第70話 ロゴマークを付けよう
フェアチャイルド家の工房はウィル&フェローズ工房と名乗ることになり、ロゴマークも決まった。
ロゴマークはウィル&フェローズ工房で作る物だけじゃなく、うちの工房でデザインして街の工房で作っている物にも付けることにした。
オリヴァーは「うちとライセンス契約をした街の工房にはロゴマークの使用を認めます」と言っていて、アカシックレコードで知識を得たライセンス生産の仕組みを導入するようだ。
最近はアカシックレコードの接続時間をごく短く、原則として一日一回にすることでオリヴァーは倒れなくなったし、強力なスキルだと思う。
ロゴマークを付ける鞄やアクセサリーは工房がデザインしているけれど、一部の高級品を除いて、街の工房に作ってもらっている。
これまでは街の工房から謝金という形で受け取っていたものがライセンス料になった感じだ。
不満に思う人たちが出ないか心配にしたけれど、
「これまでずっと領主様の工房にお世話になって、十分な謝金を払えているのか心配だったから、きちんと料金にしてもらって安心しました」
「ロゴマークを使わせてもらえるのはありがたい。ライセンス料なんて安いもんですよ」
といった声ばかりだったので安心した。
そのあたりをオリヴァーに聞くと、「ライセンス料は低めに設定してありますからね。それでも相当な収入になりますけど」ということだった。
ウィンウィンの関係になっているなら良かった。
ちなみにロゴマークが浮き彫りになった小さな金属板は、ライセンス生産分も含めて、うちの工房で生産スキルを使って作っている。
この小さな金属板は凄く凝った作りでお洒落だと評判だし、ブランドイメージの向上にも役立っているみたいだ。
実はロゴマークを示す小物はどんなものがいいか、工房のみんなで先日試作したんだ。
革を使う者もいれば金属板を使う者もいて、いろんな案が出て来た。
みんなでいろいろ言いながら一緒にモノを作るのは楽しかったな。
最終的に採用されたのは、最近ドワーフの村からうちの工房に入ってくれたコンスタンディノスの作った物だった。ちなみに愛称はコンスタンだ。
コンスタンはまだまだ未熟な若い職人だと族長さんは言っていたけれど、やはり金属細工となるとドワーフの腕は良い。
「うん、コンスタンの作ったプレートはなかなか良いね」
テオも満足そうだ。
それからみんなでコンスタンのプレートを再現できるよう練習した。
僕がすぐにできないのをみんな意外そうな目で見ていたけど、何でもできるわけではないんだよ。
このプレートを作るにはそれなりの技能が必要だ。
「オリヴァー、これなら大丈夫そうかな?」
「ええ、これなら簡単に偽造できないでしょうし、偽造できるほど腕の良い生産者なら真っ当に稼ぐことを選ぶでしょう」
実はロゴマークをオリヴァーが提案したのは、うちの工房製だとうたう偽物が出回ってきたこともある。
僕の周囲は幸いにも良い人ばかりだけれど、残念ながら悪い人もいる。
「しかし、偽造の話をするとウィリアム様が傷つくのではないかと心配しましたが、落ち着いて受け止めておられますね。」
「古老さんからも聞いたと思うけれど、僕は転生者だから大人の記憶もある。残念だけど、元の世界には悪い人も多かったんだよ。」
ただし、職人さんたちが偽造の話を聞くと悲しみそうだから、この話は僕とオリヴァー、そしてテオの間だけで止めている。
使徒でもあるテオに隠し事はしたくなかった。
まだ子どもなのに親を失くしたり苦労しているテオは淡々と偽造の話を受け止めてくれた。
「ところでオリヴァーこそ、まだ若いのに人の悪意を感じるのはつらくないのかい?」
「あはは、商人をしていますと人の悪い面をたくさん見ますので」
「そうなんだね」
「ええ、ですからウィリアム様の周りの善意に充ちた人間関係はとても眩しく思いますし、美しくて素晴らしいと思います」
オリヴァーの言うとおりだな。僕は恵まれている。
改めてフェアチャイルド家に生まれて良かったと思うし、優しい人たちを守っていきたいとも思う。
これまで父上と母上をはじめ、いろんな人に守られてきた。そのことの恩返しの意味も込めて、これからは僕も周囲の人たちを守っていきたいと思う。
今日から毎日一話ずつ投稿します。




