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【怪石の呼び声】  作者: 山口友祐
第三章 調査

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21 酒とツマミとで寝酒をするなど


          (2)



 昨夜の、彦島での調査中に、襲撃を受けたあとのこと。

 西京太郎と瑠璃光寺玉のふたりは旅館へと戻り、酒とツマミとで寝酒をするなど、何ごともなかったかのように一夜を過ごした。

 寝つけないことも特になく、快眠であったが、まあよく普通に寝れるなという話である。

 西京たちにとっては、そんな大した相手ではなかったのかもしれないが、仮にも、あのような鬱蒼とした森の中で突然、火のついた矢が飛んできて、異形の者たちに襲撃されたわけである。

 そんな怪異に遭遇すれば、ふつうの人間であれば、恐怖で一睡もできないのではなかろうか。

 また、怨霊のように、その場から逃げおおせたとしても、あとから相手が追ってこないとも限らない話でもある。

 まあしかし、西京たちにとっては、“よくあること”なのだろう。

 現場で、ちょっとめんどくさいトラブルにあったわ程度の感覚であり、とりあえず、帰って酒でも飲むかといったところだろう。

 それはさておいて、そんな西京と瑠璃光寺のふたりは、朝食は終えて朝のカフェタイムの最中だった。

 サザエの貝殻や、風化したコンクリート塊に紅白の生け花と、平家物語の絵巻の飾られた床の間に、コーヒーの香りが漂う。

「やれやれ、昨夜は、まいったね」

 と、あまり顔色や表情の変わらない西京に、

「ほんと……、そうですよね」

 と、こちらは少しくたびれた様子で、瑠璃光寺が同意した。

「まさか、あんな、矢が飛んでくるなんてね、思ってもなかったね。しかも、火までついているなんてね」

「ほんと、びっくりしましたよね。火のついた矢が飛んでくるなんて、生で見ましたね」

 二人は、思い出して話す。

 まあ、矢が飛んでくること自体、現代のふつうの人間であれば、あまり経験することのないできごとだろうに。

 続けて、

「――というよりも、太郎さん」

「う、ん……?」

「パソコン、どうしましょうか?」

「あっちゃぁ……、そうだったね」

 と、ここのここで、二人はまさにその火のついた矢がパソコンに命中を、お釈迦になってしまったことを思い出した。

「う~ん……、仕方ないね。今回は、タブレットで代用しようか」

「そうですね」

 と、さすがにパソコンより使い勝手や性能は落ちるものの、二人は気にしないことにする。

 それどころか、

「というより、タヌキさんの“葛葉”につながってるんですから、パソコンかタブレットか、性能差を気にしなくていいですよね」

「うん。それも、そうだったね」

 と、借りパクしている形の、妖狐の“葛葉”を使うことを、当たり前のものと考えていた。

 まあ、この二人も、まあまあクズなのかもしれない。

 話を進める――

 ポンコツダヌ――、否、妖狐の“葛葉”と特別調査課のVR室にいた零泉円子を通じて、改めて呪力場や昨夜の巨石の解析をしてもらった。

 それによると、おそらく何者かが、石を“起動”させた可能性があること。

 また、そのことによって、今回の呪力場異常と、怪現象を引き起こされており、今もそれが続いているどころか、より重大な事案に発展する可能性があることが分かった。

「ひっかかるのは、この石を起動させた者が“いる”ってことだな」

 西京が言った。

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