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【怪石の呼び声】  作者: 山口友祐
第三章 調査

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24 シモヘイヘ並みか、それ以上か


          (3)



 そうして、昼前ごろのこと。

 西京太郎と瑠璃光寺玉のふたりは、下関市内を調査していた。

 なお、江藤優作ことユーサクとは、まだ合流してはいない。

 下関駅周辺の中心街から、唐戸、そこから火の山のほうへと回る。

 ――火の山。

 関門海峡の、関門橋に面した、高さは300メートルにも満たない小っちゃい山であるが、戦前は重要な要塞だった。

 その、要塞の遺構を残しつつ、チューリップ園のある都市公園としても整備されており、市民の憩いの場ともなっている。

 また、その眺めはとても良く、1000万ドルの価値があるとされる夜景は、日本の夜景遺産に登録されているとのことである。

「う~ん……、こうしてみると、まだ、いたって平和なんだけどね」

 と、快晴な関門海峡を眺めながら、西京が言った。

 少し波は立っているものの、おおむね穏やかに見える。

「こんな海峡で、過去には幾度も、戦や動乱があったんですよね」

「そうだね……、それを想像すると、確かに感慨深いよね」

 二人は、改めて海峡の街の歴史に思いを馳せつつ、

「まあ、今となっては、少しさびれたものの、県内では一番の人口を擁する都市だからね」

「ちなみに、その割には、新幹線の特急が停まらないですよね」

「うん。それなんだよね」

「もしかして、河原から当たり前のようにロケットランチャーの見つかる修羅の国の、小倉に博多――、それから、厳島神社と、牡蠣とお好み焼き、もみじ饅頭を要する広島と、両隣を濃いメンツに挟まれているからですかね?」

「確かに……、そうかもね」

 と、西京が相槌した。 

 まあ、何が「そうかもね」というところだが……

 そのように、調査とは特に関係のない話をしつつ、

「それはさておいてね、やっぱり、進展が無いというのはね……、少し焦ってくるよね」

「ですよね」

 と、ふたりは、そろそろ本題に入らねばと焦り出す。

 まあ、その話す様子からは、傍から見てあまり焦っているようには見えないのだが……

「とりあえず、松もっちゃんたちにも調べてもらっているけどね、いまのところ、怪しい人物や団体は、引っかかってないみたいだね」

 西京が言いながら、タブレットを確認する。

 今回の呪力場の異常と、昨夜の襲撃から、引き続きVR室を用いての調査を行っている。

 その中では、人工知能も駆使し、人間や人外を問わず、怪しい者や団体の下関への出入りを追跡したりもしていた。

「そうです、か……。でも、誰かが、その、石の呪詛というか力を発動させたんで

すよね?」

「うん。そうなんだよね。……だけど、確かに、何者かは“いる”のだと思う。最初にユーサクを狙撃した者、昨夜、僕たち三人に襲撃をかけさせた者が――」

「……」

「それで、これは、僕の勘なんだけどね……、そのうちの、少なくともユーサクを狙撃した者は、人間の予感がする」

「人間……、ですか」

 と、思わぬ西京の言葉に、瑠璃光寺が反復した。

 同時に、ふたりが眺める先――

 まさに山海遠景のような関門橋が見えつつ、

「もし、ここから狙撃していたと仮定すると、だね――」

「……」

「関門橋の頂点、その距離と角度を考えるにね、ユーサクを狙撃した者は、かなりの腕の人間だろうね。シモヘイヘ並みか、それ以上か」

「シモヘイヘ、ですか……」

「まあ、それに気づいて、かわしてみせるユーサクも、大したものだけどね」

 と、西京が言った。

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