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【怪石の呼び声】  作者: 山口友祐
第五章 海峡の廻戦

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34 まるでドレーク海峡のように


          (2)

 


 かつて千年ほど前に合戦のあった壇ノ浦にて、海戦が始まる。

 ――ポンポン、ポンポン……

 と、音をあげながらも、勇壮に海峡を駆ける西京たちの船団。

 対するは、十倍以上は巨体の、最新鋭の艦艇群。

「フン、何をするのやら」

 宮本が鼻で笑い、

「容赦は、しなくていいですな……?」

「ああ、もちろんだ」

 と、問うアンコウに答える。

「やれ――」

 と、宮本が言うとともに、操られた自衛官、軍人たちが動く。

 すると、すぐに砲塔が西京たちのほうを向き、照準を合わせる。

 そうして

「撃てぇぇいッ――!!」

「ファイ、ヤァァッ――!!」

 などの掛け声とともに、

 ――ドォンッ――!! ドォンッ――!!

 と、いっせいに艦砲が火を噴いた。

 このままだと、そのまま木っ端みじんに、海の藻屑か魚の餌と消えてしまいかねない状況に、

「ふむ。初っ端から、仕方ない」

 と、宙に浮く妖狐が、何か発動の構えをとる。

 懐から、まるで昔話の花咲じじいのように取り出さんとする構えから、

 ――ファ、サァァ……!!

 と、何かを放つ。

 まるで、秋の紅葉の山の、風に散る“もみじ”の花吹雪――

 しかしながら、それらの花吹雪はゲーミング何とかのように光り輝きつつ、同時にそれらは、さながらCGか、空中ドローン・アートのように広がる。

 そうして広がった花吹雪は、シューティングもののシールドやバリアのようにして、光を放ちながら艦砲や機関砲の弾幕を無力化していく。

「な、なんと――!?」

 味方がたの舟からと、

「ば、バカなッ……!?」

 と、敵方の、宮本とアンコウたちの舟からも、「信じられない!」との声があがる。

 続けて、

 ――ニョ、キッ……!!

 と、海面からシュールなかっこうで、スーパーマリオのパックンフラワーみたいな巨大植物顔を出すや、

 ――ゴ、ワッ……!!

 と、何か粘膜を吐き出した!

 それらは、数隻の艦艇に向かって放たれるや、

「う、うぉぉんッ――!?」

「な、何だこれは――!?」

 と、甲板の兵たちの声があがった。

 粘液によって兵隊たちはもちろん、機関砲やミサイルの発射機構などもコーティングのように捕らえられ、無力化されてしまう。

「おおッ――! やったか!」

「タヌ、キツネさん――!」

 と、西京たちから歓声が上がりつつも、

「ていうか、私しか何かしてないだろ。いい加減にしろ、貴様たち」

 と、妖狐が露骨に嫌な顔をする。

 まあ、しごくもっともなツッコミでもあり、妖狐のお前だからこそできるわざだろとも言えるところだろう。

 そうして、次の艦艇を落とそうとするところ


 ――グ、ワンッ――!


 と急に、大きく船体が揺れ、持ち上げられる。

「キャッ――!?」

「る、るりさん!! 気をつけて――!!」

 驚き、投げ出されかける瑠璃光寺を西京がつかんで留めつつ、

「ヤツラの力だ!!」

「――!?」

 と、海面を見て呼びかける。

 そこにはあろうことか、巨大な三角波が海峡に発生していた!!

 船が、まるでドレーク海峡のように、十メートル以上も上下に揺さぶられる!!

 同じように、

「う、うわぁぁぁ!!」

「ふ、振り落とされちまうッ!!」

「し、しっかり掴まれぇぇッ!!」

 と、味方の舟たちも謎の波に翻弄される。

 そこへ、

「ぬフフ……!! どうです、我が仲間、蟹の力は――!」

「――!」

「――!」

 と、アンコウ船長の言葉に、西京と瑠璃光寺が驚愕する。

 同時に、

 ――ベンベン! ベンベン!

 と、タコの邪神が、琵琶を鳴らした。

「ぬフフ……、と言いますのはな、貴方がたの舟の下の――、海の底にはですね、我が軍勢の蟹がおりまして、呪力で以ってして、大波を起こしているわけなのですな」

「――!」

「な、何だって――!」

 と、わざわざ説明するアンコウに、西京と瑠璃光寺が驚愕する。

「やつらの艦の、甲板じゃなくて、海の底か、」

 西京が、何か手はないかと、海の底のほうを見ようとした、その時、

「むむッ――!?」

 と、西京は何か気配を感じるともに咄嗟に動く。

 それに少し遅れて

 ――ズキューン――! ズキューン――!!

 と、音が響いてきた。

 ライフルの弾――

 その軌道は、正確に、西京の心の臓があった場所を掠めていた。

 しかし、西京は“それ”を、まるで居合をかわすかのごとく、外してみせたわけである。

 西京が、弾道のきた方を見るに、

「み、宮本ッ――!」

 と、そこにはやはり、ライフルを手にした宮本の姿があった。

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