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【書籍化】生産スキルで内政無双~辺境からモノづくりで幸せをお届けします~  作者: スタジオぞうさん


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第39話 ガラスの注射器を作ろう

 薬の増産は目途がついてきたから、次は量産できる注射器を作ろう。

 前世で見た注射器はプラスチック製だったけれど、石油からプラスチックを作るのは無理そうかな。


 そもそもこの世界では石油を見たことがない。

 だから、ガラス製の注射器にしよう。昔の注射器は注射筒もピストンもガラス製だったみたいだし。


 ただし、この世界にもガラスはあるけれど高価だ。

 ガラスを作るには材料を1000度以上で溶かす必要があるから、高温が出せる炉などの設備や燃料のコストがかかる。

 

 でも材料を揃えれば生産スキルで作れるんじゃないかな。

 薬を広めるには安い注射器が必要だ。


 ガラスの原料は珪砂とソーダ灰、石灰石だったかな。

 珪砂は石英の粉末だ。砂浜で入手できるけれど、うちの領地は海に面していないから手に入りにくい。

 

 珪砂を使わない方法は何だったかな。確か植物からガラスを作ることもできたんじゃなかったかな。

 そうだ、ガラスの材料になるのはススキだ。


 意外な材料だったから印象に残っていた。どうやらススキはケイ素を多く含んでいるらしい。

 ススキを見たことはないけれど、領内に生えているかな。


 聞いてみたら、使用人たちや工房の職人たちも知らなかった。

 それなら、もしかして植物に詳しいエルフならと思って聞いてみたら、さすがエルフ、ススキによく似た植物が樹海の浅い所に生えていることが分かった。 


 いつの間に調べたんだろうと思ったら、森の民であるエルフは、樹海でも弱い魔物しか出ない浅い所はよく散歩しているらしい。


 エルフに教えてもらった場所に行ったら、幸いなことにたくさん生えていた。

 早速、収納魔法でたくさん持って帰る。


 一部は工房の裏に植えてみた。

 あとは普通の砂だ。珪砂じゃなくても良いから、近所の川岸の砂を採ってくる。


 工房にススキと川砂を持ち込み、注射器をイメージして生産スキルを発動する。

 温かい光が消えると、注射筒とピストンが出来た。


 本当はゴムがあった方が良いけれど、ゴムの木は気温の高い所じゃないと育たない。記憶を辿ると、昔の総ガラス製の注射器はゴムを使っていなかったから、何とかなるかな。


 薬のときと同じように、ガラスの注射器の作り方を工房の職人たちに説明する。

 そして試行してもらうと、テオはすぐに作ることができた。


 他の職人たちは、ガラスは作れるものの、うまく成型できないことが多いみたいだ。

 何度か試して工夫した結果、まずススキと川砂からガラスの塊を作って、その次にガラスの塊から注射筒とピストンを作ると上手くいくようだった。

 

 ススキと川砂からガラスを作るには本当は高熱を加えないといけないから、さらに成型した注射筒とピストンまで一気に作るのは難しいのかもしれない。

 それから、出来上がったガラス製の注射器は透明度の低いものも多かった。


 注射器は観賞用じゃないから問題ないけれど、見た目の美しいガラスは炉を使って作ったほうが良いのかもしれない。

 そのうちガラス工房も建てて、綺麗なグラスや色ガラスを作ったステンドグラスも作ると楽しいかな。


 注射器の先の鉄製の針はドワーフが作ってくれた。やはり金属の加工は得意みたいだ。

 ともかく、どうにかガラスの注射器を作ることもできた。

 これで薬を広めることができそうだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――

於:王都のとある場所 ?の視点


「そう、私と同じで剣術スキルも魔法スキルも授からなかった貴族の子が生産スキルで活躍しているのですか。そんな人もいるのですね」

「ええ、学園でも話題になっているの。貴方も諦めずに頑張ってみたらどうかしら?」


「お姉様、私はもう諦めました。授かったスキルを伸ばそうと思ったこともあるのですが、私がスキルの名を口にすると、軽蔑や同情を受けるばかりで、スキルの伸ばし方を教えてくれる人はいませんでした」

 私の言葉を否定できず、お姉様は苦しそうな顔になる。


「この世界では剣と魔法しか相手にされないのに、軽視されていた生産スキルを伸ばした人は立派だと思いますわ。でも私のスキルは伸ばしようがないのでしょう。


 私が家の役に立つためにできるのは、お父様の決めた相手に嫁ぐことだけです」

 周囲の皆は私のことを美少女だとか、将来は凄い美人になるとかいうけれど、それは外見だけのこと。


 私が授かったのは、剣でも魔法でもなく商業スキルだった。

 最初は商業スキルを頑張って伸ばそうと思った。


 参考になる本を読んだり、詳しい人に教えてもらったりしようとした。

 けれど役に立ちそうな本は見つからず、教えてくれる人も見つからなかった。


 途方に暮れているうち、「金を儲けるスキルを授かったそうよ」とか「卑しいスキルを授かるなんて」とか陰口を言われていることに気付いた。


「剣も魔法も使えない」と馬鹿にされ、ただ見た目だけを褒められるうちに少しずつ私は削れていき、だんだん空っぽになっていった。


 今の私は中身のない人形のようなもの。



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