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怪石の呼び声  作者: 石田ヨネ
第一章 瓦蕎麦の誘い
2/40

2 うん! 美味しい! まるで、ハーモニーの、ようだ



          (2)



 後日。

 場面は、代わって東京でのこと。

 ――ジュワァァ……

 と、香ばしい音とともに、鉄板――ではなくて、ぐわんと湾曲した瓦の上で焼かれた、抹茶色の茶そばがやってきた。

 茶そばの上には、肉と玉ねぎの炒めたものと、刻んだ焼き卵に海苔。

 それから、紅葉おろしと輪切りのレモンに、刻みネギと、カラフルに彩られる。

 また、瓦と茶そばの間の“焦げ”の香りが、食欲を誘う。

 すわなち、山口県は下関の誇るグルメこと、瓦そばだった。

「来たよ! 太郎さん。ああ、美味しそう」

 と、特急列車の席でシャンパンでも開けてそうな、港区にでも居そうなキャバ嬢というかラウンジ嬢のようなで立ちの、カラフルに髪を染めた二〇代の女が興奮気味に言う。

 そのいっぽう、

「うん。久しぶりの、瓦そば――。テンションが、上がるよね」

 と、答えた相方はというと、どこか昭和や平成風の、わざわざ鉄道に乗って捜査しにいく系の刑事ドラマにでも出てきそうな、スーツ姿の中年男。

 こう見えてふたりは、警察の特別調査課に所属する、西京太郎と瑠璃光寺玉だった。

 旅情派刑事ドラマよろしく、日本全国の津々浦々の対邪神事案や、オカルト的な怪奇事案を扱うという、特別調査課のなかでも少し変わったコンビとして知られる。

 さて、紹介はそこそこに、

 ――シュワ……

 と、発泡した液体の注がれたワイングラスが、瓦そばのそばに置かれる。

 一見すると、白の、スパークリングのように見えるが、

「何だい? シャンパンでも飲むのかい?」 

「そんなわけ、ただの、マスカットソーダですよ。太郎さんこそ、瓦そばにコーラなんて」

「まあ、僕も、炭酸は、嫌いじゃないからね」

 と、会話はそこそこに、二人は麺つゆにソバを漬け、食う。

「うん! 美味しい! まるで、ハーモニーの、ようだね」

 西京太郎が、感嘆の声を上げる。

 何の、ハーモニーかという話だが……

 まあ、おおかた、茶そばの抹茶色と炒めた肉の茶色、それから卵の黄色に、ネギの緑と紅葉卸の赤と……、色とりどりの食材が、麺つゆの中で絡み合う的な事をいいたいのだろう。

「あ~あ……、仕事じゃなかったら、シャンパンで飲みたい」

 瑠璃光寺玉が言いながら、マスカットソーダを飲む。

「僕も、瑠璃さんに、同意するよ。けど、残念だけど、こう見えて僕たちも、いちおう、仕事中だからね」

「ていうか、こんな美味しくて手軽――? なんだからさ、もっと、全国に広まってもいいと思うのに、瓦そば」

「まあ、確かにね。チェーン店とか、出来てもよさそうなだよね」 

 ふたりは話しつつ、半分ほど食ったところで箸を休める。

 瑠璃光寺玉が、スマホを見せて、

「そう言えばさ、太郎さん?」

「う、ん?」

「何か、興味深い動画があったんだけど」

「興味深い動画、だって?」

「うん」

 と、そのまま、動画を再生させてみせる。

 陰謀論やオカルトの解説をおもにしたチャンネルを運営する、若いふたり組の男たち。

 雑談形式で、彼らが話すことには、次のような内容だった――

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