第26話 エルフたちの家を建てよう
エルフたちの家を森の中に建てることになった。
まずエルフたちに住みたい場所を決めてもらう必要がある。
でも、その前にドワーフたちに挨拶して良いかと聞かれたから、ドワーフの村に案内した。
エルフたちの姿を見ると、ドワーフたちは顔を綻ばせた。
「おお、お前さんたちも無事じゃったか。良かったわい」
「ドワーフの皆さん、お久しぶりです。どうにか樹海から逃げてこられました。
教えて頂いたとおりに領主は良い方で、私たちも受け入れて頂けました」
「ああ、ここの領主は素晴らしい人格者じゃ。
樹海から逃げるんは大変じゃったろうが、もう安心してええ」
エルフとドワーフは再会を喜んでいる。
前世で読んだ小説だと仲が悪いことも多かったけれど、この世界では仲が良いみたいだ。
家令のスミスと相談して、ノーザンフォードの周辺で、近くに人の住んでいない森をいくつか候補として選んだ。
そんな候補がいくつもあるのは、辺境で領地が広く、人口密度も低いからこそ。
田舎の良さもあるものだ。
候補地を案内すると、エルフたちは樹齢の高い大木の多い森を選んだ。
大きな木があるほうが安心するのだそうだ。森の民らしい。
「家はどのあたりに建てますか?」
森の真ん中の木を切って広場を作るのかなと思っていると、エルフたちが魔法を唱えると木がズズっとずれて広場ができた。
エルフは独自の精霊魔法を使い、その中に木の位置をずらす魔法もあるんだそうだ。
森の民であるエルフは木工もするけれど、できるだけ木を伐らずに済ませたいらしい。
「それでは家を建てますね」
どんな家が良いのか聞いたら、ドワーフの家と同じような感じで良いらしい。
でも暖炉は要らないそうだ。
エルフはこの世界でも火が好きじゃないみたいだ。
収納魔法で運んできた材料を出すと、エルフたちはどよめいた。
「こんなにたくさん収納できるのですか?」
「とても人族とは思えない魔力量です」
どうやら僕の魔力量はエルフから見ても多いらしい。
ドワーフの家を建てたときと同じように、ログハウスをイメージして集中すると手の先に魔力が集まって光り、手の平の上に魔方陣が浮かぶ。
その状態のまま集中を続ける。
「凄い集中力ね。子どもとは思えないわ」
やがて材料を包んだ温かい光が消えると、そこにはログハウスが建っていた。
「おお! こんな一瞬で家を建てるとは」
「凄い魔法ですね」
一息入れて、また集中して家を建てる。
ドワーフたちの家を建てたときから、さらに魔力量が増えたのか、今回は五軒建ててもまだ余裕がある。
エルフは人目につかないよう宿に泊まるのを避けるから、みんなテント住まいだ。
夏だから夜も寒くはないけれど、できるだけ早く家を建ててあげたい。
今回はテオに手伝いも頼んでいるし、もう少し頑張ろう。
テオは僕の作った家と同じものを作れるし、魔力量も普通の人よりかなり多いから、一日に数軒建ててくれると思う。
そんなことを考えていると、ちょうどテオがやって来た。
「師匠、お待たせしました」
「いや、急に呼び出してごめんね」
そして、どんなふうに家を建てるのかテオと話していると、ルーセリナが駆けよって来た。
「テオ、貴方も無事だったのね!」
「ルーナじゃないか! 君も無事だったんだね、良かった」
「おお、二人は知り合いだったんだね」
ドワーフとエルフは交流があったんだから不思議じゃないかな。
そう思っていたら、さらに事情があった。
「ええ、テオも私も族長の子どもですから」
「えっ、テオはドワーフの族長の息子さんだったの?」
「はい。一人のドワーフとして修行したかったので、お話ししていませんでした。
今は叔父が族長の役目を果たしてくれていますし。これまで黙っていてすみませんでした」
「そうだったんだ。これまで気安く接してて悪かったかな?」
「とんでもないです。師匠も師匠のご家族も僕にはよくしてくれました。
お願いですから、これまでと同じように接してください」
聞いてみると、今の族長であるテオの叔父さんは鍛冶が苦手なことをテオが悩んでいたのを知っていたから、前族長の息子が人族に弟子入りすることに賛成してくれたらしい。
「ルーナ、君のご両親は?」
「樹海から逃げるときに囮になったわ。皆を心配させないように、はぐれたことになっているけれど」
「そうか。うちの両親と一緒だね」
「やはり貴方のご両親も?」
「うん、族長としての務めだからね」
そうか、『はぐれた』というのはそういう意味だったんだ。
後で父上に聞いたら、ルーセリナの話を聞いたときに、そういうことだろうと思ったそうだ。
テオの両親についても、もしかしたらと思っていたそうだ
僕は気付いていなかった。
まだまだ未熟だなあ。
その後、僕はもう二軒家を建てて、テオは三軒建ててくれたので、一日に十軒建てることができた。
「こんなに早く家を建ててもらえるなんて、想像していませんでした。本当にありがとうございます。
テオ、貴方も随分生産スキルが上達したのね」
翌日、またテオと森にやってくると、一人のエルフの女性が遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、もし可能なら、お願いしたいことがあるのですが」
「どんな願いでしょうか?僕にできるかどうか分かりませんが、どうぞ遠慮なく言ってください」
「ありがとうございます。木の上に家を建ててもらえると故郷と同じように住めるので嬉しいのです」
おお、ツリーハウスか。
ネットで見たことがあるな。
「うまくいくかどうか保証はできませんが、やってみますね」
依頼してきたエルフに頼んで、地面にイメージ図を書いてもらう。
やはり前世で見たツリーハウスみたいだった。
家の作りは普通のものと似ているけれど、木の上に建てるから基礎はいらない。
大きな枝が分かれているあたりに床を組んで、その上に建てていく形かな。
ツリーハウスで森と共生して暮らすエルフをイメージして集中すると、手の先が光り、魔方陣が浮かぶ。
材料を包んだ温かい光が消えると、近くの大木にツリーハウスが出来ていた。
「ああ、ありがとうございます。これで故郷を離れた不安が和らぎます」
エルフの女性は何度も頭を下げた。
やってきたルーセリナも頭を下げるので、「もう十分御礼は言ってもらいました」と言って顔を上げてもらう。
エルフは七十人くらいだけれど、ドワーフよりも家族の人数が少なくて一家族あたり二~三人のようなので、今回も三十軒必要だ。
そこで普通の家を二十二軒、ツリーハウスを八軒建てることにした。
テオはツリーハウスを作る自信はまだないようなので、普通の家に専念してもらう。
翌日も家を建てに来て、夕方までに最後の一軒を建て終わった。
「まあ! こんなに早くみんなの家が建つなんて。これで普通の暮らしに戻れそうです」
「本当にありがとうございます。貴方の生産スキルは素晴らしいです」
「まるで救世主様のようです」
エルフたちから次々に感謝された。
うん、やはり生産スキルは良いものだ。
気になる言葉が混じっていたような気がするけど、きっと気のせいだよね。




