第47話 防具を作ろう
このところ、いろいろあって嵐のような日々だった。
だから対応できていないけれど、ずっと気になっていることがある。
それは、ドワーフに続いてエルフも樹海から逃げて来たのだから、樹海の奥で魔物の脅威が増しているだろうことだ。
リアムや騎士たちに聞いてみると、この辺りの魔物に大きな変化はないらしい。
でも、何かあってからだと遅い。
生産スキルで何ができるか考えて、防具を作ろうと思っていたんだ。
僕も剣を作れないわけじゃないけど、ドワーフの鍛冶師が鍛えた剣のほうが品質は良い。
どうも武器を加工するのはあまり得意じゃないみたいだ。
樹海の魔物は牙や爪で攻撃してくるほか、体当たりもしてくる。
騎士たちは平地だと重いプレートアーマーを身に着けているけれど、樹海の中では動きにくいので比較的軽いチェインメイルを使う。
ただしチェインメイルは打撃を十分に防げず、刺突にも弱い。樹海の魔物は魔猪のように突進してくるものがいるし、牙や爪がチェインの隙間を通ることもあるとリアムから聞いたことがあった。
隙間を小さくするためにチェインを編むリングを細くするのは技術的に難しくて、作ろうとしたら高価になるようだ。
だから樹海の動物の丈夫な革を使って、チェインメイルの下に着る革鎧を作ろうと思う。
革は使い慣れた素材だ。
いつもは革の加工に生産スキルを発動しているけれど、なぜかできる気がしたから、今回は素材の皮を丈夫にするイメージで生産スキルを発動してみる。
素材の革を置いて、魔物の打撃や刺突に耐えられる革鎧をイメージする。
騎士やエルフたちを危険な魔物から守りたい。
そう願って生産スキルを発動すると、魔力が手の先に集まり、手の平の上に綺麗な魔法陣が浮かんだ。
温かい光が消えた後、革鎧が現れる。
見た目は普通のものと変わらない。
でも鑑定してみると、『樹海の鹿皮の鎧:打撃耐性(付与)、刺突耐性(付与)』と出た。
やった! 僕は拳を握る。
だけどこれは付与?
何となくできそうな気がして、実際にできてしまったけれど、もしかして付与魔法を使えたのかな。
そういえば普段と違って、ごっそり魔力を持っていかれた感じもある。
「ウィリアム様、今、お体が光りました。何だか神々しい光でしたよ」
「ええっ!」
どういうことだろう? 僕もテオみたいに覚醒したのかな。
エルフの古老さんに聞いてみよう。
それにしても隣にテオしかいなくて、他の職人さんたちがいないときで良かった。
急に光り出すなんて、みんなびっくりするだろうし、どう説明したら良いか思いつかないよ。
思い出してみると、テオが覚醒して光ったときも近くに人がいなくて良かった。
そうそう覚醒することはないと思うけれど、人に見られないような作業場所も必要かもしれないな。
次の日、テオと一緒にエルフの隠れ里に行って、付加魔法を使えるようになったときに体が光ったので、僕も覚醒したかもしれないことを古老さんに話した。
「そうでしたか。救世主様も成長すると聞いていますが、使徒と同じように覚醒したという話は聞いたことがありません。」
えっ、そうなんだ。
「ただ、使徒の人数が増えるたびに強くなっていった救世主様もいたと聞きます。ウィリアム様も使徒が増えるほど成長するのかもしれませんね」
もしそうだとすると、テオが使徒になってくれたおかげで僕も覚醒できたことにになる。
救世主と言われても、僕にはたいして凄い能力はないけれど、少しずつ成長できると良いのかな。
付与した素材で作った革鎧はきっと性能が良い。
ただし問題もある。
以前うちの図書室で読んだ本によると、付与魔法師は人数が少なかったような気がする。
二つの耐性を付与された革鎧が大量に出回ると問題になるかもしれない。
どうするか周りに相談したほうが良いだろう。
そう思って、騎士団の訓練所に行って団長のリアムに革鎧を見せた。
「おや、ウィリアム様。この皮鎧はお作りになったものですか?」
「うん。実は少し特殊な革を使ったんだ」
小声で事情を説明すると、「何ですと!」とリアムは大声を出した。
何事かと周囲の騎士たちが集まってくる。
「ああいや、何でもない、皆、訓練を続けるように。」
そう言って騎士たちを解散させると、リアムは小声で謝罪してきた。
「ああ、すみません。ウィリアム様、つい大きな声を出してしまいました。しかし、打撃耐性と刺突耐性が付与された鎧とは。これは非常に貴重なものですな」
「そうなの?」
「ええ。付与魔法師の数は少ないですし、普通は付与できるのは一つの特性だけなのですよ。二つの特性が付与された鎧は希少です」
そんなレアな物だったとは……。
これは、あまり出回らせてはいけないのかもしれないな。
でも魔物の脅威が増したときには必要になると思う。
どうするか父上に相談しよう。
「うーん、確かにこれは貴重な鎧だね」
執務室にいる父上に事情を話したところ、腕組みをして考え込んだ。
「ウィルの言うとおり、魔物の脅威に備える必要があるし、これが役に立つものなのは間違いないけれど、凄く目立つ物ではあるね」
そうすると、この鎧が出回ると誰が付与したのか話題になるな。
そして僕が作ったとなると騒ぎになりかねない。
僕は田舎でのんびり暮らしたいから、目立つのは避けたい。
「ちなみにどれくらい作れるのかい?」
他の職人たちは付与ができないから、僕と複製ができるテオしか作れない。
「他の物を作らずにこれだけ作れば、テオと僕で一日に10着くらいでしょうか」
家を建てるのと同じくらい魔力を必要とするから、多くは作れない。鎧は小さいのにね。もっとたくさん作れるといいんだけど。
でも父上の反応は違った。
「そんなにたくさん作れるのかい? そのことは秘密にした方がいいね」
ええっ? 付与魔術師はもっと簡単に付与するのかと思った。
父上と相談した結果、量産するのは止めておいて、取りあえず20着作っておくことになった。




