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怪石の呼び声  作者: 石田ヨネ
第二章 バッドシティ下関へ
9/40

9 壇ノ浦の戦いの時とか、けっこう大変だった

 と、西京が答える。

 流れる車窓の中、瑠璃光寺がスマホで『平清盛』やら『源平合戦』やらで検索しつつ、

「それでも、平清盛って、けっこうな勢いのあった人なんですよね? 異例の、スピード出世とか」

「うん。まあ、何って言うんだろうね? カリスマ性って、ヤツなんだろうかな? 当時の中国の、宋と貿易をしていてね、随分と、財力があったらしい。あとは、後白河法皇の隠し子だとかいう説が、あったり、なかったり」

「へぇ、」

「それから、都を福原に、遷都したりもしたらしいね。平安京の貴族とか、色んな人たちに、総スカンを喰らったらしいけど」

「それは、まあ、そうでしょうね」

「まあ、そんな感じでね、日宋貿易やらの海運による財力もあって、平清盛の平家は、この瀬戸内海に大きな勢力を持っていたみたいだね」

「でも、源氏との戦いでは、段々と劣勢になっていって、どんどん西へ西へと追い込まれていったんですよね?」

「そうだね。まあ、なんでそうなったのか――? 奇抜な作戦をとった源氏との、戦略の違いだったり……、あるいは平家側だったけど、もともと平家をよく思ってなかった地方の勢力からの、寝返りがあっただの、諸説あるみたいだけどね。ちなみに、九州のほうでも、あてにしていた勢力から支援が得られなかったとかも、あったみたいだね」

「じゃあ、壇ノ浦の戦いの時とか、けっこう大変だったんじゃないですか?」

「まあ、そうだろうね」

 と、ここで小休止する。

 西京が、残ったコーヒーを飲んでいると、

「ところで、平家物語って、誰が書いたんですかね?」

 と、瑠璃光寺が、また聞いてきた。

「そこが、あれなんだよね。源氏物語は、紫式部って作者が分かってるんだけどね。ちなみに、光源氏は、源氏を名乗っているだけらしいけど」

「実際は、ちゃうんすね」

「まあ、源氏物語も平家物語も、どちらもね、謎が多いと言えば多いんだけどね……、平家物語に関しては、作者自体が特定できてなくて、所説あるみたいなんだ」

「へぇ、そうなんですね」

 また、ここで、

「あの、兼好法師の、徒然草ってあるじゃない?」

「ああ……。あの、何か、お坊さんがギャンブルで勝った帰りの夜道に、何か妖怪に襲われて川に落ちたら、よく見たら飼っていた犬だったとかいう話……、覚えてますよ」

「何だい? そんな、微妙なところを覚えているのかい? まあ、確かに、賭け連歌みたいなことを、してたみたいいだね」

 と、西京は答えつつ、続けて、

「まあ、その徒然草の中でね、信濃の国の、行長っていう男が作者というように言及されていてね。この説では、その行長という男がね、盲目の僧たちに教えて語らせ、広まった行ったとされている。琵琶法師って、ヤツだね」

「ああ、何か、そんなのありましたね」

 と、瑠璃光寺が、琵琶法師をそんなの呼ばわりで相槌しつつ、

「ただ、それにしてもね……、そんな、けっこう長編の物語を編纂して、琵琶法師たちを通して広めるなんて、いち人間が思いついてできたのかって話が、当然出てくる」

「そうですよね。現代みたいに、簡単に、文章を書いて、広めれるわけじゃないですもんね」

「うん。だから、恐らくね……、行長という男が関わっていたにしろ、関わってなかったにしろ……、何か大きな力の働いた、プロジェクトみたいなものだったんじゃないかって」

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