第74話 ミスリルの発見
ソフィの放った風の上級魔法テンペストの威力は凄かった。
巨大な魔猪たちが横倒しになったりひっくり返ったりしている。
「今だ、行くぞ!」
リアムが叫ぶと、騎士たちが鎗や刀をかざして、傷ついた魔猪たちに突っ込んでいく。
先頭に立つリアムは普段見せない大技を繰り出した。
「ロッククラッシュ!!」
大岩をも砕くリアムの剣技が発動し、数頭の魔猪がまとめて黒い煙になった。
「フレイムソード!」
レティも炎の魔法剣を発動して切り込み、魔猪を屠っていく。
やがて即席で作った石の回廊の向こうまで魔猪を押し返した。
ソフィの魔法の威力は大きく、後ろにいた魔猪も傷ついているようだ。
「このまま押し切るぞ!」
リアムが声をかけると、騎士たちは「おお!」と応えた。
「僕らも少し手伝おうか」
「はい、師匠」
中層を初めて探索したときはエルフたちもいて何もすることがなかったけれど、今回はエルフはいないし、魔物の数が多い。
実はテオは接近戦も強いし、最近は僕も戦っている。
テオは魔法で収納していた短槍を取り出すと、魔猪に向かっていく。
身軽なテオは敵の攻撃を難なくかわし、的確に攻撃を当てて倒した。
本当に万能だと感心する。鍛冶が苦手なこと以外、たいていのことはできる感じだ。
次は僕の番だ。
収納していた投げ槍をまとめて取り出す。
後ろから状況を見て、苦戦している騎士がいるところに槍を投げる。
魔猪を一撃で倒すことはできないけれど、命中率は高いから騎士が体勢を立て直す時間を稼げる。
今のところ、これが一番みんなの役に立てるみたいだ。
ほどなくして、魔猪の群れをすべて黒煙にかわった。
「やったわ!」
「やりました!」
レティとソフィはハイタッチした。
「ソフィーの魔法は凄かったわ。トリマギアだと聞いてはいたけれど、いつの間にこんなに強くなったの?」
「えへへ、エルフの古老さんに魔法を教えてもらっているんです」
「そうなの?エルフは魔法が得意な種族だから良かったわね」
「ソフィア様、凄い威力の魔法でした」
騎士団の魔法使いたちもソフィを囲んで褒めている。
僕の周りにも騎士たちが集まってきた。
「ウィリアム様、石壁のおかげで魔猪の勢いが止まり、助かりました」
「押されていたところを投げ槍で助けて頂き、ありがとうございました」
「みんな無事で良かったよ」
予想外の強敵に遭遇したけれど、大怪我をした人はいなかったから安心した。
そのうちにレティも僕のほうに近寄ってきた。
「あの石壁は効果的だったわ。おかげで魔猪を二頭ずつ倒せば良くなったもの」
「あはは、少しは役に立てたみたいで良かったよ」
「身体強化魔法も上手くなったし、苦戦している騎士を投げ槍で援護していたのも有効だったわ。ウィルは騎士になっても十分やっていけるんじゃない?」
「いや、僕はリアムみたいに大岩を砕けないし、兄上みたいに斬撃を飛ばすこともできないから」
「それは比べる相手がおかしいのよ。普通の騎士はそんな剣技は使えないわ」
「そうですな。ウィリアム様は騎士団に入れば主力となるでしょう。ただ生産者としての役割が優先されますので」
そうなのかなあ。僕は戦うのはどうも苦手意識が強いのだけれど。
「さて、そろそろ引き上げますかな」
「そうだね、思わぬ強敵と出くわしたしね。ソフィーも魔力をだいぶ使っただろうし」
「そうですね。テンペストはあと1回撃てるかどうかです」
「魔法剣はあまり魔力は使わないけれど、私もそれなりに魔力が減ったわ」
「じゃあ引き上げよう。ただ採取もしたいから、来たときとは違うルートを通っていいかい?」
みんなは別ルートで帰ることを了解してくれた。
警戒しながら進んだけれど、幸いにも魔物は現れない。
さっきの魔猪の群れがいたせいで、他の魔物はこのあたりから離れていったのかもしれない。
しばらく進んでいると、テオが立ち止まった。
「どうしたんだい? テオ」
「師匠、あれを見てください」
テオが指さす方向を見ると、不思議な光沢のある石があった。
「何だろう? 見慣れない石だね」
鑑定してみると……ミスリルだった!
「おお、ミスリルだ!」
ついに見つけた。
近づいてみると、ミスリルの鉱脈が露出しているみたいだ。
「リアム、レティ、ソフィ、ミスリルを発見した!少し待っててくれるかい?」
「なんと、ミスリルですか」
「それは凄いわね。このあたりの樹海にもミスリルの鉱脈があったのね」
「お兄様、大発見です!」
みんなも喜んでくれた。
ミスリルで何を作ろうかな?
魔力を通しやすいことでミスリルは知られている。
革や鉄に付与魔法で付与できる特性は二つが限度だったけれど、ミスリルなら三つ以上付与できるんじゃないかと期待しているんだ。
それに、もう一つ作りたいものもあるんだ。
僕とテオの収納できる限りミスリル鉱石を採取すると、急いで樹海の外に戻った。
思わぬ強敵と出くわしたけれど、大きな収穫もあったのは嬉しい。




