第46話 久しぶりの我が家
ようやく家に帰ってきた。
王都では予想外のことがたくさんあって、帰宅したときには疲れ切っていた。
母上と妹にただいまと言ったあと、そのままベッドに倒れ込み、夕食も食べずに眠ってしまった。
翌朝起きて朝食の席に着くと、母上と妹には父上が話をしてくれていたみたいだ。
父上はタフだな。
「おはようウィルちゃん、お疲れだったわね。よく眠れたかしら。お父さんから話は聞いたわ。フローラ殿下を元気付けたのは立派だったわね。」
あはは、爵位よりも人助けの話をするのは母上らしい。
「お兄様は男爵になるのですね。大人になる前に爵位を得るとは凄いです。驚きましたわ」
うん、ソフィの話は常識的だ。
「僕も驚いているよ。強い魔物を退治したわけでもないのにね」
「はっはっは、エドガー二世が賢王と名高いのは、視野が広いからでもある。陛下は内政の重要性をよく理解されているからな。剣と魔法のことしか考えていない頭の古い貴族とは違う」
朝食の後で、父上の執務室で報奨金の話をした。
父上は報奨金の白金貨1000枚のうち半分は僕が使うようにと言ってくれた。
でも僕は褒美として爵位をもらうことになったから、フェアチャイルド家の褒賞は父上が使うべきだと主張した。
それでも功績は僕のおかげだと父上は言い張るので、話し合った結果、工房で白金貨300枚を使うことになった。
白金貨300枚で3億円か。イメージのわかない大金だ。前世でそんな大金にはまったく縁がなかったと思う。
何に使おうかな。
工房に行って、テオとメイベルから留守中の様子を聞いた。
順調にストレプトマイシンと注射器を生産できているようだ。
取り敢えず、頑張ってくれている工房の職人さんたちの賃金を上げよう。
あとは、今の工房は手狭になってきたから新しく建物を建てようかな。高級な建材もいっぱい使えるな。
でも、疲れたから新しい工房を立てるのは先のことにして、少しゆっくりしよう。
僕は久しぶりにノーザンフォードの街をぶらぶら歩いた。
騎士団長のリアムが護衛しようとするのを大げさだと止めて、護衛は若い騎士二人だけにしてもらった。
今では僕も身体魔法はそれなりに使えるから、もし何かあったときに逃げることくらいできる。
うちの領都は新しい建物も増えて、人も増えて随分賑やかになったな。
露店の数も増えた気がする。
けれど、王都に比べるとゆっくりと時間が流れている。
他の貴族の馬車なんか滅多に通らないし、のんびりできるなあ。
そうだ、お金をたくさんもらったから、モノ作りに協力してくれているエルフとドワーフに、足りない物はないか聞いてみよう。
そう思ってエルフの隠れ里を訪ねたら、救世主様に協力するのは当然だと言われた。
それでも恩返しをしたいと言ったのだけれど、フェアチャイルド家には十分よくしてもらっていて、足りない物はないと言われてしまった。
逆にルーナから「お疲れのご様子ですね。少しゆっくりしていきませんか」と言ってもらい、ハーブティをご馳走になったうえに、ハンモックで一息入れるよう勧められた。
エルフの隠れ里は静かで、木の葉が風に揺れてさやさやと音がするくらいだった。
微かに揺れるハンモックは心地よくて、少し休むだけのつもりが、つい昼寝をしてしまった。
協力の御礼をしに行ったのに、さらにお世話になってしまうとは。
次にドワーフの村に行った。
国王陛下からたくさん褒美のお金をもらったから、おすそ分けをしたいと言ったのだけれど、「メアリー様が回復なさったことが十分儂らには褒美になっとる」と言って受け取ってくれない。
それどころか良い猪が狩れたといって、串焼き肉を持たされてしまった。「テオと一緒に食べてくれんか」と言われると断れない。
ぐぬぬ、御礼を受け取ってもらえないどころか、お土産を持たされてしまうとは。
エルフもドワーフも、次こそは御礼を受け取ってもらうからね。




