第44話 王都からの脱出?
フローラ殿下との話が終わったので僕は陛下や父上のいる会議室に戻ることにした。
すると、なぜか殿下が「私も同行します」と言って、ついて来た。
会議室をノックすると「どうぞ」という答えがあり、メイドさんが扉を開けてくれた。
「おお、話は終わったかな……おや、フローラ?」
陛下はフローラ殿下が僕について来たことに驚いたようだ。
「はい、お父様。ウィリアムさんからとても参考になる話を聞くことができましたわ。明日から商人たちに商業スキルのことを教えてもらおうと思います」
「お、おお、そうか。それは良かったな」
フローラ殿下は優雅に一礼して去って行った。
殿下の姿が見えなくなるとすぐに陛下が駆け寄ってきて、僕の肩を揺すった。
「凄いな、ウィリアム君! いつも憂鬱な顔をしているフローラがあんなに明るく前向きになるなんて。一体どんな魔法を使ったのかね?」
陛下の勢いに気圧されるながら僕は答えた。
「いいえ、私は魔法など使えません。知り合いの商人の息子が教えてくれた商業スキルの良さをお伝えしただけです」
「ほう、君は商業スキルを良いスキルだと思うのだね」
僕は陛下にフローラ殿下にしたのと同じ説明をした。
「なるほど、そう説明されると納得できるな。セオドアは知っていたのか?」
「私も知りませんでしたが、最近息子から聞きました」
「そうか……宰相、我らは一体何をしていたのであろうな。商業スキルは貴族の役には立たないと決めつけ、その有用性を考えようともしなかった」
「そうですね、陛下。臣もウィリアム殿の言葉に目から鱗が落ちる思いです」
その後、フローラ殿下を元気づけた礼をせねばとおっしゃる陛下を父上と一緒におしとどめ、王城を辞去した。
フェアチャイルド家の邸宅に戻ると、僕は大きく息をついた。
「はあ、やはり王家の人たちと話すと気疲れしますね」
「いやいや、ウィル。あれだけ堂々と陛下の前で話し、王女殿下の信頼も得ておいて、何を言ってるんだい?」
「そうでしょうか?本当に疲れたのですが。私は失言をしていなかったでしょうか」
「私の見るところ失言などなく、この上なく上手に話していたよ。どうやら疲れているのは本当のようだね」
父上はぐったりした僕の顔を見て苦笑しつつ、労ってくれた。
「今日はぐっすり眠るといい。明日の朝は早いうちに王都から逃げ出すからね」
「えっ、どうして逃げ出すのですか?」
王都の市場とか楽しみにしていたんだけど。
「貴族というのは、特に王都にいる貴族は情報を掴むのが早い。ウィルが陛下から男爵位を約束されたこと、第四王女を元気づけて陛下がお喜びになったことは、すぐに伝わると思うべきだろう」
「あの場には宰相と王城の使用人しかいませんでしたが」
「ははは、王城のメイドたちはどこかの貴族につながっているんだ。もちろん秘密の話をするときは使用人が近寄れないようにするんだが、普段は王城で起きていることは貴族たちに筒抜けだと思うべきなんだ」
「そうだったのですか」
「ぼやぼやしていると、王都の貴族たちから会食の申込が殺到するぞ。いや、うちに押しかけてくる者たちもいるだろうな」
「いきなり押しかけてくるんですか?」
「ああ、近所まで来たのでご挨拶を、とか成果を挙げたウィルの話を聞きたいとか言ってな。こういうときは貴族というのは押しが強くなる生き物なんだ」
それは何だか恐ろしいな。
翌朝、空が白み始める頃に父上と僕は王都のフェアチャイルド邸を出発した。
上級貴族のエリアを抜ける頃に、何台かの馬車とすれ違った。
こんな早い時間にもう出かけるのかな。
「子爵家や男爵家の馬車だな。多分うちに向かっているんだ。相手が屋敷に来てしまうと無下にもできないし、危ないところだったな」
そうなんだ。王都の貴族は何というか凄いな。
王都を出た後も、普通の宿に泊まると、その町を治める貴族が寄って来ると面倒だということで、宿に泊まらなかった。
どこに泊まったかというと、野宿ではなくて、街道のところどころにある王国騎士団の詰所に泊まったんだ。
王家が急用やお忍びで移動するときに使う部屋を借りたので、広くはなかったけれど、思ったより快適に泊まることはできた。
父上によると、僕が殿下と話している間に陛下とお話をする中で、帰りは大変だろうから使って良いと言って頂いたらしい。
はあ、何だか大変な旅になった。
のんびり王都を観光できる日は来るんだろうか?




