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【怪石の呼び声】  作者: 山口友祐
第二章 バッドシティ下関へ

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15/40

15 警察でもいようものなら職質を食らうレベル

 それから、少しして――

 三人は、鬱蒼とした森へと入っていく。

 この中にある巨石を、調べてみるというわけである。

 なお、夜にバイクでこんなところに乗り込んでいくなど、この三人こそ怪しさ満点で、警察でもいようものなら職質を食らうレベルだろう。

 まあ、西京と瑠璃光寺も、いちおう警察の所属なのだが……

 それはさておき、森へと入ってのこと。

 樹々の間隙からは、海峡の、街の夜景が見える。

 そうして、少し歩いているうちに、三人は目的の巨石のある場所にたどりついた。

 そこは、まるで、半分森と化してしまった古墳や遺跡を思わせるエリア。

 その真ん中には、モニュメントのように、巨石が佇んでいた。

 きれいな正方形ではないが、何か、ピラミッドを構成する巨石のようであり、異様な存在感があった。

「まるで、ピラミッドの石……、みたいですね」

「……ああ、そうだね」

 と、西京が瑠璃光寺に相槌しつつ、

「ただ、まだこれだけでは、少し神秘的なナニカを感じさせる石なのか――? あるいは、僕たちの扱うような、怪奇的な案件に足るべき石なのか? 調べてみないことには、分からないね」

「ほう……、それなら、ちょっと“見てみる”ぜ」

 と、ユーサクが、丸サングラスをクイット上げなおしながら、石を観察する。

 グラスからは、ゆらぁ~……と、石から沸き立つ“情報”が見える。

 それらはそのまま、目の奥の、視神経を通じ、脳に何か霊的な情報を伝えてくる。

「フ、ゥ~……。こいつは、やっぱし……、何かありそうな石かもねぇ」

 ユーサクが言って、サングラスをキラリと光らせる。

「そう、なんですか……? 太郎さん?」

 瑠璃光寺が、隣の西京に聞くと、

「うむ……? まあ、僕もね、ただの石――、巨石ではないと思うんだがね。いかんせん、もう少し調べたいところだね。できたら、僕らの、VR室も使って」

「室長や、円ちゃんは、いるんですかね?」

 円ちゃんとは、松本清水子の部下のひとり、零泉円子れいぜん・まるこのことである。

 少しおかっぱがかったワイルドヘアの、瑠璃光寺と同じく二〇代の女子であり、VR室のオペレーターもできる調査員でもある。

 ちなみにVR室とは、半仮想現実と融合した分析室のようなもので、スパコン類や量子コンピュータを用い、ウェラブルデバイスによって脳と身体とコンピュータ網を接続・仲介する形で、情報分析を行うわけである。

 よくSFなどでイメージするような、空中でキーボードをカタカタするような“アレ”を思い浮かべるといい。

 あらゆる大量の情報に超高速でアクセスし、まるで書斎の本に触れるかのような感覚で分析、解析することを可能にするという。

 ――さて、話を戻して、

「さあ? どうだろうね? こんな、時間だしね」

 と、西京が言った。

 時刻は、すでに二三時近くになっている。

 特別調査課の異能力者というものの、当然、室長の松本清水子をふくめ、いちおう彼らも人間である。

 立て込んでいたり、緊急性の求められる案件でない限り、帰宅している場合もあるだろう。

「まあ、松もっちゃんに連絡してもいいけどね、たぶん、ぶつぶつ文句を垂れてくるだろうね」

「ああ、だろうねぇ」

「そうですよね」

 と、西京の言葉に、ユーサクと瑠璃光寺がうなづく。

「電話にしろ、チャットにしろ、まず、『殺すぞ』から始まりそうですよね。まあ、寝てて、返事がないかもしれないですけど」

「うん。そうだね。……ただ、そうするとね、僕たちには、急に下関に行って来いって振っておいて、少しつれないけどね」

 西京は言いながら、ノートパソコンをVR室とつなげた。

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