15 警察でもいようものなら職質を食らうレベル
それから、少しして――
三人は、鬱蒼とした森へと入っていく。
この中にある巨石を、調べてみるというわけである。
なお、夜にバイクでこんなところに乗り込んでいくなど、この三人こそ怪しさ満点で、警察でもいようものなら職質を食らうレベルだろう。
まあ、西京と瑠璃光寺も、いちおう警察の所属なのだが……
それはさておき、森へと入ってのこと。
樹々の間隙からは、海峡の、街の夜景が見える。
そうして、少し歩いているうちに、三人は目的の巨石のある場所にたどりついた。
そこは、まるで、半分森と化してしまった古墳や遺跡を思わせるエリア。
その真ん中には、モニュメントのように、巨石が佇んでいた。
きれいな正方形ではないが、何か、ピラミッドを構成する巨石のようであり、異様な存在感があった。
「まるで、ピラミッドの石……、みたいですね」
「……ああ、そうだね」
と、西京が瑠璃光寺に相槌しつつ、
「ただ、まだこれだけでは、少し神秘的なナニカを感じさせる石なのか――? あるいは、僕たちの扱うような、怪奇的な案件に足るべき石なのか? 調べてみないことには、分からないね」
「ほう……、それなら、ちょっと“見てみる”ぜ」
と、ユーサクが、丸サングラスをクイット上げなおしながら、石を観察する。
グラスからは、ゆらぁ~……と、石から沸き立つ“情報”が見える。
それらはそのまま、目の奥の、視神経を通じ、脳に何か霊的な情報を伝えてくる。
「フ、ゥ~……。こいつは、やっぱし……、何かありそうな石かもねぇ」
ユーサクが言って、サングラスをキラリと光らせる。
「そう、なんですか……? 太郎さん?」
瑠璃光寺が、隣の西京に聞くと、
「うむ……? まあ、僕もね、ただの石――、巨石ではないと思うんだがね。いかんせん、もう少し調べたいところだね。できたら、僕らの、VR室も使って」
「室長や、円ちゃんは、いるんですかね?」
円ちゃんとは、松本清水子の部下のひとり、零泉円子のことである。
少しおかっぱがかったワイルドヘアの、瑠璃光寺と同じく二〇代の女子であり、VR室のオペレーターもできる調査員でもある。
ちなみにVR室とは、半仮想現実と融合した分析室のようなもので、スパコン類や量子コンピュータを用い、ウェラブルデバイスによって脳と身体とコンピュータ網を接続・仲介する形で、情報分析を行うわけである。
よくSFなどでイメージするような、空中でキーボードをカタカタするような“アレ”を思い浮かべるといい。
あらゆる大量の情報に超高速でアクセスし、まるで書斎の本に触れるかのような感覚で分析、解析することを可能にするという。
――さて、話を戻して、
「さあ? どうだろうね? こんな、時間だしね」
と、西京が言った。
時刻は、すでに二三時近くになっている。
特別調査課の異能力者というものの、当然、室長の松本清水子をふくめ、いちおう彼らも人間である。
立て込んでいたり、緊急性の求められる案件でない限り、帰宅している場合もあるだろう。
「まあ、松もっちゃんに連絡してもいいけどね、たぶん、ぶつぶつ文句を垂れてくるだろうね」
「ああ、だろうねぇ」
「そうですよね」
と、西京の言葉に、ユーサクと瑠璃光寺がうなづく。
「電話にしろ、チャットにしろ、まず、『殺すぞ』から始まりそうですよね。まあ、寝てて、返事がないかもしれないですけど」
「うん。そうだね。……ただ、そうするとね、僕たちには、急に下関に行って来いって振っておいて、少しつれないけどね」
西京は言いながら、ノートパソコンをVR室とつなげた。




