閑話 ある農夫の見た夏至祭
俺はノーザンフォードの郊外の村で小麦を育てている農夫だ。
今年も雨があまり降らなかったが、ありがたいことにフェアチャイルド領は今年も豊作だ。
領都のノーザンフォードでは夏至祭が収穫祭を兼ねて行われる予定だ。
しかもフローラ王女殿下がいらっしゃると噂に聞いた。
王族が西部に来られるのは久しぶりだ。
それにフローラ殿下は王国一の美少女と名高い。
夏至祭に参加し、王女殿下を一目見ようと、俺は村からノーザンフォードにやって来た。
街に入ってみると、ぼろかった建物もみんな改修されて綺麗になり、随分と店が増えていて魂消た。
ちょっと見ないうちに随分とこの町は栄えたんだな。
夏至祭の行われる大広場は人で溢れかえっている。
みんな暇だなって、俺もその一人か。はは。
大広場の真ん中にはとても行けずに端っこにいたら、ちょうど近くを通って、フローラ殿下が騎士に守られながら入ってこられた。
殿下を間近で見られるとはついてる。
近くで見ると、綺麗な金髪に大きな青い目、すっと通った鼻に小さな口。
まさに絵に描いたような美少女だった。
こんな綺麗な子が現実にいるんだな。
大広場に設置された演台に上ると、殿下は王家を代表してお言葉を述べられた。
今年は王国各地で豊作となり、領主様とウィリアム様に感謝しているとのことだった。
雨が少ないのに小麦が育つのはウィリアム様のおかげだから村のみんなも感謝してるけど、王様にも感謝されるなんて凄いな。
それから殿下は石畳の道路のことや工房のことを褒めてくれた。
自分の住んでいるところを褒められるのは嬉しいね。
その後で、初穂を女神様に捧げる儀式が始まった。
辺境伯夫人のメアリー様を一目拝むことも、夏至祭に来た理由だ。美しく慈愛にあふれるメアリー様は聖女だと村のみんなも言っている。
騎士たちに先導されてメアリー様が現れた。その後ろに修道女たちが続く。
だが、メアリー様の両側に二人の少女がいる。
いつもはお一人のはずなのに。
周囲もざわつき始めた。
その一人はさっき見たような気がする。というか、あんな美少女はそうそういない。
「あれはフローラ殿下じゃないか?」
「なんと! 王女殿下がメアリー様と一緒に儀式をするのか」
みんな色めき立った。
「もう一人はカーディフ伯爵家のスカーレット様じゃないか?」
「本当だ、スカーレット様だ!」
大広場は熱狂に包まれた。
スカーレット様は西部では人気があるんだ。
フローラ殿下は完璧な美少女かもしれないが、スカーレット様も負けちゃいない。
剣術も得意だっていうんだから、ただの美少女じゃない。
はは、ついスカーレット様を応援してしまうのは、俺が西部の男だからかな。
辺境と言われる西部だが、住んでいる者は誇りを持っているんだ。
近くの女性たちの声が聞こえてきた。
「まったく男どもがうるさいことときたら」
「あはは、そうだね。でも三人とも本当にお綺麗ね。夢のような光景だよ」
「そうね、きっと今年の夏至祭は伝説になるわね」
ああ、こんなに凄いものを見られるとは思わなかった。
夏至祭に来てよかった。
村に戻ったら自慢しないとな。




