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怪石の呼び声  作者: 石田ヨネ
第一章 瓦蕎麦の誘い
1/40

1 バッドシティ、イェー……?



          (1)



 深夜の関門海峡。

 下関と門司・北九州の両岸の街の灯りに、海峡を航行する船を見下ろす関門橋。

 いっときの車の流れが途絶え、少しの静寂が漂う。

 そんな中、

 ――ブォォン!!

 と、エンジン音を響かせ、一台にバイクが近づいてきた。

 ぐるっと、橋の手前のカーブを走行するバイク。

 丸みを帯びたフォルムの、すこしレトロな感じの、お洒落なイタリア製の機体。

 すなわち、松田優作の探偵物語で知られる、ベスパP150だった。

 なおかつ、乗っている男はというと、天然パーマに黒の中折れハット黒と丸サングラスにスーツ姿。

 こちらも、まんま探偵物語の松田優作と同じような“いでたち”という。

 男のバイクは、橋に差しかかる。

 ーーグォォン――!!

 と加速しながら、あろうことか! バイクは曲芸かアクロバットのように大きくジャンプし、橋を吊っているワイヤーの部分にタイヤを着地させる!

 そのまま、グォーン――!! とエンジン音をけたたましくしながら、バイクは登り続ける。

 そうして、主塔の頂上で止まった。

 海面からの高さは、およそ140メートル。

 360°、いや、スノボーの1080°のごとく、海峡をぐるりと見渡せるパノラマ世界。

 すると、


「バッドシティ、イェー……?」


 と、停めたバイクから降り、男はジッポでタバコをキメながら、そう言った。

 男の名は、江藤優作。

 対邪神、対超常現象を扱う探偵だった。

「……」

 揺れる煙草とともに、江藤優作はジッ……と、海峡を眺める。

 その、丸サングラスの奥には、呪力場とでもいうべきか――? “そういったもの”が可視化されるという代物。

 海峡と下関側、そして彦島のほうから、沸々――と、何やら黒い不穏なものが湧いているのが見て取れる。

「……」

 江藤優作の顔が、少し険しくなる。

 その時、


「む、ぅッ――!?」


 と、何か背筋が凍る気配がするとともに、江藤優作は反射的に身体をひねった。

 空間を、切り裂いて通過する弾丸。

 ーージュッ……

 と、先端を掠めながら、タバコがポロリと落ちる。

 同時に、少し遅れて、

 ――ズキューン……! 

 と、銃声が響いてきた。

「ちっ! 人のタバコを、」

 江藤優作が舌打ちする。

 まだ吸い始めたばかりの1本を台無しにされたのだから、仕方がない。

 そうしながらも、銃弾の飛んできた方を振りむく。

 海峡を挟んで、下関側の、火の山のシルエットが見える。

 たぶん何者かが、遠距離から、おそらく挨拶でもするかのように、銃弾一発でも見まったのだろう。

 それが、平家物語の、那須与一が扇を射抜いてみせたようにだったは定かでないが。

「まったく……、何じゃこりゃ?」

 江藤優作は、やれやれと呆れてみせる。

 再びタバコをつけたかったが、悪いことに、先ほどのが最後の1本で、切らしてしまった。

 そんな、途方に暮れながら、

「……」

 と、江藤優作は海峡を眺める。

 そして、のちに、騒動というか怪事変が起きることになるのだが……

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