お屋敷へ戻られますか?」


「いや、今日は工房でちょっとものづくりをするよ」

「そうですか。あまり根を詰めないでくださいね」

 オフィーリアを工房の玄関で見送ってから、工房のカフェに行った。


 カフェで紅茶を飲んで一息入れる。

 湿地でも探索隊のみんながよく眠れるように何か作れないかな。

 考え込んでいると、テオが隣の席にきた。


「師匠、お疲れ様です。探索の状況はいかがですか?」

「ああ、テオ。誰も大きなケガをしていないし、順調だよ。でも湖の近くは湿度が高くて虫が多いんだ。みんなが夜もゆっくり休めそうにないのが心配なんだよ」


「南の未開地は大草原と聞いていましたけど、湖があって湿地もあるんですか。驚きました」


「うん、大きな川もあったよ。改めて未開地のことはよく分かってなかったんだなって思うよ」


 テオと話していると、ベイカーさんがお皿を持ってやってきた。

「ウィリアム様、お疲れ様です。良かったら、どうぞ。新作なんです」


 お皿に上には香ばしいパイが載って、甘い匂いが漂ってくる。どうやら赤い果実を入れて焼いたみたいだ。


「ありがとう、頂くね……おお、甘酸っぱくて美味しい。これはチェリー?」

「正解です。この間、アップルパイの作り方を教えて頂いたのでチェリーを入れてみたんです」


「凄く美味しいよ。元気が出そうだ」

 美味しいお菓子は疲れを癒してくれるね。


「それは良かったです。難しい顔をされていたので」

 ベイカーさんの優しさが沁みる。


 そうだ、このパイを差し入れしたら探索隊のみんなも元気が出るんじゃないかな。


「ベイカーさん、できれば騎士たちにこのパイを差し入れしたいんだけど、追加で作ってもらえるかな?」

「はい、チェリーは在庫がありますから、たくさん作れますよ」


「ありがとう。じゃあ、明日の時間のあるときに作ってもらえるかな?」

「ええ、じゃあ明日の朝にお渡ししますね」

「いやいや、無理をしてもらったら悪いよ。働きすぎはいけない」


「大丈夫ですよ。ちゃんとお休みはもらっていますし、明日は朝早く来て夕方は早めに帰ることにしますから」

 いいのかな? 工房をブラック職場にだけはしない決意なんだけど。


「いつもはのんびりされているウィリアム様がこのところ厳しい表情をされているので、何か大変なことをされているのは分かります。私のお菓子が役に立つのなら嬉しいんです」


「ありがとう、ベイカーさん。とても役に立つことは保証するよ」

 ベイカーさんは良い人だ。とてもありがたい。


 カフェを出ると、工房の自分の部屋に戻って考えることにした。テオも付き合ってくれる。


 空を飛ぶ虫が入らないような、そして地面を這う虫を気にしなくて良いようなテントが作れるといいな。


 まず、空を飛ぶ虫の対策だ。

「虫の入ってこないテントを作れないかな」

「湿度が高くて虫が出るんでしたね」


 この世界には殺虫剤は無いし、急に作るのは無理かな。

 いろいろ考えているうち、元の世界の蚊帳を思い出した。

 今では見かけないけれど、田舎のおばあちゃんの家で見たことがある。


 昔は蚊帳を出入りするときに一緒に蚊が入らないよう、素早く出入りするように気合を入れたものだと聞いた。


「テオ、丈夫な植物の繊維はあったかな?」

「ええと、麻があったと思います」

 テオが持ってきてくれた麻を前にして、蚊帳を脳裏に描く。


 探検隊のみんなが虫に悩まされずに安心して眠れることを願いながら、生産スキルを発動する。


 温かい光が消えた後、そこにはおばあちゃんの家で見た蚊帳にそっくりのものが出来上がっていた。


「師匠、面白い形のものですね」

「うん、これで飛んでくる虫は入ることはできないんだよ」

「なるほど、編目が細かいからですね」


「次は地面を這う虫の対策だ」

「地を這う虫ですか? テントをなるべく隙間なく張っても、隙間から入ってくるのを完全に防ぐのは難しいでしょうね」 


 うーん、どうすればいいだろう?

「ベッドで寝ればましになるかなと思って、ベッドを入れられる大きなテントを収納してで持って行くことも考えたんだけど……」


 探索隊は地面の上に布を敷いて寝ている。

 ベッドなら地面を這う虫がいきなり布に入ってくることはない。それに地べたで寝るより湿気の影響も少ないだろう。


「でも大きなテントをいくつも持って行くと、それを置ける広くて平坦な場所が必要だ。湖の近くは木もたくさん生えているから、そんな場所はないんだよ」

「そうなんですね」 


「エルフの魔法で木にどいてもらうにしても数が多くて大変だし、危険な場所で魔力の消耗はすべきじゃない。それに土地に起伏もあったから、良い場所を見つけるのは大変そうなんだよ」


「なかなか難しい場所のようですね」

「そうなんだよ」

 考えているうちに、古老さんは転移魔法のことを時空魔法と呼んでいたことを思い出した。


 一瞬で移動するのは時間に関する魔法だし、遠くに移動するのは空間魔法ということなのかな。


 もし僕が空間を扱う魔法が使えるようになっているなら、内部の空間を拡張したテントを作れないかな。


 テントの内部を拡張すればベッドを置くことができるし、広い場所はなくても大丈夫だ。

 僕は目の前にテントを置くと、目を閉じて集中した。


 内部の空間が拡張されて、一見普通のテントだけれど、中にベッドを置くスペースのあるテントをイメージする。


 探索隊のみんながベッドで横になり、昼間の疲れをとることができるようなテントを作りたい。


 そう願いながらイメージに集中する。

 生産スキルを発動すると、温かい光が消えた後にテントが現れた。

 見た目は変わっていないけれど、ちゃんと改造できただろうか?


 テントに入ってみると、中はぐんと広くなっていた。

「うわ、中はこんなに広いんですか? 凄いですね、師匠」

「ありがとう、テオ。空間魔法を応用してみたら出来たんだ」


 試しにベッドを入れてみると、簡素な木のベッドは4つ入れることができた。

 空間を拡張したテントの入り口に蚊帳のようなネットを取りつける。


 探索隊は全部で25名だ。

 1つのテントに4人入れるから7つ作ればいいかな。

 テオが複製で手伝ってくれたから、一日で7つ作ることができた。


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