第102話 魔法石の使い道
エリカ先生にコツを教えてもらって、どうにか魔法石を作ることができた。
火の魔力を注いで作ったから、赤い魔法石になっている。
それはいいんだけれど、どうも先生が昨日作ってくれたものに比べると輝きが強い気がする。
考え込んでいると、先生が教えてくれた。
「やはりウィリアムさんの作った魔法石のほうが輝きは強いですね。実は魔力を多く籠めるほうが魔法石の質は高いのです」
「そうなのですか?」
「ええ、鑑定してみてください」
鑑定してみると、『魔法石(火):高品質』と出た。
「先生、高品質の魔法石になっています」
「やはりウィリアムさんが作ると品質が高くなりましたね。魔力量の多い人は自然と多くの魔力を魔法石に注げるようなんですよ」
「そうだったのですか」
「火の魔法石が作れたら、他の属性の魔法石も同じように作れます。ひととおり作ってみましょうか」
「はい、先生」
それから火の魔法石と同じようにして、風の魔法石と水の魔法石、地の魔法石を作った。
先生は僕の作った魔法石を鑑定して、満足そうに頷いた。
「どれも高品質ですね。素晴らしいです」
「ありがとうございます」
魔力量が多くて良かった。神様には改めて感謝だな。
魔法石は爆発しやすいので、慎重に綿でくるむ。
そして、半球状の鉄の器に入れて、もう一つの半球状の鉄をかぶせて球にする。
「これで爆弾の完成です。今回はシンプルに一つの属性で作りましたが、火の魔法石と風の魔法石を組み合わせると威力が大きくなることが分かっています」
なるほど、火と風と二つの魔法石を使うと強力になりそうだ。
魔物の怖さは分かるから、爆弾は必要だと思う。
でも、魔法エネルギーを生産スキルで扱えるとしたら、生活に役に立つ物も作れるんじゃないかな。
「どうかしたのですか?」
考え込んでいるとエリカ先生に聞かれた。
「ああ、すみません、先生。爆弾が魔物対策で必要なのは分かるのですが、生活に役に立つ物も作れないのかなと思ってしまって」
「なるほど、優しいウィリアムさんらしい発想ですね」
「魔法石を生活の道具に使ううえで、課題は二つあります」
先生は指を2本立てた。
「一つは衝撃を与えるとすぐに爆発してしまうこと。もう一つは魔法石の材料になる空っぽの石が希少なことですね」
「その二つの課題をクリアしないと生活のための道具に使えないのですね」
資源が希少なことはすぐに解決できない。
でも衝撃を与えると爆発することの対策は、ニトログリセリンを安定させるのと同じ方法が使えるかもしれない。
僕は先生に確認してみた。
「先生、魔法石は石と呼んで良いかどうか疑問があるとおっしゃっていましたが、もしかすると魔法石の中身は液体ではないでしょうか?」
「よく分かりましたね。実は魔法石の中は液体のようです。以前にうっかり魔法石を割ってしまったとき、中身は液体だったという証言が残っています」
「少しの衝撃で爆発と聞いて、もしかしてと思ったんです。中身が液状なら、試してみたいことがあります」
「まあ、どんな方法でしょう?」
僕は魔法石の中にある液体を多孔質の物に吸収させるアイデアを話した。
もとの世界で、ニトログリセリンは珪藻土に吸収させると安定すると聞いたことがある。
「多孔質の物に吸収させるのですか。面白いアイデアですね。さすがウィリアムさんです」
いや、前世の知識があるだけです。褒めてもらうと何だか申し訳ないと思う。
「ただし実験には危険がありますね。この工房は厚い鉄板で囲まれていて、爆発しても外部への影響があまり及ばないように設計されていますが、王城で爆発するのは避けたいですね」
「いえいえ、ここで実験しようと提案したわけではありません」
「うふふ、冗談ですよ。実験は開けた広い場所で行うほうが良さそうですね」
エリカ先生が冗談を言うとは。ちょっと驚いた。
「では、ノーザンフォードに戻ったら、広い場所で実験することにします」
「いいえ、この実験は私がしましょう」
「えっ、先生がですか?」
「将来のある貴方に危ない実験はさせたくありません。結果は伝えますし、発案者がウィリアムさんであることは陛下にお話をします」
「お気遣いありがとうございます。でも僕もエリカ先生に危険な実験をしてほしくありません。それから発案者の件は、僕はもう目立ち過ぎていますから、先生が発案したことにして頂いても」
「いいえ、危ないことは年寄りに任せてください。それにこのアイデアは画期的です。私は弟子の手柄を奪うようなことはしたくありませんよ」
先生にそう言われると、頭を下げるしかなかった。
「分かりました。でも、どうかお気を付けください」
「ふふ、私もまだ死にたくありませんから気を付けますよ。ウィリアムさんのこれからの活躍を見届けたいですからね」
さらっとエリカ先生は嬉しいことを言ってくれる。
エリカ先生が師匠になってくれて幸運だったと改めて思った。




