6 刑事モノみたいにさ、鉄道に乗って、全国のけっこうな邪神やオカルトとかの事案を調べるわりには
『ああ……。まあ、俺を殺そうとしたのか、挨拶か知らねぇけど……、ああ……、あれは、たぶん、挨拶代わりみたいなものかもしれねぇな』
「はぁ、」
『まあ、てなわけでね? もしかすると、何者かが、何か、形状しがたい動機でね、何かをしようとしているかもしれないわけよ』
「……」
『そんで、とりま、さぁ? 松もっちゃんたちの方でも、ちょっと、何か調べらんねぇか? それか、いま暇してたらさ? アンタの旦那さんにでもさ?』
「元だっての、殺すぞ」
松本は、三度目の「殺すぞ」を口にしつつ、
「まあ、分かったよ。ちょっち、こっちでも調べてみるし……、あれだったら、現地に、西京のヤツらでも送れないか聞いてみるー」
『ああ、サンキュー。頼むぜ』
ーーと、ここまでが回想するところである。
「――てな、感じ」
松本は話し終えて、ソバをすする。
それから、グラスに残った、紫色をしたドクペをグイッと飲んだ。
「何だい? それで? 僕たちに、下関に行ってきてくれって話かい?」
「うん。そだよー」
と、松本はグラスを置いて、
「まあ、とりま、さ? うちらでも、少し調べっけどさ? 確かに、邪神や異常事象の関わる可能性も少しあるから……、ちょっち、ソバ食ったあとでもいいから、下関に向かえないかって頼み」
「え? 今から、ですか?」
と、瑠璃光寺玉が、「嘘でしょ?」の顔をする。
「食ったあとに、ちょっとってねぇ……、山手線で一駅、二駅とかみたいな感覚じゃないんだよ?」
西京太郎も、やれやれと呆れた様子で言う。
まあ、確かに、せめて名古屋や大阪ならまだしも、東京から新幹線で行けば軽く6時間以上はかかる本州の端である。
ふたりが、そう言うのも無理はない。
そんなふたりに、松本が、
「うん。だって、そのための調査室じゃん? アンタたち」
「いや、そうだけどさぁ、君、ねぇ……」
「てか? 刑事モノみたいにさ、鉄道に乗って、全国のけっこうな邪神やオカルトとかの事案を調べるわりにはさ? 基本、お前ら二人しか人員がいないって、けっこう舐めてるよな? お前たちの調査室も」
「いや、私に言われてもね」
「とりまさぁ? そういうわけで、めんどいかもしれんけど、食ったら、行ってきてよ?」
「ああ、分かったよ……」
「それで、土産も、何か買ってこいよな」
「やれやれ、君って人は、まったく――」
と、西京は呆れつつも、しぶしぶ頼みを受けることにした。